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原子力安全委役割十分果たせず
9月18日 21時39分

原子力安全委役割十分果たせず

国の規制機関から独立し、中立的な立場から原子力の安全を担う組織として発足した原子力安全委員会は、東京電力福島第一原子力発電所の事故を巡る対応では期待されたその役割や使命を十分に果たせませんでした。

原子力安全委員会は昭和49年に原子力船「むつ」で起きた事故をきっかけに、原子力の安全規制を強化するため、それまで推進と規制の両方を担っていた原子力委員会から分離する形で昭和53年に発足しました。
国が審査する際の基準となる安全指針や、原子力防災の基本的な考え方をまとめた防災指針などを策定し、独立した立場で国の規制を確認するいわゆるダブルチェックの役割を担ってきました。
特に平成11年に茨城県東海村で起きた臨界事故では、国が違法な作業を長年見逃していたことから、安全委員会の職員が大幅に増員され、緊急時には専門家集団として、政府に技術的な助言を行うことを期待されました。
しかし、そうした安全委員会への期待とは裏腹に、福島第一原発の事故の対応では、さまざまな問題が浮かび上がりました。
1つは、1号機の水素爆発を巡っての対応です。
事故直後から官邸に呼び出された班目委員長が情報が少ないなか、当時の菅総理大臣から爆発の可能性を質問され、「爆発しません」と答えたことで結果的に菅総理の不信を買うことになりました。
また、屋内退避や避難が長期に及ぶなか、政府の指示の見直しが遅れましたが、その際、専門家集団としての主体的な役割を十分に果たせませんでした。
このほか、安全委員会の対応を巡っては、事故が起きる前、安全基準の改定を巡り、原発の長時間の電源喪失を考えなくてもよいとしていたほか、防災指針の見直しでは国際的な基準に合わせた避難などの判断基準の変更を見送るなど、いずれも国や電力会社の意向を受けていたことが分かり、事故の悪化や被害の拡大を招く要因にもなりました。
独立して原子力の安全を担うことを期待された原子力安全委員会でしたが、その本来の役割や使命を十分、果たせずに、34年の歴史に幕を下ろすことになりました。

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