ソードアート・オンライン Re:Birth-Swordmaster (鉄輪)
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―――――――――ソードアート・オンライン
その舞台は一層一層が縦に重なり全百層からなる巨大な浮遊城である。
プレイヤーは草原や森、町や村などさまざまなものが存在するその層を武器1本で駆け抜け、上層への通路を見出し、その層を守護する強力なモンスターを倒しながらひたすら城の頂上を目指す。
ファンタジーMMOでは必須と思われていた≪魔法≫の要素は大幅に排除され、その代わりに≪剣技(ソードスキル)≫という名のいわば必殺技が無限に近い数設定されている。その理由は己が体、己の剣を実際に動かして戦うというフルダイブ環境を最大限に体験させるためだ。
スキルは戦闘用以外にも、鍛冶や皮細工、裁縫といった製造系、釣りや料理、音楽などの日常系まで多岐にわたり、プレイヤーは広大なフィールドを冒険するだけでなく、文字通り≪生活≫することができる。望み努力すれば、自分専用の家を買い、畑を耕し羊を飼って暮らすことだって可能なのだ。 <MMOストリームより抜粋>
9/15 感想にてソードスキル使用不可に関する描写が不足してるとの意見があったので自分なりに修正しました。おかげで主人公がひどく苦しいことになりましたけどw
#1 浮遊城アインクラッド(改)
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――――――――Japanese
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Welcome to Sword Art Online
ログインの光が消えた時、俺の足は固い石畳の上にあった。中世を思わせる石造りの町並み、澄み渡る青い空、そのすべてが仮想の物とは思えない
俺と同じくログインしてきたばかりであろう人たちの驚嘆の声、少し遅れてきた人のログインの青い光の柱もぽつぽつと立ち始めている。
「すげぇ・・・、これがゲームの中なのかよ・・・。」
開いた口がふさがらないというのはこういったことを言うんだと初めて俺は思った。
視界の片隅で何人かのプレイヤーが駆け出して行ってる。きっとβテスターだったのだろうテスター時代贔屓にしてた武器屋にでもいくのだろう。その迷いない足取りは町の裏路地の方へと向かっていく。
「おっと、俺も感動してる場合じゃないぞ。まずは武器を買わなきゃ外にも出られんからな!」
とりあえずさっきのプレイヤーがダッシュしていった方に俺も走っていく。
まず、武器屋の場所すら俺は知らないがとりあえず適当な方へ行けば何かしらあるだろう。
走る道はプレイヤーが大勢いた。道端の露天商のNPCの前でしゃがみこんで武器を見てるやつ、明らかなネカマに必死にパーティ申請してるやつ。それらを横目に道を適当に走り抜ける。既に現在位置すら怪しいのは秘密だ。
路地をまた奥の方へ曲がろうとした時、急に背後から声がかかった。
「おーい、そこの兄ちゃん!」
走っていた足を止めて後ろを振り返る。初期装備である皮鎧を身につけ、特徴的な赤毛の髪をバンダナでまとめた男が追いかけてきた。といっても、初日だから初期装備であふれているのは当然だけど…。!。いい事を思いついた。
ニヤけそうな顔を我慢して俺は足を止めにっこりと作り笑顔をすると息を切らせて追いかけてきたやつに話しかけた。
「ようこそ。ここはアインクラッド第1層 始まりの町です。」
「うぇっ?!あ、ありがとうございます?・・・なんだよPCだと思ったらNPCかよ。」
「んなわけないじゃん、面白そうだからからかっただけだよ。」
ニヤニヤしながら見ると目の前のバンダナの男は唖然としている。それを見てるとさらなる笑いがこみあげて来る。
「ちょ!おまえNPCじゃないならそれっぽいこと言うなよ!!」
