1:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/20(木) 03:52:03.24ID:fVKbLX6m0
律子「……」

伊織「……♪」ギュッ

律子「……伊織」

伊織「なあに?」

律子「あついわよ、離れて」

伊織「いやよ! 何言ってんの? 律子から一秒だって離れられるわけないじゃない!」

伊織「この私は、宇宙一の天才美少女アイドル、水瀬伊織ちゃんなのよ?」

律子「関係ないでしょ! ああもう、デコをすりよせるなっ!」








2:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/20(木) 03:58:18.59ID:fVKbLX6m0
あずさ「さっきのレッスン中におでこを打っちゃったみたいで~……」

亜美「それからずっとずーっと、律子はどこ? 律子はどこ? ってウロウロしてたんだよ~」

律子「そうなんだ……というかそれってもしかして、ヤバイんじゃないの?」

伊織「なにがヤバイのよ」ギュー

律子「頭のどっかのネジが外れちゃったのかもしれないでしょ」

伊織「私の頭の中はいつも律子でいっぱいよ?」

律子「あらありがと。じゃあ病院に行きましょうね」

伊織「や!」プイ

律子(やだ、ちょっとかわいいじゃない)




5:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/20(木) 04:05:37.01ID:fVKbLX6m0
律子「……えー、ゴホン! なんで病院行くのがいやなわけ?」

伊織「私、どこもおかしくなんてないもの」

律子「明らかにおかしいじゃない! いつもと全然違う!」

伊織「いつもは……あんたの顔を見てると、ちょっと素直になれないだけ、というか……」モジモジ

律子「……」

あずさ「まぁ……伊織ちゃんったら、かわいいわね~」

伊織「にひひ♪ ありがと。こういうの、ツンデレって言うんでしょ?」

律子「演技だったんかい……」

律子(ちょっとキュンときた私がバカみたいじゃない)

伊織「お褒めにあずかり光栄だけど、でも私の心は、律子だけのものなんだからね?」

あずさ「ふふっ、ラブラブね~♪」

伊織「もっちろんよ!」

律子「私にその気はないからそれはただのラブよ」




7:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/20(木) 04:13:19.99ID:Ws/HPeXW0
俺の心は伊織だけのものなんだからね




8:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/20(木) 04:17:01.53ID:fVKbLX6m0
亜美「ねぇねぇいおりんいおりん! 律っちゃんのドコが好きなの~?」

伊織「あえて言うなら……全部かしら?」

律子「全然あえてないじゃない……そういう言い方って、意外と良い印象を持たせないものよ」

伊織「あら、でも本当のことよ? 何より、律子の優しいところが好き」

律子「べ、べつにそんなこと……」

伊織「隠さなくたっていいわ。私にはちゃんとわかってるんだから」

伊織「普段私達のために寝る間も惜しんで頑張ってくれてるとこが好きだし、感謝もしてる」

律子「……」

伊織「もちろん見た目だって好きよ。律子は綺麗な顔立ちしてるし、スタイルもいいじゃない」

伊織「たまにステージに立つときだって、とても生き生きしてキラキラしてる」

伊織「ま、さすがに私には及ばないけどね! にひひ♪」

亜美「お~! いおりんのラブはホンモノだね!」

伊織「どう? わかってくれたかしら。お望みとあればまだまだ言えるけど」

律子「い、いいわよもう……。…………ま、一応、あ……ありがと」




9:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/20(木) 04:23:37.38ID:fVKbLX6m0
律子「……でもとにかく、今はそれどころじゃないわ。病院、行きましょ?」

伊織「や! なの!」

律子「……さっきからそれ、美希のマネ?」

伊織「こうすれば、プロデューサーっていう人種は言うこと聞いてくれるんでしょ?」

律子「あの人が特別そういう押しに弱いだけよ」

伊織「じゃあなに、律子は本当に私を病院に連れていきたいってわけ? 本気で?」

律子「そうよ」

伊織「……ほ、ほんとに? いおり、全然、どこも悪くないのに……?」ウルウル

律子「う……そ、それも演技でしょ、わかってるんだから」

伊織「……」ゴシゴシ

律子「……」

伊織「律子が……そこまで言うなら……わかったわ。病院……行きましょ……」

律子「…………」




11:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/20(木) 04:28:30.30ID:fVKbLX6m0
伊織「それで入院、なんてことになっても……律子、ちゃんと毎日お見舞いに来てくれる?」

