中国の次期国家主席になることが確実視されている習近平副主席は19日、中国を訪問した米国のパネッタ国防長官に「日本国内の一部政治勢力は、隣国やアジア諸国に残した戦争の傷痕を反省するどころか、そこからさらに踏み込んで釣魚島(日本名:尖閣諸島)を国有化した。これは茶番だ」「(米国は)釣魚島領有権争いに介入すべきではなく、矛盾を拡大させて現状を複雑にしてはならない」と発言した。問題の海域では中国の海洋監視船や漁業監視船16隻と、日本の海上保安庁の巡視船50隻が対峙(たいじ)しているが、20日には中国海軍の護衛艦2隻が同海域に接近した。中国の軍艦がこの海域に姿を見せたのは今回が初めてだ。
1978年に日中平和友好条約が締結された際、当時のトウ小平副首相は「次の世代はわれわれよりも知恵深いだろうから、お互いに受け入れられる良い方法を見つけることができるだろう」として、領有権問題の棚上げを提案した。中国の最高指導者だった故・毛沢東主席は73年、米国のキッシンジャー大統領補佐官(当時)に「当分は台湾がなくても大丈夫だ。100年ほど後に再び統一すればよい」と発言した。台湾問題が米中関係の障害になるのなら、この問題を棚上げしてもよいという意味だった。70年代の中国は、北方のソ連と海の向こうの米国の脅威から、中国大陸を守ることが自国の安全保障の最優先課題だったため、それ以外の領土問題は先送りしていたのだ。
韓国が実効支配している独島(日本名:竹島)に対して日本が領有権を主張し、また日本が実効支配している尖閣諸島に中国が領有権を主張する領土問題は、実はかなり前から存在していた。しかし、日本も中国もこれまでは独島と尖閣諸島の現状を認め、状況を変える行動は自制してきた。領土問題に軽々しく手を出すと、東アジアの秩序を不安定なものにしてしまうからだ。ところが日本の野田政権が今月11日、尖閣諸島に対する実効支配を強化するため島の国有化に踏み切ると、中国は待ってましたとばかりに、日本の実効支配という現状を変えるための行動に乗り出した。
このような状況は、韓国が実効支配している独島にも、予想外の挑発が行われる危険性があることを示している。過去60年間、大韓民国の安全保障は韓米同盟を基軸とし、北朝鮮による南侵に備えるというある意味単純な構造だった。しかし、東アジア秩序の基本的な枠組みに亀裂が生じ、韓国は独島に対する日本からの脅威、離於島(中国名・蘇岩礁)に対する中国からの脅威にも備えなければならない状況に追い込まれている。また、これらの新たな脅威に対しては、韓米同盟では対処することができない。
この国の大統領を目指す政治家たちは、大韓民国の運命に直結する東アジアでの安全保障の複合的な脆弱(ぜいじゃく)性を直視し、その対策を提示しなければならない。また国民も、韓国を取り巻く困難かつ微妙な状況から一瞬も目を離してはならない。