「でも、最初はそういわれたくない?」
「言われてみれば、RPGなら最初の町でやっぱりそう言われたいな!」
キョトンとした顔をすると、すぐさま「わかってるじゃねーか」と俺の背中をバンバン叩くバンダナ男、ダメージはないが衝撃が来る。すごいなこのシステム。
それにしてもこのバンダナ、自然にこちらの懐の中に入り込んでくるような人懐っこさがある。
こんな感じの性格のやつは、うん。嫌いじゃない。
「で、何の用?」
「あぁ、その迷いのない動きっぷり、お前さてはβテスト経験者だろ?」
「いや、違うけど?」
自信満々に俺に問いかけるバンダナ男は俺の答えを聞いて愕然としていた。やばい、こいついちいちリアクションが面白い。
がっくり肩を落としながら男は疲れた顔をしている。
「なんだ、違うのかよ。俺さ、初めてだから経験者なら序盤のコツをレクチャーしてもらおうと思ってたんだけど…。」
「俺も初めてだよ。でさ、此処で会ったのも何かの縁だし時間があるようなら一緒に狩の練習でもしないか?βテスターぽいのがこっちに向かってたから隠れの武器屋っぽいのが此処らにあると思うんだけど…」
「おぉ、そいつは助かるわ!仲間が用事あるとかで来るまで暇だったんだわ。俺はクライン、よろしくな!」
「俺はユパって名乗ってる、こちらこそよろしく」
こいつとは長く付き合えるだろうな、そう言いながらクラインと握手を交わし、初のパーティ登録をした。
~~第1階層 始まりの町・西のフィルド~~
あの後、数十分ほど迷った挙句、後ろから来たβテスターぽい奴に道を聞くことによって俺とクラインはようやく武器屋にたどり着き各々の武器を買うことに成功した。俺はスタンダードな
目の前には青い体毛のイノシシのエネミー、正式名《フレイジー・ボア》。他のゲームで言うLv.1スライムに相当するモンスターだ。フィールドを見渡せば同じように何体かの猪が暢気に草を食べているのが見える。此処に来るまでのクラインとの話し合いの結果、先に俺がエネミーを狩ることになった。
近くの石を拾い猪に向かって投げる。石がぶつかった事で猪のヒットポイントが僅かに削れ、相手の意識がこちらを向くのがわかった。
クラインがこっちをニヤニヤしながら見てるのを横目に見ながら、俺はイノシシと向かい合った。
一拍を置いてイノシシがこちらに向かって突進を仕掛けてくる。その巨体からは想像できない速さが出て俺は思わず思いっきり横に跳んだ。
さっきいた場所を青い巨体が通り過ぎてったのを見て、少し恐怖を感じる。
「おーい、ユパ!何やってんだよ。さっさとやっちゃえよ!!」
「か、簡単に言ってくれるなよ!あの大きさでこのスピード、結構怖いもんがあるぞ!」
でも、一度スピードは見たしもう慌てることはない。
通り過ぎてったイノシシはゆっくりUターンをして再びこちらに向き直る。やはり、威圧感はある。たとえこのモンスターが
イノシシは後ろ足で何度か地面を蹴った後、再びこちらに向けて突っ込んでくる。それに対して慌てず剣を水平に構えイノシシの横を駆け抜けるようにして切り裂いた。
「・・・シッ」
「プギィィィイィィィ・・・・!!」
剣が斬るときに少し下がってしまった為か、イノシシの後ろ脚が本体から切り離され宙を舞う。当然バランスを崩したイノシシは鈍い音をたてて転んだ。
そうだ、どうせもう動けないだろうし≪
ロングソードを右肩に乗せ少しタメを作る。体が自動で動き出すことでスキルが発動したことが分かった。規定のモーションに沿って動きイノシシに向けて剣を振り下ろす。
片手用直剣基本技《バーチカル》。単発垂直切りであるこの技は、倒れたままのイノシシの首を簡単に切り取った。
イノシシは本体も飛んでった首も紫の光に包まれ、その光がバラケるようにして消えていった。
なんだこの感じ、気持ち悪い・・・。
体が俺の操作を離れて勝手に動き出す感覚。それは俺にとってあまりいいものではなかった。
他の人は、これをどう思っているんだろう。もしかして、この感覚は俺だけが感じているものなのだろうか。俺は使った瞬間から酷い酩酊感のようなものを感じた。
