三権分立を理解できないベテラン記者がいることの方が理解しがたい
産経新聞社の花岡記者が「国籍法改正は政治の知性の欠如」というエントリーをアップロードしています。
まず冒頭から,だれもその意味合いを理解していない法律改正が実現しようとしている。
ととばしています。しかし,この問題に関心の薄い人は多いと思いますが,少し関心を持って調べれば,「国籍法第3条1項を文言通りに解釈して,日本国籍を有しない母から出生した子が出生後に日本国籍を有する父から認知を受けた場合に,その母と父とが結婚しない限り,同項により日本国籍を取得できないとするのは,憲法第14条に反し違憲である」との最高裁判所大法廷判決を受けて,最高裁判所が採用した同項の憲法適合的な解釈に法律の文言を合わせようという意味合いをもっていることがわかるかと思います。
法務省にいかがわしい「人権スクール」が存在するのではないか。そうとでも考えないと、この異常事態は理解できない。
とのことですが,最高裁の違憲判決に合わせてその法令の所管官庁が改正案を起草することは普通のことであり,記者歴30年を謳う新聞記者がその程度のことを理解できないことの方が異常事態です。
最高裁の違憲判決があったからといって、法律改正は、政治の責任において行われなければならない。これは当然過ぎるほど当たり前のことだ。
物は言い様なのですが,最高裁の憲法判断に対応した法改正を政治が怠れば,裁判所は最高裁判例に沿った判決をし続けるということです。最高裁判決に沿った法改正が速やかに行われなかったことにより,本来訴訟を提起せずとも実現できたはずの権利が実現できなかった場合には,本来不要な訴訟費用を負担させられた場合には,立法不作為として,国賠の対象になるかもしれませんが。
国籍法改正の「穴」は、カネで国籍が売買される危険性を残してしまったことだ。日本国民が不正な手段で生み出される道をつくってしまったことだ。
とのことですが,実際の戸籍実務等を無視して妄想をふくらませてやっと「危険性を残してしまった」というのがせいぜいというレベルの話です。
改正案を考えるのは、法務省の役人たちである。最高裁の言うとおりに、法の不備をただそうとして何が悪いか、というのが彼らの立場だろう。なんらの疑念も抱かず、いいことをやっているという意識しかない。「法匪」というのは、こういう人たちのことを言う。
とのことですが,法務省は,本来自分の所管法令が違憲とされたことは快く思っていないはずであり,しかしながら最高裁判所の大法廷判決で違憲とされた以上,その職務に忠実にあろうとして,最高裁判決に対応した改正案を起草したにすぎないのであり,それを「法匪」とは,なんたる侮辱なのでしょう。
役人がどう考えようとも、常識と理性で、これを食い止めるのが政治家の本来の役割だ。
とのことですが,法令の憲法適合性に関する最終的判断を行う権限は最高裁判所にあり,かつ,国会議員には憲法尊重擁護義務がありますから,最高裁の憲法判断に合致した法改正を行うことは,「常識と理性」がある国会議員としては当然のことであります。
国籍法改正は、国家を形成する国民のあり方そのものにかかわるのである。その重大な意味合いに政治家が気付かない。というよりも気付かせないまま改正作業を進めてしまおうという役人の矮小化された知恵が勝ってしまう。
とのことですが,一部のゼノフォビアにとらわれた方々の妄想まで予測して国会議員に報告することまで官僚に要求するのは酷というものです。
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