律子「……え、ええ」

伊織「ほんとにほんと? 約束よ?」

律子「もちろんよ……」

伊織「じゃあじゃあ、指きり、しましょ?」

律子「指きり? 別にいいけど……」

スッ

伊織「……ゆーびきーりげんまん」

律子「うそついたら……どうするの?」

伊織「……律子のこと嫌いに、な~る」

律子「……」

伊織「ゆーびきった! えへへ……これでもう、安心ね」

伊織「それじゃあ……行きましょうか……病院……」シュン

律子「…………」

律子「ちょっと待って」




12:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/20(木) 04:35:27.26ID:fVKbLX6m0
律子「よく考えたら、病院なんてまだ気が早いかもしれないわね」

伊織「……」

律子「いま、私達竜宮小町は大切な時期だもの」

律子「もしリーダーの伊織が入院、なんてなったら、IAの審査にも多大な影響が出るわ」

あずさ「でも、本当に病気ってことも、あるんじゃないですか~? そしたら……」

律子「ええ、もちろんそうなったらすぐに入院させます。でも……」

亜美「でもでも?」

律子「……まだ、そうと決め付けるには早い。もう少し、様子を見ましょう」

伊織「もう少し、って?」

律子「そうね……明日になってもこのままだったら、ね」

伊織「……ありがと、律子。だーいすき!」

律子「あ、あら。別にお礼を言われるようなことじゃないわ」

律子「ただ私は、こうするのがベストだと思っただけだし……」

律子「べつに、伊織に嫌われる可能性が少しでもあるのがいやだった、とか、そういうんじゃ全然ないんだから」




14:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/20(木) 04:45:46.26ID:fVKbLX6m0
伊織「にひひ♪ やっぱり律子って、優しいから好きよ」ギュー

律子「……あんた、さっきまで涙目になってなかった?」

伊織「あら、そうだったかしら? そんな昔のこと忘れちゃったわ」

亜美「いおりんは最近、遠心力に磨きがかかってるもんね~」

律子「それを言うなら演技力、でしょ。うろ覚えで適当なこと言わないの」

伊織「律子っ」

律子「……なによ」

伊織「じゃあ今日は最後まで、一緒にいてね?」

律子「じゃあ、って何? 関係ないじゃないの」

伊織「だって、明日になったら入院しちゃう可能性だってあるんでしょ?」

伊織「私としては、全然そんなことないと思うだけど……それなら今、めいっぱいくっついて、律子成分を補充しとかなきゃダメじゃない」

律子「……」

伊織「……だめ? やっぱり、私にくっつかれてるなんて……いや?」

律子「……だーもう、わかった、わかったから! デコをすりよせるなっ!」

律子(たしかにプロデューサーって人種はみんな、こういう押しに弱いのかもしれないわね……)




17:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/20(木) 04:55:15.44ID:fVKbLX6m0
伊織「今日は大切なゲストに来てもらったわ」

律子「……ちょっと伊織」

伊織「そういうわけだからみんな……って、何よ律子」

律子「なんで私が、水瀬家に招待されてるわけ?」

伊織「今日はずっと一緒だって約束してくれたでしょ?」

律子「いや、そうだけど……逆ってことは考えられないの?」

伊織「逆?」

律子「伊織が私の家に来るとか……」

伊織「そ、そんな、私が律子の家だなんて……何考えてるの! バカ、変態! どうかしてるわ!」

律子「あんたの頭の中がどうかしてるわよ」

伊織「……こほん! と、とにかくみんな! 私の大切な人を、丁重におもてなしして頂戴」

はーい

律子(私に抱っこされてるせいか、いまいち伊織に威厳が感じられないわね。皆さんなんだかやる気もなさそう)




18:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/20(木) 05:03:04.47ID:fVKbLX6m0
律子「ぜぇ、ぜぇ……」

