【コラム】「銃器天国」米国で暮らすということ

 いつも出勤・退勤の途中に看板を目にするだけだった、ワシントンに近いバージニア州のある銃砲店に立ち寄ってみたのは、好奇心からのことだった。米国では最近、かなり頻繁に銃器乱射事件が発生している上、ずさんな銃器の販売・管理システムが問題視されているおり「一体、銃器の販売はどのように行われているのか」と気になったのだ。

 とはいえ、いざ銃砲店のドアを開けて中に入ろうとすると、心臓の鼓動がひどく早まった。麻薬や密輸品でも買いにきたかのように緊張した。ところが銃砲店の中の様子は、陳列された商品が銃器だというだけで、携帯電話の販売代理店と変わりなかった。明るいライトの下で、従業員が顧客に製品の説明をしていた。夫婦とおぼしき客が拳銃を購入すると、店員は「週に3回、基礎的な拳銃の操作についての講義があるので、必ず聞きに来てください」と言った。

 記者が「外国人でも銃を買えるのか」と尋ねると、人の良さそうな印象のテッド氏は「米国の市民権を持っている人でなくても銃を購入することはできるが、特定の条件を備えていなければならず、関連書類をそろえる必要がある」と答えた。テッド氏は記者に席を勧め、コーヒーを入れて、銃器の購入手続きについて詳しく説明してくれた。テッド氏は「興味のある銃があったら、いくらでも見ていってくれ」と話し、自分の息子に案内を任せた。大学生だというテッド氏の息子は、長期休暇の期間中、時々父親の店で仕事を手伝っているとのことだ。テッド氏の息子は「初めて銃を買うのなら、まずは300-500ドル(約2万3600-3万9300円)程度の拳銃がお勧めだ」と話し、スプリングフィールド社とグロック社の製品を二つ見せてくれた。

 米国が「銃器の天国」だということはよく知っていたが、実際に銃砲店に足を踏み入れてみると、銃器が米国人の生活の中にいかに自然に溶け込んでいるかを感じ取ることができた。銃器の購入は、身元照会を1回済ませるだけで、後はテレビや携帯電話を買うのと同様、米国人にとっては「日常」に近かった。

 米国司法省のアルコール・タバコ・火器及び爆発物取締局(BATFE)によると、米国ではこうした銃器の小売店が5万1438軒も営業している。この数字は、米国でファストフードチェーンのトップ3を占めるサブウェイ、マクドナルド、スターバックスの米国内店舗を合計した数よりも多いという。2010年の1年間だけでも、米国では545万9000丁の銃器が生産されており、そのうち95%は米国国内で販売され、加えて325万2000丁の銃が米国に輸入された。一方2010年に、米国連邦捜査局(FBI)の即時犯歴照会システム(NICS)には、銃器販売のため1645万5000件のアクセスがあった。このうち、不許可となったのはわずか7万8200件(0.48%)にすぎなかった。

 これほど多くの銃器が街中に出回っているのだから、事故や事件が起きない方がむしろおかしい。2006年から10年までの間に、4万7856人が銃器によって殺害されたという統計もある。しかし「銃器の所有」が、深く根付いた権利として地位を得ている米国社会で「銃規制」が近く実施される可能性はほとんどない、というのが米国メディアの共通の見解だ。

 今や米国は、スラム街や歓楽街など犯罪の発生率が高い場所以外でも、映画館で映画を見ているときに、あるいは寺院で祈りを捧げているときに、もしくはエンパイア・ステートビルを観光している最中に、銃で撃たれる国になった。米国で暮らす間は、とにかくこの状況をしっかりと認識して自分の身を守るため最大限に注意するしかない、と思った。

ワシントン=イム・ミンヒョク特派員
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