超短篇集 (佐藤潤)
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第八話 『逃げる女』
荒い息を吐きながら森を走る。助けを求めるように周りを見渡してみても、月と星は助けてはくれない。兎に角、逃げなければ。あんな化け物に捕まったらどんな酷い目に会うかわからない。おぞましい体躯と耳障りな鳴き声。
だが──── 神様というのは得てして無慈悲なものだ。逃げ込んだ場所は袋小路だった。普段は信じてもいない神を心の中で罵倒しながら来た道を戻ろうと振り返った時。それは。いた。恐らくは目であろう濁った眼球をぎょろりと動かすと、耳障りな声を上げた。
「あぁ、見つけたぞ。報告があった
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