2011年3月11日に発生した東京電力福島第一原子力発電所の事故により、福島県全域に広がった放射能汚染によって、多くの県民が避難を余儀なくされ、また多くの住民が日々の生活の中で放射能、放射線の不安に晒されてきました。
避難されている住民が復帰し、元の生活を取り戻すため、環境に広く沈着している放射能を除去し、放射線量を低減することを目指して、コープふくしまの「除染ボランテイアサイト」に、多数の方に登録をしていただき、放射能の除染作業にご協力いただいてきました。
除染という困難な作業にご協力いただきましたことに、心より感謝申し上げると共に,みなさまの高い志が、まだ不十分とはいえ、国を動かし、地域の方に大きな勇気を与えてきていることを改めてご報告させていただきます。
さて、皆様には既にご案内のことと思いますが、新たに発足する原子力規制委員長としての任を受けました。本件については、多くのご意見やご忠告を頂き、去る8月1日には、衆参両院の議運運営委員会において、所信を述べ、質疑をうけました。国会同意の採決が先送りされたままですが、9月11日に首相任命により、19日から原子力規制委員会委員長の任を担うことになります。
原子力規制委員長を受けるにあたっては、福島のために身の丈に合った取組みをするべきという自戒もありました。しかし、時間の経過とともに、福島の苦しみが急速に忘れられてゆく状況を肌で感じていた中で、福島県の状況、県民の苦悩を実感できる者として、国民が納得できる原子力の安全規制に取り組むことは、日本のため、立地地域のため、そこで暮らす人々のためになると考え、その役割を担う決心しました。
原子力規制委員会の最大の役割は、国民の健康と財産を守り、環境への影響を防ぐこと、即ち、再び福島のような事故を二度と起こさないように監視することです。被ばく管理や放射線防護、放射能除染に伴う廃棄物の処理、福島第一原発の後始末等に係る安全の確保など、福島の復興に関わる重要な使命をも担うことになります。私自身は、福島の原発サイト内外の後処理に係る安全の確保は、緊急で、かつ最も重要な課題であると認識しています。
私は、これまで「最優先すべきは福島の復興である」として、努力をしてまいりました。しかし、除染一つとっても、福島県民の期待とは大きくかけ離れた状況であることに腹立たしい思いを抱いています。福島県と県民の復興には,根気強く、弛むことのない長い取組みが必要であることは明白ですが、そのことは決して容易なことではありません。
除染がようやく軌道に乗りかかってきている時に、結果的に除染の現場を離れることについては、心残りも少なくありません。除染の効果についての様々な意見がありますが、除染なくして福島の復興はあり得ないという確信は些かも変わりません。「除染ではなく移染である」という揶揄も少なからずありますが、こうした揶揄は、避難を余儀なくされている皆さんの心を踏みにじるばかりでなく、実際の除染を行なってきた皆さんへの努力に対する冒涜であり、福島に対する本心が見えます。
一方、国や自治体の責任とされる除染作業も、一人一人の住民の理解と協力、前向きの取組みなしには、思うような除染の成果は得られません。しかし、様々な不信感や放射線に対する懸念があり、まだまだ不十分と云わざるを得ません。その意味で、住民と心を通わせ、住民の気持ちになって困難で、根気の要る除染作業に取組んでいただけるボランテイア皆さんの活動は極めて貴重なものです。除染ボランテイアの皆さんの取組みは、住民に勇気を与え、また福島の実状を全国に伝え、福島を忘れさせないために、これからも益々重要な役割を果たすものと確信しております。
私自身は、暫くの間は除染の現場で皆様とともに汗を流す機会を持つことは出来なくなりますが、「コープふくしま」には、これまでどおり除染ボランテイアのお世話をしていただけるとのお約束を頂きました。
誠に勝手なお願いですが、私が原子力規制委員長として微力を尽くす我侭をお許しいただき、福島の復興のために皆様に引き続きお力をお貸し頂くよう心からお願い申し上げます。 |