岩手のニュース
陸前高田の野菜工場 大消費地への冷蔵車、確保できず
 | ドーム型の工場で栽培されるレタスを紹介する中野さん。種まきから65日で収穫できるという=陸前高田市米崎町 |
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東日本大震災の被災地の雇用拡大につなげようと、岩手県陸前高田市に進出した野菜工場が「物流」の壁にぶつかっている。物流ルートが確保できないため大消費地に野菜を届けられず、出荷は生産量の半分程度にとどまる。津波の塩害の影響を受けずに安定生産できる工場の強みを発揮できず、工場側は「復興のシンボルとして事業を軌道に乗せたい」と市場関係者に協力を呼び掛けている。
「買いたいという声は多い。だが肝心の物流網が乏しい」。神奈川県に続き野菜工場を稼働させたグランパ(横浜市)の阿部隆昭社長(69)は打ち明ける。 ドーム型の施設でレタスの水耕栽培を手掛ける同社は2月、市と立地協定を結んだ。国の補助金を含む6億円を投じて8棟を津波の浸水地に建設。8月に「復興レタス」の出荷を始めた直後、物流でつまずいた。 誤算だったのは、沿岸部特有の事情だ。三陸沿岸から大消費地までの物流は水産業向けの「冷凍車」が中心で、野菜対応の冷蔵車はわずか。盛岡便は気仙沼市内の物流業者に頼んだが、大消費地と見込んでいた仙台、石巻両市などへのトラック便が確保できていない。 レタス作りは出荷まで約2カ月かかる。急な注文に応じられるようにフル稼働している。「1日に生産する3600株のうち1000株以上が余り、仮設住宅に配っているがそれでも残りは廃棄している」。販売企画部長の中野晴彦さん(46)は嘆く。 地域の野菜の生産量が減ったことも災いした。市などによると、津波で農地383ヘクタールが冠水。土壌に塩分が残り、作物の生育障害が懸念されるため、野菜の作付けは敬遠されがちだ。流通関係者は「ほかの野菜と共同流通できないと、運送経費が、かかり増しになるだろう」と指摘する。 地元雇用したのは22人。将来は35人規模を目指す。直径30メートルのドームの中では、コンピューターが養液や温度を自動制御する。一年を通じて衛生的に安定生産できる「工場」の強みは、十分には生かされていない。 阿部社長は「人々に食べてもらえば従業員の士気も上がる。市場や流通、外食産業の関係者の協力をお願いしたい」と話す。連絡先は中野さん045(663)7967。
2012年09月19日水曜日
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