伊織「あ、ここよ。私の部屋」

律子「ああ、やっと着いた……? ふぅ……」

伊織「新堂、律子は今手がいっぱいだから、代わりにドア開けてちょうだい」

新堂「かしこまりました」

ガチャ

律子「うっわ、想像はしてたけど、広いわね……さすがだわ」

伊織「そうかしら。これくらい普通だと思うけど」

律子「これが普通だったら、私の部屋はなんなの、犬小屋なの?」

伊織「うーん……でもでも、確かに、もっと狭い方がいいかもね」

律子「……なんで?」

伊織「だってその方が、より愛を……」

律子「でやっ」ポイ

ポフン

伊織「きゃんっ! な、何するのよ! い、いい、いきなりベッドの上に放り投げるなんて……」ドキドキ




19:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/20(木) 05:06:44.92ID:fVKbLX6m0
律子「あー、重かった」

伊織「……」チラ

律子「そんな目で見るんじゃないわよ……どんなこと考えてるわけ?」

伊織「知りたい?」

律子「結構よ」

伊織「……ごめんね、律子」

律子「え?」

伊織「私のわがまま聞いて、ここまで抱っこしてくれて……大変だったでしょ」

律子「……ま、確かに私はそんなに体力あるほうじゃないからね」

伊織「……」グスッ

律子「……」

伊織「ごめんね……こんな自分勝手な私、嫌いになっちゃうわよね」

律子(演技だかどうなのか判断つかない。誰か教えて! 私を助けて!)




21:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/20(木) 05:13:20.27ID:fVKbLX6m0
律子「……はぁ。隣、失礼するわね」

ポフン

伊織「あ……」

律子「どうしちゃったのよ、急にしおらしくなっちゃって」

伊織「……」

律子「いつもの伊織らしくないじゃない、まぁ、今日のあんたは全体的に、らしくないんだけど」

伊織「……だって……」

律子「だって?」

伊織「律子から、離れちゃったから……さみしくなっちゃったんだもん」

律子「……」

伊織「このままいなくなっちゃったらどうしよう、って……だから……」

律子「…………」

ナデナデ

伊織「ふあ……」

律子「前々から思ってたけど、あんたってやっぱり、悪魔よね。小悪魔」




24:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/20(木) 05:24:19.84ID:fVKbLX6m0
伊織「……髪、撫でられるの……気持ちいいわ」

律子「そう。それはよかったわ」

伊織「……ずっとこうしていたい……」

律子「……」

サラサラ

律子「……ほんと、信じられないくらいサラサラね。指から零れ落ちるみたい」

伊織「レディだもの。ちゃんと毎日ケアすること、欠かしていないわ」

律子「だとしても、中々ここまでのものにはならないわよ。同じ女としては、羨ましいったらないわね」

伊織「あら、でも律子の髪も、私は好きよ?」

律子「クセも多いし、徹夜明けの日なんてものすっごいボサボサなのに?」

伊織「そんなの関係ないわよ。あんたの髪だから好き。それ以外に、好きになる理由は必要なわけ?」

律子「……そういう台詞、どこで覚えたの?」

伊織「? どこでも何も、私がずっと思ってた言葉だけど」

律子(……できればそういうのは、男性から言ってもらいたかったわね。なーんて……言えない)

律子(嬉しい、なんてのも……どーせ調子に乗るんだし、言ってやらないんだから)




26:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/20(木) 05:35:45.20ID:fVKbLX6m0
伊織「……ねえ、律子?」

律子「なあに?」

伊織「……本当はこんなの、気持ち悪いわよね」

律子「……何がよ」

伊織「私は女の子なのに、女のあんたに、こうして甘えたがるなんて」

律子「……」

伊織「……」

律子「たしかに、普通じゃないかもね」

伊織「! や、やっぱり……」

律子「でもそれが何よ。迷惑だったら、本当に嫌だったら、私はこんなところまで来てないわ」

伊織「え……」




28:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/20(木) 05:40:59.64ID:fVKbLX6m0
律子「はっきり言って、今のあんたは、いつもとは違うと思うわ」

