特集 EMと環境学習 紹介

掲載記事:「えむえむ関東50号」より

  あとから来る者のために

NPO法人足利水土里探偵団 事務局長 中庭三夫
 足利水土里探偵団は、昨年(平成14年)4月にNPO法人として誕生した。ふるさとづくり賞で栃木県の最優秀賞に選ばれたことがキッカケでNPO化に向かった。活動内容は前身である足利EM普及探偵団の名前が示すとおり、足利を中心にした地域にEMの普及をさせることで、地域の環境浄化に役立てればと、渡良瀬川をきれいにしよう!の思いを集めて平成7年2月に、足利商工会議所の支援を受けて「足利EM普及探偵団」が誕生している。
EM普及活動のステップは、まず、早く多くの人に知ってもらうために、どの家庭でも毎日出る生ごみをEMで堆肥化にするところからはじまっている。生ごみ処理が減少すれば、減少した分だけ税の負担が減る。早速行政サイドもEM専用の容器に補助金制度をつくり支援してくれた。私たちの活動に対して、商工会議所も事務局を引き受けて、商工会議所新聞やケーブルテレビでの広報活動など、いろいろな機関の支援もあって現在の法人12社、個人80名の足利水土里探偵団にな
3年生が給食の食べ残しをEMボカシで発酵させて花壇や学校農園に活用
っている。そして、小学校の空き校舎を利用して定期的に開催しているEM説明会「通称:EMサロン」も普及の基盤的な役割を果たして定着している。こうして家庭サイドへのEMの普及が進んでいる。
環境問題は、改めて言うことでもないが、水・土・空気の汚染が進み、困り現象が多くなったために叫ばれていること。幸いなことにEMにはこのいずれにも身近で具体的で簡単で、しかも廉価で取り組みが出来る事例がたくさんあることだ。物質文明が象徴する21世紀づくりに奔走した世代は、清流に遊ぶ小魚の姿を失い、多くの人がそれを取り戻そうと色々な角度からの動きがはじまった。それは次の世代に対する責任の行動に写る。仏教詩人・坂村真民さんの「あとから来る者のために」という詩がある。『あとから続いてくる あの可愛い者たちのために 皆それぞれ自分にできる 何かをしていくのだ』はその中の一節。
学校教育分野へ
こうして、EM普及活動のステップが学校教育分野へと進んでいく。おりしも、総合的な学習の時間の導入を控えて取り組みテーマの模索をしている学校側の事情と上手くかみ合う時期でもあった。学校給食の食べ残しをEMで堆肥にしてケナフを育てる提案には全面的に賛成してくれた。足利市立毛野小学校大久保分校でEMを活用したさまざまな学習は「足利ケナフ物語」のビデオにまとめることとなり、全国にもたくさん紹介された。これを期に足利市では全小中学校の総合学習教材にEMとケナフに予算がつけられて導入され、卒業証

栃木県南部地場産センターは、ケナフを活用して新商品開発の研究に取り組んでいる。NPO法人足利水土里探偵団は委託をうけケナフを栽培している。栽培面積は200m2  。栽培は除草や倒れ防止などメンバーが柵ごとに担当して管理している。
書もケナフの和紙に変わり専用のケースが出来ると、永年馴染んだ筒式のケースの文化が消えてしまったのである。なぜコスト高の和紙なのか?21世紀は環境と教育の世紀だと言われる中、その意味を足利市から子供たちに贈るメッセージとして形を変えた卒業証書に託したのだ。
大久保分校で取り組んだたくさんの事例の中に、EM米のとぎ汁発酵液を使ったプールの浄化とビオトープ実験があった。中でも多くの生物との出会いに感動した子供はEM君のおかげだと言って喜んだ。家庭の汚染も工場の汚染も農地の汚染もすべては水に混って排水路から河川に流れて海に注いでいるのだ。

