ネコのお堂、招きネコ、ネコの絵馬――。山口県萩市の山あいに、「ネコ寺」と呼ばれる山寺がある。ネコづくしの境内には、過疎化が進む地域の住民に親しまれ、明るい話題をもたらしたいという住職の思いがあふれている。
萩市吉部上(きべかみ、旧むつみ村)の臨済宗雲林寺(うんりんじ)。門の下で木彫りのネコが出迎えてくれる。庭にはネコ型のお堂や石造りのネコ、本堂の正面には1.3メートルほどの招きネコも2匹いる。玄関には約500体のネコの置物。ネコの絵馬やおみくじ、お守りも作った。「ほとんど僕の趣味です」と住職の角田宗岳(すみだそうがく)さん(42)は笑う。
ネコとの関わりは6年前、事故で亡くなった知人の形見としてネコのコレクションを受け取ったことに始まる。それ以来、知り合いや地元の住民からネコの置物や人形をもらうことが不思議と増えた。調べてみると、本寺にあたる天樹院(萩市)にネコにまつわる伝説があり、縁が深いことが分かった。「萩藩開祖の毛利輝元が死去した際、家臣の長井元房が殉死した。その際、長井の飼っていたネコが、天樹院にある長井の墓を離れず、四十九日目に自ら舌をかみ切って後を追った」と伝わる。