律子「私だって、決して……そういう趣味があるわけでもない」

律子「でもね……」

ナデナデ

伊織「っ!」

律子「……こうして伊織に甘えられて、嬉しくならない人が……いるわけないじゃない」

伊織「嬉しい……の?」

律子「……ま、ほんのちょっとだけど」

伊織「ほんのちょっとでも……律子が嬉しいなら、私も嬉しいわ」

律子「……そう」

伊織「ふふっ……♪」

律子「……ごほん! それに、私はあんたのプロデューサーよ?」

伊織「? それがなんだって言うの?」

律子「プロデューサーたるもの……担当アイドルのことは、世界で一番可愛くて素敵な女の子だと信じているわ」

律子「……私は本当に、嫌じゃない。だから……安心して」




30:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/20(木) 05:51:37.10ID:fVKbLX6m0
伊織「……世界で一番?」

律子「ええ」

伊織「亜美やあずさよりも?」

律子「……そこは、同率一位ってことにしておいてちょうだい」

伊織「にひひ♪ わかってるわよ。律子は誰かだけをひいきしたり、しないものね」

律子「……」

伊織「ねえ、律子」

律子「……何?」

伊織「それじゃあ私のこと、好き?」

律子「それは……難しい質問ね」

伊織「私なら同じ質問、すんなり答えられるのに」

律子「……その答えは、明日の朝まで言わないでおくことにするわ」

伊織「……明日の朝……そう、わかったわ」

律子「……ごめんなさい」

伊織「いいのよ、気にしないで」




32:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/20(木) 05:57:44.46ID:fVKbLX6m0
コンコン

伊織「あら?」

律子「!」ババッ

『お嬢様、夕食の支度が整いましたので……』

伊織「わかったわ。今行くから」

律子「……」

伊織「律子、どうしたの?」

律子「い、いえ……な、なな、なんでもないわ」

ドックンドックン

律子「……」

律子(うわぁ……な、なんか、空気に押されて、とんでもない雰囲気になってた……)

律子(だ、誰にも見られなくて……よかった……。そんなの恥ずかしすぎる……!)

伊織「……にひひ♪ 急にドアを開けて入ってきたり、しないわよ」

律子「べ、べつにそんなんじゃないんだから!」




33:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/20(木) 06:07:23.49ID:fVKbLX6m0
伊織「……」モグモグ

律子「……」

伊織「……どうしたの、律子。さっきから手が進んでないじゃない」

律子「あのね……私、着の身着のまま、ここに来ちゃったでしょ」

伊織「ええ、そうね。それが?」

律子「このスーツだって、決して安くはないけど、もちろん高くもないのよ」

伊織「さっきから何が言いたいの?」

律子「だからね……なんというか、場にあってないような……」

伊織「そうかしら……誰もそんなの、気にしないわよ」

律子「こんな高級なお食事目の前にして、落ち着いて食えって方が難しいわよ! 一般庶民を舐めないで!」

伊織「律子、はしたないわよ? 食事中に大きな声を出すなんて」

律子「……すいません」

伊織「テーブルマナーも、見た目も、気にしなくていいわ。だってあなたは今日、私の友人として来ているんだから」

律子「……わかったわよ。いただきます……」




35:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/20(木) 06:15:46.32ID:fVKbLX6m0
ガチャ

伊織「また帰ってきたわね、私達の愛の巣へ」

律子「何バカなこと言ってんの」

伊織「食事はお気に召したかしら?」

律子「しょーじき、緊張して味なんてわかんなかったわよ……」

伊織「そう……」

律子「……冗談。そんなに落ち込まないで」

伊織「……ふふっ。私が落ち込むと、律子も心配しちゃうものね?」

律子「はいはい。……とても美味しかったわ、ありがとう。食事を作ってくれた人にも、お礼を言っておいてちょうだい」

伊織「特別ボーナスをあげないとね♪」

律子「言葉を伝えるだけでいいわよ」

伊織「あ、もちろん、私が稼いだお金からよ?」

律子「そういうことじゃなくて……」

伊織「……うん、わかってるわ。律子が言いたいことは」

律子「……」




36:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/20(木) 06:20:23.70ID:fVKbLX6m0
律子「……やっぱり、伊織ってお嬢様なのよね」