学校のプールから市内の河川へ
さて、プールの実験を経ていよいよ川の浄化への取り組みにステップが移った。産官学民での取り組みをコンセプトにした「矢場川浄化作戦」を経験して、平成14年から、幼・小・中・大と家庭と地域で取り組むことをコンセプトにして「彦谷川ビオトープ作戦」と名づけ、足利市立葉鹿小学校が取り組んだ。沖縄で開かれたEMフェスタ2001の環境学習コンテストに応募してもらうと優秀賞に入賞した。
EM米のとぎ汁発酵液を使ったプールの浄化
それまでは、特にEMに取り組んでいたわけでもなく、彦谷川の生態をつぶさに観察して体系的に学習してきた内容が評価された。担当の先生には沖縄に行ってもらいEMの世界を学んでもらった。
理科が得意な先生は、翌年からEMを組み入れた総合学習を広く展開させた。生ごみについては「生ごみゼロの日」をつくり、各家庭から生ごみを学校に持ってこさせ、EMで堆肥にし、花の苗を育てて家庭に持っていかせる。つまり、生ごみを花にして返すことで家庭と学校との循環役に仕立てている。米のとぎ汁も学校に持参させて理科室で発酵させ、彦谷川の3ヶ所に定期的に総合学習として放流している。放流地点には、葉鹿小がEMによる浄化活動をしている説明の看板が立てられ地域の人にわかるようになっている。放流を始めた昨年からホタルが、今年は川底からシジミが出て来たと話題になっている。文字どおり流域の幼稚園がEM泥団子作りに参加したり、大学の池には児童が育てたメダカを入れさせてもらったり、児童が作った米のとぎ汁発酵液を高齢者施設に使ってもらうようにしたり、学校内の活動から着実に地域に浸透した動きになっている。

「彦谷川ビオトープ作戦」足利市立葉鹿小学校

彦谷川ビオトープ作戦」と名づけ、足利市立葉鹿小学校が取り組んだ結果熊野地区(五島橋付近)の川底で今春確認されたヤマトシジミ。 情報提供葉鹿小学校より
世界水フォーラムで発表
こうした活動は、各方面からの注目を集め県内は勿論のこと、全国、特に今年の3月に開かれた世界水フォーラムでは、京都国際会館で同時通訳の施設での発表では男女3人づつ貴重な体験をして学期末を結んだ。今年は、学校内にエコクラブができEMを活用して取り組む新しいアイテムが増えている。中でもEM廃油石鹸づくりは目立った動きになりつつある。

世界水フォーラムの会場の京都国際会議場の池にEM活性液を投入して参加者やマスコミの関心をよんだ
学校から地域へ
こうして、EMを活用した足利地域における環境学習の事例は、ケーブルテレビや新聞で紹介される頻度も増している。足利市は日本最古の総合大学の史跡を持ち、足尾鉱毒事件で有名な渡良瀬川が街の中心部を流れている。渡良瀬川の浄化と学校での環境学習、この2つを結びつけることが出来たのは、まさにEMがあってこそ実現できたこと。そして、川と学校だけではなく地域社会のまさに産・官・学・民をつなぎ多くの出会いと、多くの発見から、多くの感動や癒しの場面まで、目には見えない微生物が演じてくれている現実を実感している。現場学習でEMの説明をすると、感動したと言って手紙をもらう。感動したと書いた子供は必ず、これから私は何をどこで・・やります!と見たこと教わったことを実践すると宣言してくる。感動しない子供はただのお礼だけの手紙なのだ。人は感動した受け止め方をしないと新たな行動を起こすことにはならないようだ。子供の行動には素直に従う大人、そこから、新しい社会の流れが少しづつ動く、循環型社会づくりの必要性の一端を、未来を生きる子供たちが、自ら訴えている行動にさえ写る。コラボレーション(協働という意味)という言葉が流行っているが、世代間を結んだ社会構造の変革のヒントづくりはEMの得意技のように思う

みじかなEM情報TOPページへ