ソウル市松坡区巨余洞のコンビニでアルバイトをしているAさん(46)=女性=は、3カ月前からほぼ1日おきに訪れる40代女性が気になっていた。この女性はいつも乳製品やチョコレートなどをちょうど8000ウォン(約560円)分かごに入れ「夢の木カード」で支払いをする。このカードは、基礎生活保障(生活保護)受給世帯、準低所得層、片親世帯などの18歳未満の児童・青少年にソウル市が支給している給食カードで、1回当たりの購入限度は8000ウォンと定められている。
市は以前、欠食児童に食券(バウチャー)を支給していたが「食券は貧しさを証明するようなものなので使いたくない」との意見が多かったため、2009年7月にクムナムカードを導入した。コンビニ店員のAさんは「食事を満足に取れない子どものためのカードだと思っていたが、いつも大人が使っているので不思議だった」と話した。
カード支給対象の児童・青少年は今年7月現在で3万2779人。ソウル市が指定するコンビニやパン屋、一般飲食店など4776店で使用でき、購入・注文できる品目も弁当やインスタント食品、パン、乳製品、サンドイッチ、総菜、ハムなどに限られる。
しかし、本紙が取材したところ、コンビニや飲食店の店員たちは「子どもよりも大人がカードを使うことが多い」と証言した。江南区駅三1洞にあるコンビニの店員(48)は「子どもが食べるべき弁当を大人が買って食べているのを見ると、開いた口がふさがらない」と話し、中浪区の中華料理店店員(41)=女性=も「30代や40代の客の中には、食事代を夢の木カードで払う人もいる」と打ち明けた。
だが「カードは該当の子どもしか使用できない」といった使用主体に関する明確な条項がないため、取り締まりもままならない状況だ。ソウル市児童福祉課の関係者は「幼い未就学児童などに限り、保護者が代わりにカードを使用できるようにしたが、実際に子どものために使っているのかどうか、いちいち確認することは不可能だ。大人たちが使っているという苦情を受けて確認に出向くと、保護者が『私を疑うのか』などと気分を害するため、どうすることもできない」と語った。夢の木カードと同様の児童向け給食カードは、京畿道や江原道、忠清南道、忠清北道などでも導入されている。