伊織「え?」

律子「さっき食事をしていて思ったの。ああ、この子は私とは育ってきた環境が違うんだな、って」

伊織「……っ」

律子「……だから、やっぱり――

伊織「律子っ!」

律子「っ!」

伊織「……そんなこと、言わないで……」

律子「……ごめんなさい。さすがに……無神経だったわ」

伊織「ううん、許さない……ぜぇったい、許さないんだから……!」

律子「……」

律子(私、最低ね……)




37:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/20(木) 06:25:17.33ID:fVKbLX6m0
律子「……どうしたら、許してくれる?」

伊織「……」フルフル

律子「どうしたって、許してくれないの?」

伊織「……」

伊織「……どうしても……許して欲しいなら……――てよ」

律子「え? いまなんて……」

伊織「……安心させてよ、って言ったの」

律子「安心?」

伊織「そうよ……まずは、抱っこして」

律子「……」

ギュ

伊織「髪を撫でるのも忘れちゃだめよ? 優しくね」

律子「……他には?」ナデナデ

伊織「そうね、私のことを好きだって言っ」

律子「調子に乗らない」ペシ




38:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/20(木) 06:35:09.08ID:fVKbLX6m0
伊織「そろそろ、お風呂に入りましょ」

律子「えー……」

伊織「何よ、その顔。お風呂に入らないと、汚いわよ?」

律子「それはわかってるけど……」

伊織「それとも、ずっと私とこうしていたい? そうね、たまには汗をかいたままこうして」

律子「う・る・さ・い。そういうことじゃなくてね」

伊織「じゃあなに?」

律子「……いっしょに入るの?」

伊織「トーゼンじゃない! それ以外の選択肢があるっていうの?」

律子「そうよね、そういうことになるわよね……」

伊織「女同士なんだから、恥ずかしくないでしょ?」

律子「女同士でも貞操の危機に陥るなんて、思ってもみなかったのよ」

伊織「な、なな……初めてがお風呂でなんて何考えてるの!?」

伊織「そういうのは、お風呂から上がったあとでしょ! この変態! ド変態! 変態律子!」

律子「あんたって意外とむっつりスケベよね」




40:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/20(木) 06:40:53.12ID:fVKbLX6m0
カポーン

律子「……ふぅ」

伊織「湯加減はどう?」

律子「最高ね……あ゛~生き返るわ~」

伊織「オヤジくさいわねぇ……よいしょっと」

チャポン

律子「……」

伊織「ふぅ……」

律子「ねぇ伊織」

伊織「なあに?」

律子「なんでそんなに、密着してるわけ?」

伊織「しかたないじゃない、せまいんだから」

律子「下手したらうちの事務所くらい広いこの大浴場がせまいですって?」

伊織「細かいことはいいでしょ。嫌なら、離れればいいわ」ススッ

律子「……あっ、ちょっと、それ以上近づいたら、色々……あっ、柔ら




42:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/20(木) 06:46:21.61ID:fVKbLX6m0
ガチャ

伊織「三度舞い戻って来たわね、私達の愛の巣へ」ツヤツヤ

律子「……」

伊織「どうしたのよ、そんな顔して」

律子「ひどい目にあったわ……」

伊織「? 一体なにがあったっていうの……」

律子「あんたねぇ……おかげで全然、休まった気がしないわよ」

伊織「私としては、もう少しあそこに居ても良かったんだけど」

律子「真っ赤になってのぼせちゃう寸前だったクセに何を……」

伊織「あら、それはお互い様じゃない」

律子「……」

律子「いけない、思い出したら恥ずかしくなってきた」

伊織「……実は私もよ……」




43:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/20(木) 06:54:33.01ID:fVKbLX6m0
伊織「そろそろ、寝ましょうか」

