NSKは1916年に日本で始めてベアリング(軸受)の生産をして以来、様々な産業の発展に貢献してきました。
現在は総合軸受メーカーとして、幅広い分野でのニーズに応えています。
ここではベアリングについて、少しご紹介します。
(ベアリングについてさらに詳しく知りたい方は、右のバナーより「ベアリング入門」をご覧下さい。)
ベアリングは、私たちの身近なところで驚くほどたくさん使用されています。
例えば、自動車。通常自動車には 100~150個以上ものベアリングが使用されています。もしベアリングがなければ、車輪がガタついたり、トランスミッションのギアが噛み合わなくなったりして、自動車はスムーズに走ることができません。
また、ベアリングは車だけでなく、鉄道や飛行機、洗濯機、冷蔵庫、エアコン、掃除機、コピー機、パソコン、果ては遠い宇宙の人工衛星にまで、あらゆる機械に組み込まれ、機械の高機能化、省エネなどに貢献しています。しかし、残念ながらベアリングは機械の中など目に見えない場所のシビアな条件の下で黙々と活躍しているので、普段私たちがベアリングを目にする機会はなかなかありません。だからこそ、ベアリングは機械が安定して能力を発揮するために必要不可欠な部品なのです。
ベアリングのスペルは“Bearing”で、“ベア(Bear)”には支えるや“耐える”という意味があります。ベアリングのことを日本語では 「軸受 (じくうけ)」と呼んでいますが、これは「ベアリングが“支え・耐えている”のは、クルクル回転する、軸で、“軸を受け支える”から」という理由からです。
上の写真はもっともベーシックな「転がり軸受(Rolling Bearing)」ベアリングです。
「転がり軸受」」の基本構造はとてもシンプルで、4つの要素から成り立っています。
ベアリングの基本的な働きは“主に機械の摩擦を減らす”ことです。ベアリングが摩擦を減らすことで生まれるメリットとしては、
の3つが挙げられます。
ベアリングは摩擦を減らし、効率よくパワーを伝えることができ、省エネに貢献しているのです。これが「ベアリングは地球環境にやさしい」と言われる理由です。
ベアリングの原理は、紀元前のエジプト、ピラミッド作りの頃に既に発見され利用されていました。イラストは、ファラオが君臨したエジプトと並んで、都市文明を開花させた古代メソポタミアのレリーフ (浮き彫り)を、模写したものです。
その後、驚くほど現在のベアリングに近い、その基本構造を考案したのは、かの有名な中世の天才、レオナルド・ダ・ヴィンチです。
そして、18世紀の産業革命がもたらした機械文明は、ベアリングの発達につながりました。
1916年に日本精工(NSK)が専門メーカーとして日本で最初にベアリングの生産を開始しましたが、日本のベアリング技術が大きく進歩するのは、実は戦後のことです。1955年頃から洗濯機や冷蔵庫、クーラーなどの家電製品に加えマイカーの需要が広く普及しはじめました。そのような中、日本人がこれらの生活家電に求める重要な性能の1つが「静かさ」でした。ところが外国製のベアリングはこの「静かさ」をあまり重要視したものではなかったため、日本のベアリングメーカーは「世界一静かなベアリング」を目指して研究開発を重ねてきました。その後、この静かさに優れた日本のベアリングは欧米など海外へ輸出されることになり、やがて高度な「耐久性」も備えるようになりました。
ベアリングの規格はISOで国際的に標準化されています。日本製のベアリングは「高性能で高品質」という理由から、世界中で愛用されています。いまでは、日本で生産されるベアリングは約30億個とも言われ、その40%強が自動車用、30%近くが海外へ輸出されています。
グローバルな環境で発展してきたベアリングは、常に時代のニーズを先取りしながら、さらなる摩擦低減へと研究が重ねられ、軽量化・小型化・長寿命・省力化・エコロジーへの、あくなき果敢な挑戦がなされています。
世にある機械という機械には、必ず組み込まれているベアリング。多様なニーズと厳格な使命を背負い、そのニーズに応えられるよう、進化を重ねています。
