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【プロ野球】

原巨人 3年ぶりのリーグV

2012年9月22日 紙面から

◇巨人6−4ヤクルト

巨人−ヤクルト 3年ぶり34度目のセ・リーグ優勝を決め、胴上げされる巨人の原監督(武藤健一撮影)

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 激動の1年を乗り越えてV奪回!! 優勝へのマジックを1としていた巨人は21日、ヤクルト戦(東京ドーム)を6−4で快勝。3年ぶり34度目(1リーグ時代を含めると43度目)のリーグ優勝を決め、原辰徳監督(54)が8度、鮮やかに宙を舞った。昨年から何度も降り掛かった場外騒動をはねのけ、最後は独走での覇権奪回。10月17日から東京ドームで行うクライマックスシリーズのファイナルステージ(6試合制)で、日本シリーズ出場権をかけ、ファーストステージ勝者と戦う。

 待ち焦がれた瞬間がやってきた。3年ぶりの覇権奪回だ。G党が埋め尽くした東京ドーム。マウンド付近に歓喜の輪ができた。最後に原監督がゆっくりと歩み寄り、宙に舞う。現役時代の背番号と同じ8度。指揮官として通算5度目となるリーグ優勝の舞だ。

 「ファンの皆様にひと言、御礼申し上げます。優勝おめでとうございます! 阿部、内海を中心として全員の力を一つにして戦ってきました。時間があるなら、全員の賛辞を述べたい。本当に今年は全員が一つになって戦った」

 衝撃的な出来事が続出した1年だった。始まりは昨年11月11日。当時の清武球団代表兼GMが渡辺球団会長にかみつく内紛劇が勃発。事態はオーナー交代、代表解任と続いた。

 その際、原監督が繰り返した言葉が、故・正力松太郎元オーナーの遺訓「紳士たれ」だ。その指揮官にも最大の試練が訪れる。交流戦優勝直後に週刊誌報道で表面化した現役時代の女性問題だ。

 急速に増える白髪、睡眠不足で目は充血…。遠征先の食堂にも現れず、孤独を味わった。「『紳士たれ』とはファンから愛され、愛すること」。そう話していた男がチームと別行動をとり、人目を避けることもあった。

 チームへの影響を最小限に食い止めたのは球団の対応だった。開幕前の契約金超過報道を含め、「球団対清武氏」の構図を強調。意図したことかどうかは別にして、世間の目を現場から離した。一方、グラウンドでは、原監督が懸命にVロードへと先導していった。

 ペナントレースは苦難の船出。開幕直後は8試合で5度の零封負け。その貧打ぶりは「球団史上最弱」と言われた。4月22日には巨人で過去一度もここから巻き返して優勝したことのない、「V率0%」の借金7となり単独最下位に転落。ベストメンバーでの成績。だからこそ「肥やしになった」と原監督は言う。

 自分たちは弱い。その自覚がチームに劇的な変化をもたらした。4番であっても犠牲バントをする。足を絡める。狙い球を絞り、見逃し三振も容認する。「弱者の野球」で積み上げた白星が、自信と誇りを思い出させていった。交流戦で初優勝し、その勢いで一気に加速。終盤は独走だった。

 「今季の象徴」と振り返る試合がある。今月9日のヤクルト戦(新潟)。FAで獲得し「枢軸」の1人に指名していた5番・村田に代打を起用した。不振の主軸に対して非情な決断を下した。

 この起用法に誰よりも悔しさを感じていたのは指揮官自身だった。「主力が、ああいうことをさせたらダメなんだ」。ただ、シーズン前に理想として掲げた「枢軸にベテランが絡む」という全員野球の体現でもあった。

 意志の人だ。現役を引退した時の体重は86キロ。数キロの増減はあっても、常に現在でも85キロ前後を維持している。勝利に徹する。その信念を貫き、昨季オフに厳命されたリーグ制覇を成し遂げた。

 10年来、歌い続けている曲がある。シャ乱Qの「空を見なよ」。カラオケでは一曲目の定番にしている。♪答えはいつか出るから逃げることはしない−現実と向き合い、結果は潔く受け入れる。屈辱の2年に耐え、ようやく「答え」にたどり着いた。

 ペナントフラッグの奪回、そして万感の舞。「勝負師というのは毒を飲まされても死ぬわけにはいかない。毒も栄養にするぐらいでなければ」。父であり、師でもある原貢・東海大系列野球部顧問の言葉が胸に染み入った。 (井上学)

 

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