律子「……そーね。じゃあ、私が泊まる部屋に案内してくれる?」

伊織「?」キョトン

律子「言ってる意味がわからなかったかしら」

伊織「ええ、わからないわ……律子はこの部屋で私と一緒に寝るっていうのに、一体何を言っているの……」

律子「……」

伊織「……いや?」ウルウル

律子「だーもう、そんな目をするんじゃないわよっ!」

伊織「律子、今日は私と、ずっと一緒にいてくれるって言ったのに……」グスッ

律子「わかった、わかったから! ……試しに言ってみただけよ」

伊織「にひひ♪ それじゃあ、決定ね!」

律子「本当にあんたって子は……いやもう、何も言わないわ」




44:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/20(木) 07:01:33.51ID:fVKbLX6m0
モフモフ

律子「……やばい」

伊織「何が?」

律子「このベッド、寝心地よすぎ……家具ってこだわり次第でここまで違うのね……」

伊織「毎日泊まりに来てもいいのよ?」

律子「ベッドだけちょうだい」

伊織「つれないわねぇ……ねえ、律子」

律子「ん? 何?」

伊織「くっついても……いい?」

律子「……どうせ、やだって言ってもくっつくんでしょ。いいわよ、こっちにいらっしゃい」

伊織「……ありがと……」

モゾモゾ

律子「……」

伊織「ふふっ……律子の体、あったかいわ……安心する……」

律子「足を絡ませるな」




45:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/20(木) 07:07:33.19ID:fVKbLX6m0
伊織「電気、消すわよ」

律子「ええ」

パチン

律子「……あー……すぐにでも眠れそう……」

伊織「……」

ギュ

伊織「もういくら密着しても、あついから離れろ、って言わないのね」

律子「……いい加減、私も慣れたからね」

伊織「……ねぇ、律子……」

律子「んー? 今度はどうしたのよ……」

伊織「私……ほんとに、頭おかしくなっちゃったのかしら……」

律子「……」




47:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/20(木) 07:13:05.24ID:fVKbLX6m0
伊織「……だんだんね、わかってきたの」

律子「わかってきた?」

伊織「うん……。うまく言えないんだけど……今の私が、いつもと違うんだ、って」

律子「……」

伊織「おでこを打ってから、もうだいぶ時間も経つでしょ? そのせいかしら……」

伊織「今の私のこの心の中に、前までの私の心が、入り込んできてるのが……わかるのよ」

律子「……元に、戻りかけてるってこと?」

伊織「わかんない……。でもね……、これだけは言えるわ」

律子「……なに?」

ギュー

伊織「……こわいのよ……」




48:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/20(木) 07:18:47.73ID:fVKbLX6m0
伊織「律子、頭を撫でて?」

律子「……」

ナデナデ

伊織「えへへ……嬉しい、気持ちいい……」

律子「……これくらい、いくらでもしてあげるわよ。だから、こわがることなんて……」

伊織「……律子は優しいから、そういう風に言ってくれるけど……」

伊織「きっと前までの……ううん、本当の私じゃあ、こんなことお願い出来ない」

律子「……たしかに、キャラが違いすぎるものね」

伊織「……それに」

律子「それに?」

伊織「いま……こうして、嬉しく感じてる気持ちも……」

伊織「律子のことが……、どうしようもなく好きな、この熱い気持ちも……」

伊織「今の私をカタチ作る、ぜんぶぜんぶが……目覚めたら、なくなっちゃうかもしれない……」

律子「……」

伊織「それがなにより……こわいのよ……」




49:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/20(木) 07:26:43.90ID:fVKbLX6m0
伊織「う、ううぅ……」

ポロポロ……

律子「……伊織」

伊織「グスッ……な、なに?」

律子「……安心しなさい。私がぜんぶ、覚えているから」

伊織「覚えてる……?」

律子「ええ……。もし、明日の朝になって……今のあなたの気持ちがぜんぶ、無くなっちゃっても」

律子「今日のことは、私が忘れない」

伊織「……」

律子「伊織が言ってくれた言葉、それで私が感じた気持ち……ぜんぶぜんぶ、大切に覚えている」

律子「そうすれば……今のあなたは、私の中で一生、生き続けるから」

伊織「……」

律子「……なーんてね」

伊織「バカ……そんなの、全然、解決になってないわよ……」

伊織「バカ、バカバカ……そんな風に言われたって、全然、嬉しくなんかないんだから……」




50:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/20(木) 07:31:12.72ID:fVKbLX6m0
―――

