竜宮から来た釣鐘

門部:日本の竜蛇:中国:2012.01.06

場所:鳥取県鳥取市 本願寺
収録されているシリーズ:
『日本の伝説47 鳥取の伝説』(角川書店):「竜宮から来た釣鐘」
『日本伝説大系11 山陰』(みずうみ書房):「竜宮の大釣鐘」
タグ:竜蛇と鐘


伝説の場所
ロード:Googleマップ

鐘が海上運ばれる途中船が沈み、後引き揚げられた、という由来を持つ「竜宮の鐘」はあちこちにあるようだ。しかし、伝承の中に直接「竜宮」にまつわる存在(竜女など)が現われ鐘をもたらす、という話となるとそうはない。これが伝えるのが因幡の海、鳥取駅からもほど近い本願寺の「竜宮から来た釣鐘」の話だ。

竜宮から来た釣鐘:要約
天正年間のこと、和田範元という浪人が塩俵を馬に乗せて伏野の浜にさしかかると、突然海中から小さな鐘を小脇にかかえた女が現われ、この鐘を鳥取城下の本願寺まで届けてほしいと声をかけた。
女は、自分たちはこの下の竜宮に住む者であるが、本願寺の阿弥陀が海中におられたとき魚や貝にいたるまで慈悲をお施しになられた。いまその礼にこの鐘を差し上げたい、という。
これを聞いた範元は心に深く感じるものがあって引き受けたが、鐘は手にすると思いのほか軽い。竜女にいわれたとおり本願寺に届けたときは深更になっていた。ところが驚いたことに寺の床に置いたとたん、その小さな鐘はたちまち重さ一三〇貫の大鐘に打ち変わった。
以来、鐘は本願寺の寺宝とされ、竜宮の釣鐘と呼ばれてきた。昔からひび割れがあって撞かれたことがない。また撞くと大水が出るという言い伝えもあり、〝鳴らずの鐘〟で通っている。

角川書店『日本の伝説47 鳥取の伝説』より要約

本願寺・鐘楼
本願寺・鐘楼
リファレンス:お寺の風景と陶芸画像使用

鐘は実在する。平安前期の作とされ、堂々の国重文である。

鳥取市公式ウェブサイト「鳥取市の指定文化財」
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驚くべきことに公式資料にも「伝説を裏書するかのように、鐘にあわびの貝殻が付いており、現在も保存されている。」と書かれているのだ。もっとも鐘は伝説ほど大きくはないらしいが。

「阿弥陀が海中におられたとき」と言っているが、本願寺は阿弥陀像の方にも伝説があり、本願寺が建てられる際、海上運ばれる途上船が沈み海中に没した阿弥陀像だという。後に引き揚げられ、本願寺に安置され、梅雨時になると全身に塩のような汗をかくので「汗かき阿弥陀」と呼ばれているそうな(同・角川『日本の伝説47』)。

竜女が現われた伏野の浜は、山陰本線末恒駅の北側で、もうすぐ西が因幡の白兎の白兎海岸というところだ。このあたりの関係にも大変興味深いものがありそうだ。

memo

竜宮から来た釣鐘 2012.01.06

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