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2012年9月22日(土)付

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野田首相が代表再選―早期解散へ、環境整えよ

 民主党代表選は、野田首相が大差で再選を決めた。

 政権交代から3年。民主党政権の歩みは曲折を重ねた。

 予算の組み替えで16.8兆円の新規財源を生み出すとしたマニフェストは破綻(はたん)した。消費増税を決めたことは評価できるが、3年前の総選挙では「やらない」と国民に約束していたことも事実だ。

 原発事故を受けて「2030年代の原発ゼロ」を掲げたことはよかった。一方で、財界などに批判されるや、閣議決定を断念したのは情けないかぎりだ。

 ■3党の枠組み維持を

 代表選で、首相が「最大の成果」と胸を張ったのが、民主、自民、公明の3党合意による社会保障と税の一体改革だ。

 政権が交代しても、安定的に維持できる社会保障制度をつくる。そのパートナーのはずの谷垣自民党総裁が総裁選に立候補できなかったことは、首相にとって誤算だったに違いない。

 それでも、総裁選に立った5候補は、それぞれ「3党合意は守る」と表明している。

 一体改革だけではない。政治を前に進めていくには、3党の協調態勢が欠かせない。

 先月、首相は谷垣氏、公明党の山口代表と「近いうちに信を問う」ことで合意した。党首どうしの約束は重い。

 もし首相が衆院解散をさらに先送りすれば、3党の信頼関係は完全に崩れるだろう。

 先の国会会期末、民主党の強引な国会運営や、自民党などによる首相への問責決議可決によって、赤字国債発行法案や衆院定数の是正法案などが廃案に追い込まれた。

 このままでは、次の国会でも同じことの繰り返しになりかねない。肝心の一体改革も空中分解する恐れさえある。

 ■消費増税に審判仰げ

 本来なら、衆院議員は4年の任期いっぱい仕事をするのが筋だ。とはいえ「動かない政治」を続けることが、国民にとって望ましいとは言えまい。

 早い時期に解散・総選挙に踏み切り、政治を動かす環境をつくる。政権の最高責任者として、首相はそのことを決断すべきときである。

 民主党内は解散反対論が大勢だ。代表選の前に、首相が解散時期を明示したら、みずからの再選も危うくなりかねない。その揚げ句、一体改革も頓挫したかもしれない。

 だが、そんな言い訳はもはや通用しない。

 何よりも、政権交代時のマニフェストを裏切る形で消費増税を決めた事実は重い。できるだけ早く国民の審判を仰ぐべきなのは当然のことだ。

 もちろん、総選挙をしても、それだけで政治が動くという保証はない。与野党が足を引っ張り合う政治がふたたび繰り返されるなら、迷惑を受けるのは国民だ。

 ■政治の悪循環を断つ

 次の総選挙を、そんな悪循環を断ち切る契機とする。そのために、首相に提案がある。

 自民党の新総裁が決まったら速やかに3党首会談を呼びかけ、次の3点を解散前に実行することで合意するのだ。

 (1)総選挙後も、一体改革の3党合意を堅持することを再確認する。社会保障をめぐる国民会議はただちに設置する。

 (2)秋の臨時国会で、赤字国債発行法案と、最高裁に違憲状態と断じられた衆院の一票の格差をただす「0増5減」の自民党案を成立させる。定数削減をふくむ選挙制度改革は、首相の諮問機関を設置して参院とあわせて検討をゆだねる。

 (3)衆参の多数派がねじれても合意形成ができる国会のルールづくりを、与野党で精力的に詰め、結論を出す。

 国民から不信の目を向けられているのは、民主党だけではない。既成政党全体の姿勢が厳しく問われていることを、自民党など野党も自覚すべきだ。

 注目されるのは、自民党総裁選に立候補している石破茂・前政調会長が、赤字国債発行法案を「政争の具に使うべきではない」と語っていることだ。

 まず自民党が、次いで民主党が「ねじれ国会」に苦しんだ。そんな政治にはさすがに懲りたということだろう。

 赤字国債発行法案は、予算と一体で成立させる。国会同意人事は衆院の議決を優先させる。衆参の議決が異なる際に設ける両院協議会に、結論を出せる仕組みを導入する。

 与野党がこうしたルールで合意できれば、国会は動き出す。首相が1年ごとに交代する惨状も改善するに違いない。

 震災復興や原発事故への対応を進め、新しいエネルギー政策の計画をつくる。こじれた近隣外交の立て直しも急務だ。自由貿易の枠組みをどう築くかも結論を急ぐ必要がある。

 政治が答えを迫られている課題は目白押しだ。総選挙に向けて、各党は現実的で説得力ある公約を国民に問うべく、作業を急いでほしい。

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