夏が終わり、秋が始まろうとしてる。
秋が過ぎたら、冬だ。
冬は嫌いだ。
寒いし、静電気ビリビリだし、ケガも起こりやすい。
凍える風は俺の精神を蝕み、ノイローゼにさせる。
でも、冬の夜は好きだ。
漆黒の夜に一人たたずむ俺。
どこからか薄い光が差し込む。
その光を必至に探す俺はひらすらに歩を進める。
途方に暮れていた。
光は消え、闇が広がる。
孤独と寒さの狭間で揺れる心境。
俺はどうしようも無い不安に苛まれた。
すると
どこからともなく風が流れてきた。
凍える風が俺の体内に干渉してくる。
その風はさっきまで俺が毛嫌いしていた風だ。
「笑えよ。」
俺は風に語りかけた。
風は無言だった。
もう1度、風が通り抜ける。
不思議なことに不安が消えた。
俺を蝕む黒い影はみるみる天に昇華していった。
俺は笑った。
そして、涙を流した。
もう1度、風が通り抜ける。
俺は靴の先を180度反転させて歩を進めた。
その瞬間、漆黒の夜が姿を消した。
ほんのり香る冬のにおいと透き通る風が俺の頬をなでる。
「捨てたもんじゃない…」
俺はまだまだこの場所にいたかった。
そうか…俺は…
冬が大好きだった。