この感覚は少し洒落になっていないぞ……。こんなの一度の戦闘で何度も使えるもんじゃない……。
VRMMOに嘔吐するなんてシステムはないだろうが、こんな状態じゃ、おそらく戦闘すらままならないだろう。
これからは、剣技を使わないようにしよう、俺は気持ち悪い気分を押えてそう心に誓った。
≪Exp 30≫
≪Col 30≫
≪Item ボタン肉≫
視界の片隅に先ほどのイノシシ分の経験値とアイテムが入手されたウィンドウがでてきていた。
ボタン肉って、そのままかよ(笑)
「やるじゃねえか、ユパ!」
「ぬわぁ!」
考えにふけっていたら後ろからいきなりクラインに肩を組まれた。こいついるの完璧に忘れてたな・・・。
「よぅし、今度は俺の番だな。おい、ユパ!俺様の活躍しっかり見てろよ!!」
クラインは俺の肩を離すと、肩をグルングルン回しながら先ほどと同じようにイノシシに向かっていった。
俺が数分で戦闘を終わらせたのにもかかわらず、クラインは十分近く青いイノシシと戦闘を続けている。
見ていて面白いためアドバイスすることはせず、その喜劇っぷりを眺めていた。
「ぬおっ・・・・・とりゃっ・・・・・うひぃぇぇっ!」
奇妙な掛け声と共に剣をでたらめに振り回す。イノシシは俊敏な動きで右、左と回避しているためクラインの剣はすかすかっと空気を切るだけだった。
直後、攻撃の隙間を縫って
「ブッ、クククッ。ハーハハハハッ、ヒヒッ。は、腹いたい・・・・。」
「っててて・・・・・にゃろう。・・・おい、ユパ!馬鹿笑いしてないで少しはアドバイスぐらいくれよ!!」
「フフッ、相手の初動をちゃんと見極めろよ、そのモーション見切ればなんとかなるから!何とかならなかったら笑いすぎて俺が死んじまうよ!!」
「ンなこと言ったってよぅ。・・・・あいつ動きやがるしよぉ」
クラインは立ち上がるも少し足元がおぼついてない。すこし目でも回したのかな?
俺はまた先ほどのように石を拾うとイノシシに向かって投げる。スキルアシストを受けてない石は放物線を描き、再び突進を繰り出そうとしていたイノシシの額に当たった。パコンと小気味良い音を響かせヒットポイントが少し減る。プギィー!と目をいからせこちらに向いたのを見てタゲがこっちに着いたのを悟る。
「動くのは当たり前だろ?案山子殴ったところで何も面白くない。でも、ちゃんとモーションを起こしてソードスキルを発動させれば、あとはシステムが命中させてくれるさ。」
「モーション・・・・モーション・・・」
クラインはぶつぶつ言いながら右手に握ったカトラスを振っている。ふーっ、と深呼吸をしたクラインはカトラスを右肩に担ぐように構える。モーションが検出されたためか剣は淡いオレンジ色に輝く。
それを見て俺はいなしてた豚の方向をずらしてクラインに突っ込ませた。
「りゃあっ!」
太い掛け声と共に、今までとは違う流れるような動きで走り出す。甲高い音とオレンジ色の軌跡をのこし、片手用曲刀基本技《リーパー》が青イノシシの首に命中し、そのヒットポイントを削り切った。野太い断末魔を残し、イノシシは紫のエフェクトと共に消えた。俺の視界の隅には加算経験値が浮かび上がった。
クラインはガッツポーズしながら話しかけてくる。
「うおっしゃぁっ!どうだ、みてたかユパ!」
「初勝利おめでとう、クライン。見事スライム相当を倒せたね!」
「え、まじかよ!おりゃてっきり中ボスかなんかだと」
「中ボスが町でてすぐのとこに群生しててたまるか!」
笑いながら俺たちは武器をしまった。此処らのモンスターはノンアクティブモンスターの為、自分から攻撃を仕掛けてくることはない。
「それにしてもよ、
そう言いながら剣をぶんぶん振り回している。危なくて仕方ない。一歩離れて声をかける。
「俺は、あんまり好きじゃないかな。ソードスキル。」
「なんでだよ、気持ちよかったぜ?こうビューン、シャッ、って感じで。お前も使ってただろ?」
