余録:反日デモの暴徒化で日系スーパーなどが破壊された…

毎日新聞 2012年09月19日 01時10分

 反日デモの暴徒化で日系スーパーなどが破壊された中国山東省での1世紀以上前の話である。キリスト教などに反発する農民らが作る義和団の排外暴動が掲げたスローガンは「復明(ふくみん)滅洋」だった▲滅洋は欧米や日本の排斥を意味するが、復明は明朝復活という当時の清朝への反逆を示す言葉だ。時の山東巡撫(じゅんぶ)、毓賢(いくけん)は義和団を弾圧した役人を更迭して民衆の排外暴動を黙認する。一方で反清運動は容赦なく抑圧するよう命じ、反体制運動を排外熱に封じ込めた▲スローガンは「扶清(ふしん)(清を扶(たす)ける)滅洋」に変わったが、結局義和団は清に裏切られる。そして中国の権力者が民衆の排外暴動を黙認し、政治利用する方式は後世に受け継がれた。「毓賢方式」とは中国文学者の加藤徹さんが「西太后」(中公新書)で用いた言葉だ▲時は流れ、半植民地化に苦しんだ昔の中国ではなく、世界第2の経済大国となった現代中国の話だ。反日暴動での日本企業の損害について「責任は日本が負うべきだ」と話すのはデモ参加者ではない。中国外務省の報道官というから、いつの時代のことかと耳を疑う▲さすがに国民には合法的行動が呼びかけられ、暴徒の摘発も報じられた。だがアクセルとブレーキの案配の難しい毓賢方式である。聞けばデモでは毛沢東の肖像が掲げられ、失脚した薄熙来氏への支持の声もあるという。国内の権力闘争の行方も左右するその案配だ▲国民の排外暴動は世界秩序に責任ある大国の名誉に泥を塗る所業である。国民の不満を愛国主義という可燃性のガスに変えて制御しようというむちゃな「方式」はもう歴史の倉庫に収めてもらいたい。

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