16日午後9時、東京・渋谷の青山劇場を埋め尽くした観客1200人は、韓流ミュージカル「Jack the Ripper(ジャック・ザ・リッパー)」開幕公演が終わった後も席を離れようとはしなかった。「公演は終了しました」という案内放送が流れても、拍手は10分間鳴りやまなかった。
この日の公演は全席完売。一番高いチケットはSS席で1万6000円、一番安いA席でも韓国のVIP席より高い9500円だった。それでも完売した。限定販売の立ち見席(30席)も売り切れ。立ち見席のチケットは2階の最後列で、2時間30分もの間、立って見なければならない。それでもそのチケットを手に入れようと午後5時から劇場前に行列ができた。制作会社Mミュージカルアート(キム・ソンミ代表)が発表した有料シェアは75%。早くも初演前に損益分岐点を超えた。
このミュージカルは19世紀の英国ロンドンで起きた猟奇的な殺人事件を、悲劇的な純愛物語に翻案した作品だ。2年前に韓国で初演された当時から日本進出を視野に、アン・ジェウクら韓流スターを起用して日本人客を韓国に呼び込んだ。海外からの入場客は4万人を超える。今回の日本公演では、元祖韓流スターのアン・ジェウク、ミュージカルスターのオム・ギジュン、アイドルグループSUPER JUNIORのソンミンとFTISLANDのソン・スンヒョンが交代で主役の外科医ダニエルを演じる。
初日にソンミンが舞台に登場すると、暗闇の中で何百ものオペラグラスが一斉に構えられた。反応を抑えるのがマナーだと考える日本の観客たちは、カーテンコールでそわそわし始めたが、ソンミンが再び登場すると我慢しきれなくなって立ち上がった。公演を終えたソンミンは「日本での人気に自分でも驚いた。ミュージカルでいただく愛は、ライブ感があっていっそう強く感じる」と話した。共演者のキム・ボプレは「17年前にソウル芸術団の所属で日本公演をしたときは日本に住む韓国人がほとんどだったのに、今はこんなに日本の観客でいっぱいになるなんて隔世の感がある」と語った。
芸術経営支援センターでは、韓流ミュージカルはさまざまな文化コンテンツのうち急浮上している分野だと分析している。中でも「Jack the Ripper」の日本進出は最も積極的な現地市場開拓モデルだ。作品を一括販売する形式ではなく、日本側と5対5の投資方式で、制作からの収益配分まで共同で進められる。日本でのパートナーはフジ・メディア・ホールディングス傘下の広告代理店・制作会社クオラスだ。
また、「元祖」を抑えライセンス作品を輸出し、韓国の制作スタッフの創作能力をアピールしたことも、新たな海外進出のモデルになっている。もともとはチェコの小劇場で上演されていたミュージカルだったが、Mミュージカルアートが大劇場用に翻案した。韓国公演を昨年見た後、チェコのオリジナル作品を見た日本の企画会社は「これは私たちが見たあの作品ではない」として、チェコではなく韓国側にパートナーシップを提案した。
初日の観客は99%が女性だった。公演を見に来た妻と娘を劇場の外で待っていたタケウチさん(56)は「政治は政治、文化は文化。韓流ミュージカルの人気は抑えられなさそうだ」と語った。