ベアリングには小さいものから大きいものまで様々なサイズがあります。世界最小の「ミニアチュア軸受」のサイズは内径0.6mm×外径2.0mm×厚さ0.8mm。超小型モータなどに使用されます。逆に大きいものは外径 6mほど、重さは15t以上にもなります。これはトンネルなどを掘る超大型掘削機などに使用されます。イギリスとフランスを結ぶドーバー海峡の下にユーロトンネルを掘った掘削機。その中でも勿論ベアリングが活躍していました。
歯科医が使用するデンタルドリル(デンタル・ハンドピース)の中では、超高速回転が可能なベアリングが、活躍しています。この中に、内径3.0mm×外径6.0mm×厚さ2mm、直径1.0mmの玉を持つ超精密ベアリングが2個組み込まれていて、「1分間に40万回転」という驚異的な速さで回転しています。この超高速かつ超正確な回転はデンタルドリルの振動を限りなく少なくするので、治療時の痛みの大幅な軽減が可能となるのです。
国際線旅客機用ジェットエンジン(V2500)の主軸に取り付けられるベアリング。ベアリングの転動体が転がる速度は秒速 160m。時速 580kmにもなります。高性能高速ベアリングが、ジェットエンジンの速く強く長い回転を支え続けるからこそ、ビジネスパーソンや旅行者は安心して世界中を飛び回れるのです。
「機械の精度は、ベアリングの回転精度によって決まる」と言っても決して過言ではありません。2つのベアリングが両端を支える回転軸、その軸の中心の振れ具合が大きいと機械に高性能は望めません。超精密ベアリングが使用されるパソコンの外部記憶装置「ハードディスク」の軸心の振れは、100nm(ナノメートル)以下。(※1nm=1/1,000,000mm)そしてこの超高精度の決め手となるのが、「玉」や「ころ」などの転動体の精度です。
ベアリングは宇宙開発にもなくてはならない存在です。天気予報や衛星放送、カーナビの位置情報などは、地球の周りを回っている人工衛星から送られてきますが、その人工衛星には、正確な位置や向きを保つためのフライホイールという装置が組み込まれています。そして、このフライホイールの中でも超精密なベアリングが活躍しています。このベアリングは、なんと15年もの間、宇宙空間でひたすら働き続けるのです。
最も低い温度で使用されるベアリングは、宇宙ロケットの液体燃料ポンプに組み込まれていて、-253℃の液体水素の中で回転しています。一方、高温環境で使用されるものには、医療現場で活躍するCTスキャナ用の高性能ベアリングが挙げられます。300~500℃にも達するX線を発生させるその真空管の中でも、ベアリングは私たちの健康維持のために回り続けているのです。
最後に、さらなるベアリングの進化のテーマをご紹介します。
まず1つめが、さらなる「省エネ」。機械が小さくなればなるほど、それを構成する機械部品もまた、小さくなります。そして、機械が小さくなり精密になればなるほど、わずかな摩擦でさえ故障の原因となりかねません。また、どんなに機械が小さくなっても、エネルギー損失の総量は、地球規模で考えると相当な量になります。ベアリングも、さらなる省エネのために摩擦の軽減をより一層追求していかなければなりません。
2つめが、さらなる「クリーン」。ベアリングが機械に組み込まれることで、自動車などから排出される排気ガスが低減され、大きなクリーン効果をもたらします。また、大部分のベアリングは有害化学物質を含まない鉄鋼材でできているので、リサイクルされて、新たな鉄鋼材料として生まれ変わりやすく、ベアリングは非常に優れたリサイクル・リユース可能な製品でもあるのです。
そして3つめのテーマが、さらなる「快適」。機械は、人にとっても地球にとっても快適なものでなければなりません。生産活動の向上を担ってきた機械には、今後、教育・医療・福祉・遊びなど、社会生活や個人生活を充実させるための活躍がより一層期待されるでしょう。そして、その中に組み込まれるベアリングにも、従来のものとは異なる機能や役割が求められるかもしれません・・・。
以上の3つのテーマを掲げ、私たちNSKは「人と地球のために」これからも研究開発に取り組んでいきます。