冊子「知っていますか?在日コリアンのこと」 日本市民と同胞が共同編集
静岡「草の根」連帯の結実
「K-ポップスにドラマ、『韓流ブーム』に沸く日本。しかし、あなたは在日コリアンについて、どんなことを知っていますか」-こんな問いかけで始まる冊子が今年3月、静岡県で発刊された。昨年、「韓国強制併合100年・静岡共同行動」に参加した日本市民、同胞らの共同作業によるもの。過去の歴史問題と向き合い、活動を続けてきたアマチュア編集者たちのポリシーは「出来るだけ分かりやすく」、読者ターゲットは「若い人たち」だ。
「併合100年」を機に
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冊子の表紙(左)、冊子の中身
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昨年3月、日本人60人、同胞23人の呼びかけ人によって「静岡共同行動」が始まった。最終的に賛同者は100人を超え、歴史問題についての学習や静岡県下の強制連行企業への事実確認行動などが年間を通じて行われた。
グループの共同代表を務めた森正孝さん(69)によると静岡県下で日本の市民と在日朝鮮人が「組織的、継続的な連帯行動」を展開するのは「初めてのこと」だった。
森さんは数年前まで静岡大学で講師をしていた。専攻は日中戦争史だが、その頃から、日朝問題や在日朝鮮人に関する特別講義を行っていた。今回、「強制併合100年」に際した行動を通じて、朝鮮半島に対する日本の侵略と植民地支配の歴史を正しく認識し、伝えていくことの重要性を改めて痛感したという。
「例えば、『高校無償化』から朝鮮学校だけが排除されている問題。それを過去の歴史と結びつけて考える土壌がない。いわゆる『北朝鮮バッシング』の動きに流されている」
「静岡共同行動」のテーマとしては、強制連行の歴史などに取り組んだが、同胞の参加者からは「いまの問題」にもっと焦点を当てるべきとの意見が上がったという。「高校無償化」に関する日本政府の差別的施政についても議論が交わされた。それは「過去の歴史と現在の状況が繋がっている」という視点をメンバーが共有していくプロセスだった。
昨年、「静岡共同行動」は各政党の静岡県連に対して「無償化」問題に関する申し入れを行い、静岡朝鮮初中級学校との交流会も企画した。森さんによると「行動することで、メンバーの中に新たな問題意識が芽生えた」。「強制併合100年」を機に掲げた目標が「一年で達成されるものではない」という認識が深まり、「在日コリアン」に関する冊子を編集するアイデアが具体化していった。
「若い人にも読みやすく」
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森正孝さん(左)と川崎二男さん
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昨年秋、12人の編集委員が選ばれた。「自分自身も勉強しながら、分担されたパートを執筆」(森さん)するという方法で作業は進んだ。編集委員たちは、静岡県に朝鮮学校が存在する事実も知らない県民が多いという現状を踏まえ、身近なテーマを平易に記述することを心がけたという。
冊子には在日コリアンの歴史や植民地支配に対する日本の謝罪、賠償問題に関する解説以外にも「コリア(ン)の元は『高麗』」、「『北朝鮮』という国名は存在しない」、「朝鮮から来た日本語」などのコラムも掲載されている。
冊子編集を統括した川崎二男さん(59)によると、数カ月にわたる作業は「意見と反論の過程」でもあった。同胞の編集委員らは、自分たちが置かれた状況と差別に反対する姿をありのままに堂々とアピールしようとし、日本の編集委員らは、「当事者」たちの思いを受け止めながら、それを一般の市民に伝えるための形式や表現にこだわった。川崎さんは、「日本の『負の部分』をストレートに書いたために、事前知識のない若い人たちが、文章をきちんと読まず、拒否反応を起こすようなことがないように気をつけた」という。
結果的には編集委員たちの熱い議論が「相乗効果」を生んだ。主張すべきことが明確に書かれ、中高生にもわかる読みやい冊子が完成した。
現在、「静岡共同行動」のメンバーは冊子の普及に努めており、県内だけでなく、愛知、大阪など他府県にも口コミで広がっている。冊子を求める人々の中には、内容の一部を再編集し、自分たちの地域的特徴を反映するケースもあるという。例えば、静岡朝鮮初中級学校に関する記述を、その地域にある朝鮮学校の歴史や現状を紹介する文章に置き換えるといった具合だ。「静岡共同行動」のメンバーは、「まずは、より多くの人々に事実を伝えることが大事。日朝連帯運動の様々な現場で、冊子を積極的に活用して欲しい」と語っている。
冊子「知っていますか?在日コリアンのこと」
問い合わせ:韓国強制併合100年・静岡共同行動(共同代表・森正孝)
〒420-0813 静岡市葵区長沼2-18-13
TEL 054-263-0989