クラインは振り回していた剣を止めて不思議そうな顔でこっちを見る。
「自動で体が動くのが気持ち悪いしな。使った後の硬直時間も長いし、複数敵がいた時なんて使ってられないだろ。それよりクライン、おまえソードスキルを使ってお前なんにも感じなかったのか?」
「あ?なんともねぇけど?」
どうやらこの感覚、俺だけに発生しているようだ。厄介な……。
「ということは、バグなのかどうか知らんが俺だけのようだな。どうやら俺はソードスキルが性に合わないとかじゃなくて、決定的に向いてないみたいだ。一度使ったきりだがひどい頭痛と吐き気がする。こんなの二日酔いとかそんなレベルじゃないぞ……。これは一度の戦闘で複数回使ったら、そのあとまともな行動をとれるか怪しいレベルだ。こんな苦しい思いまでして使いたいと思わないな。他の人にも迷惑かかると思うし。」
「えぇ、このソードスキルがSAOの醍醐味だってのにどうすんだよ!」
「そこは、ほら。どうしようもないから縛りプレイってことで頑張ってみるさ。」
そう言いながら笑う。初心者が縛りプレイってどうなんだって、自分で突っ込みそうになったが黙っておこう。
「ま、そこは個人の好き好きだしな。それにしてもよ・・・・こうして何度も見てるけどいまだに信じられねぇよな。ここがゲームの中だってことがよう」
「ほんとだよな。俺はこの時代に
「俺も同感だぜ。」
クラインは城壁を見ながら本気で目をウルウルとさせている。俺も気持ちはわかる。
現実と変わらない仮想現実に対して感動を抱かないはずがない。むしろ現実よりもこの世界の方が美しいのではないかとも思われるほどだ。
「さてっと、どうする?もう少し狩り続けるか?」
「ったりめぇよ!・・・・・て言いたいんだが」
クラインの目がちらりと右に動く。俺も同じように確認すると時刻はもう五時を回っていた。
「そろそろ一度落ちて、飯食わねぇとなんだよな。ピザの宅配五時半に指定してっからよ」
「そんなのばっかり食ってると体壊すぞ?」
呆れながらそう言うと、クラインはウメェからいいんだよ!と笑いながら言っていた。
「あぁ、んでさ、俺その後、他のゲームの知り合いと《はじまりの町》で落ち合う約束してるんだ。それでさ、どうだ、紹介すっからあいつらともフレンド登録しないか?いつでもメッセ飛ばせて便利だしよ」
「あぁ、うん。ま、いいよ。でも俺も一回落ちるから後で連絡でもくれよ。そしたら会いに行くさ。」
「おう!任せとけって。あいつらも気はいい奴らだからお前もきっと気に入るよ」
クラインが胸板をドンっと叩きながら言った。
こういった仕草に人を引き付ける魅力のようなものを感じる。きっと他のゲームではこいつがリーダーを務めてたんだろ。
「そんじゃ、おりゃ、ここで一度落ちるわ。マジ、サンキューな、ユパ。これからもよろしく頼むぜ」
「あぁ、気にすんなって。こちらこそよろしく頼むよ。」
そう言って突き出された右手を俺は握り返した。
クラインは一歩しりぞき、右手人差し指と中指をそろえて上から下に空中を切った。≪メインメニュー・ウィンドウ≫を開くアクションだ。すぐさま紫色に発光する半透明の矩形が鈴の音と共に現れる。
俺もログアウトするためにメインメニューウィンドウを開こうとするとおかしな声が聞こえてきた。
「あれ、なんだこりゃ」
顔を向けるとクラインが不思議そうな顔をしている。
「・・・・・
今回の話を見てくれてる皆さん、また会いましたね。鉄輪です。
今回の話ちょっと長くなりすぎちゃいました。
前回の倍はちょっと予想外です。
本当はデスゲーム開始まで行きたかったのですが・・・。
それは次回に回すことにします。
では、次回「デスゲーム」をお楽しみに。
前書きの補足
*MMOストリーム : アニメ版SAO第一話の冒頭でSAOの紹介をしている番組名
内容については、小説版の内容ぶっこぬきです。
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