伊織「……すぅ……すぅ……」

律子「……泣きつかれて、寝ちゃったか」

伊織「……むにゃむにゃ……りつ……」

律子「ほんとにもう……。悪魔だと思ったら、すぐ天使みたいな顔するんだから……」

律子「……」

ちゅ

伊織「うんっ……」ペチペチ

律子「おでこが蚊に刺されたとでも思ってるのかしら」

律子「……」

ぎゅー

律子「おやすみ、伊織」




52:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/20(木) 07:34:58.84ID:fVKbLX6m0
チュンチュン……

律子「……ん……? 朝……かぁ……」

伊織「……」

律子「んー……くはぁっ! うーん、良い目覚めね。さすが最高級のベッド」

伊織「…………」

律子「あら、伊織も起きてたの。おはよう」

伊織「おっ、おはっ、おはおは……」

律子「どうしたのよ、顔真っ赤よ?」

伊織「どうしたもこーしたもないわよっ!!! な、なな、なんで律子が、私といっしょに寝てるわけっ!?」

律子「……む、覚えてないの?」




53:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/20(木) 07:40:07.12ID:fVKbLX6m0
伊織「お、覚えてる……? なな、なんにも覚えて……」

律子「……その感じだと、本当に元に戻ったみたいじゃない」

伊織「きー! さっきから何を言ってるわけ!?」カァァ

律子「しかしまぁ……都合よく忘れるもんねぇ」

伊織「……う、うぅ……」

律子「……」

伊織「……なによ、その顔……ニヤニヤしちゃって……」

律子「伊織」

伊織「……な、なに……」

律子「本当に、覚えてないの? 昨日、私とあんたに何があったか」

伊織「!!」

律子「私は覚えてるんだけどなぁ~。約束したし」

伊織「や、やめてよ……」

律子「忘れてるなら、なんでそんなに顔真っ赤で慌ててるのかなぁ~」




55:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/20(木) 07:48:44.81ID:fVKbLX6m0
律子「……ま、覚えてるかどうかはともかく。あんたが元に戻ったみたいでよかったわ」

伊織「……」

律子「これから先ずっとあんな感じだったら、身が持たないもの」

伊織「……ね、ねえ……」

律子「ん?」

伊織「私、ほんとに……なんにも、なんにも、覚えてないけど……」

律子「わかったわかった、そんなに繰り返さなくてもいいから。それで?」

伊織「……も、もし、私が、律子になにかしちゃったとして……」

伊織「律子は……それが、いやだった……?」

律子「……」

律子「いやなわけないでしょ。何度言わせるのよ」

伊織「!」

律子「まあ、昨日私がこう言ってあげたことだって、伊織いわく忘れちゃってるらしいけどね」

伊織「そ、そうよ。これは確認でもなんでもないんだから」

伊織「これはただ……そう、気が付かないうちに律子に迷惑かけてたなんて私の誇りが許さないから、それだけなんだから」




56:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/20(木) 07:54:57.07ID:fVKbLX6m0
律子「ふふっ、わかったわかった……それじゃ、そろそろ支度しましょうか」

伊織「支度?」

律子「そうよ~。今日だって明日だって、伊織はアイドル、そして私はプロデューサー。お仕事が待ってるんだからね」

伊織「……うん」

律子「んん? どうしたのよ、そんな顔して……」

伊織「……あ、あの……」モジモジ

律子「……伊織、あんたほんとに、元に戻ってる?」

伊織「も、戻ってるわよっ! 昨日みたいな、デレデレした私じゃ……あ」

律子「……」

伊織「にやけてるんじゃないわよっ、このバカぁ!」

律子「やっぱり覚えて……」

伊織「きー! なんなのっ! 私が何をしたって言うのよっ!」

ぎゅっ

伊織「!!?」

律子「……そうね。あんたはただ、答えが聞きたかっただけだもんね」




58:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/20(木) 08:00:31.20ID:fVKbLX6m0
伊織「う、うぅ~……」

