超短篇集 (佐藤潤)
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第七話 『敵を討った男』
男は。歓喜に体を震わせていた。男の前には凶悪な面構えをした賞金首の写真が並べられた粗末なコルクボード。やっと。見つけたのだ。幼い頃に両親を殺し。更には最愛の姉を犯し殺した男。
そんな男を初老の男性が受付のカウンターから哀れみと慈愛に満ちた視線を送っていた。ここではよくある光景だ。初老の男性はやりきれないように溜息をつきながら思考を切り替える。男が幽霊のような足取りで近づいてきたからだ。
「……受付を頼みます」
「あぁ、どいつだい?」
男は。躊躇なくホルスターから銃を引き抜き──── 初老の男性の眉間を撃ち抜いた。
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