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和歌山県警科捜研捏造 他に数件…見えぬ動機

 和歌山県警科学捜査研究所(科捜研)の男性主任研究員(49)による鑑定結果捏造(ねつぞう)疑惑で、明らかになっている8件のほかにも、数件の不正があることが県警の調べでわかった。県警は虚偽公文書作成・同行使容疑などでの書類送検に向けて詰めの捜査を進めている。

8000件を精査

 疑惑の8件は、研究員が2010〜12年に行った交通事故などでの繊維片や塗膜片の鑑定。県警はそれ以前も含め、研究員がかかわり、記録が残る約8000件の鑑定結果を精査した。

 ベテラン捜査員も投入し、約2か月かけた捜査で、新たに数件で不正が疑われることがわかった。県警はこれらについても、同容疑の公訴時効(3年)にかからないかなど立件の可否を慎重に調べている。

「見栄え悪い」

 県警の幹部が一様に首をひねるのが動機だ。「波形図の見栄えが悪いので過去データを流用した。仕事ができると思われたかった」という供述に、上層部は「ミスを隠すためや、手抜きをするためではなかったのか」と驚いた。

 不正の多くは、繊維片などに含まれる物質を特定する「赤外分光光度計」の波形図の捏造。不純物があれば波形が乱れるが、捏造前の波形図でも十分に鑑定できたのに、乱れの少ないデータを流用していた。

職務倫理

 研究員は1985年に県警に入り、一貫して科捜研に勤めており、「まじめで熱心」と評価されていた。一方、科捜研OBの一人は、捜査現場を知らず、被害者や容疑者と接する機会がほとんどなかった、と指摘。「捜査に携わる自覚を持たず、科学者としてのプライドが強すぎて、捏造したのでは」とみる。

 警察庁は8月、チェックの徹底を求める文書を全国の科捜研に送った。だが、県警のある幹部は「複数の目によるチェックが一番だが、時間的にも費用的にも困難。職務倫理を高めるしかない」とため息をつく。

2012年9月18日  読売新聞)
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