律子「大丈夫よ。ちゃんと、私はわかってるから」

伊織「……なによ、からかってるの……?」

律子「ううん、そんなことない。私もあなたといっしょ、照れてるのよ」

伊織「わ、私はべつに、照れてなんかっ……」

律子「……」

伊織「……な、なんとか言ってよ……」

律子「伊織」

伊織「……」

律子「あなたに昨日、約束したわよね。今日の朝、伊織のことを好きかどうかって質問に答えてあげるって……」

伊織「……そうだったかしら」

律子「そうなのよ。私は昨日のことを一生覚えてるって決めたんだから、間違いないわ」

伊織「…………」

律子「私はね……あなたのことが、好きよ」




63:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/20(木) 08:05:52.42ID:fVKbLX6m0
伊織「っ!」

律子「昨日みたいな、デレッデレ甘々の伊織も可愛かったけど……なにより、私はね」

伊織「え……?」

律子「今のあなたが……いつものあなたが、好きなのよ」

伊織「そ、そう……そう、なんだ……」

律子「……でも、勘違いしちゃだめ」

伊織「勘違い……?」

律子「私は決して、そういう気があるわけじゃないんだから」

伊織「……ふんっ。勘違いしてるのは、あんたのほうじゃないの? べつに、私だって……ノーマルよ」

律子「……」

ギュー

伊織「……ちょっと、苦しいじゃない」

律子「そんなこと言うんだったら、そんな顔、しないで」




64:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/20(木) 08:12:20.77ID:fVKbLX6m0
律子「……今のノーマルなあんたには関係ないから、これはひとり言よ」

伊織「……」

律子「昨日、あんなことがあったけど……私は……すっごく、すーっごく、嬉しかった」

伊織「……え……」

律子「ずっと、このままでいたい……って、私だって、そう思ったわ」

伊織「……っ」

律子「あんたにくっつかれて、私の心がグラグラになったのは、事実」

律子「だから……もしも、ね」

伊織「……もしも……?」

律子「もしも……昨日のあなたの心が、いまのあなたのものになったら……」

律子「そのときは、さすがの私も……落ちちゃう、かもね」




65:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/20(木) 08:20:05.95ID:fVKbLX6m0
伊織「……ふんっ、そうなの。でもそんなの、私には関係ないわね」

律子「だからひとり言だって言ったでしょ?」

伊織「うう、うるさい! 律子の思い通りには、させないんだから!」

律子「……どういうこと?」

伊織「……さっき。今の私が、なにより好きって言ったわよね」

律子「ええ……」

伊織「それなら、昨日みたいなズルじゃなくて……今のこの私で……勝負するんだから」

律子「……」

伊織「律子が世界一可愛いって言ってくれたんだから、それくらい簡単よ。にひひ♪」

律子「……あんた、自分が今どんなこと言ってるか、わかってる?」

伊織「え?」


伊織「……!!!!」




66:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/20(木) 08:23:10.22ID:fVKbLX6m0
律子「頭打ったのにもなんにも、関係なく……」

伊織「あ、あう……あぅうう……」

律子「ついに……」

伊織「……み、み、見ないで……」

律子「伊織がデレたわね!」

伊織「ううっ、うるさーい!」

伊織「そ、そんな……嬉しそうな顔しないでちょうだいっ! ばかぁっ!!!」

おわり




67:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/20(木) 08:25:04.02ID:jRoesYsQ0
まとまっててよかった。

他に何か書いてたら教えて欲しい。
読んでみたい。




72:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/20(木) 08:30:49.35ID:fVKbLX6m0
>>67
最近書いたのだと、
P「安価でアイドルプロデュースしてIA大賞獲得を目指す」
P「涼ちん♪」 涼「」
あたりです。涼ちんちんのは乗っ取りだけど




68:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/20(木) 08:25:08.42ID:fVKbLX6m0
おわりです。読んでくれた方ありがとう
りっちゃんかわいい




71:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/20(木) 08:27:52.61ID:N1K5DipM0


律子ー!俺だー!伊織と結婚してくれー!




75:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2012/09/20(木) 09:53:11.75ID:aftZSSiD0
>>1乙。


転載元
http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1348080723/l50