特集 EMと環境学習

掲載記事:「えむえむ関東50号」より


学校の小さな発信が地域を動かし、地域を変えた
茨城県新治郡新治村立斗利出小学校 校長 枝京子
わたしがEMと出会ったのは、前任校の千代田町立上佐谷小学校に勤務していたときである。玄関を入るとトイレの悪臭が酷い。大勢でトイレを使用する学校や病院等ではよくありがちだが、不快なものである。その解消にEMが大きな働きをしてくれた。
上佐谷小学校ではプール清掃に数日費やし体育主任や管理職が土日出勤をして当たってきたが,EMはここでも大活躍。安価で容易で様々な難題を解決してくれるEM。EMXで花粉症まで解消の兆しありのわたしは、EMのとりこになり、EMを多くの人に語り伝え、学校教育への導入を推進している。

枝京子斗利出小学校校長
1.はじめに
 本校は,平成5年度に学校花壇の部で県知事賞に、そして平成11年度にはフラワーロードの部で県知事賞に輝いた、花いっぱいのきれいな学校である。めざす学校像の一つに「きれいな学校」を揚げ、地域あげてきれいな環境づくりに努めているところである。
学区内には,昔は魚やしじみの宝庫とし多くの釣り人を楽しませた桜川が流れる。しかしその桜川も、今は昔の姿をとどめていない。
 恵まれた自然のなかで生活できることに感謝し、自然のはたらきを理解しながら環境教育を計画的継続的に進めたいと考えている。
2.研究,活動の動機
 平成14年7月、茨城県内水面漁業協同組合連合会、桜川漁業協同組合主催による稚魚放流体験に5、6年生が参加した。その時の6年男子の次のような感想が、EM導入の動機となった。

花いっぱいの美しい斗利出小学校

斗利出小学校 6年 林 知弘
 近くの桜川で、稚魚放流を体験した。魚は住めないと思っていたけど、漁業組合の人たちの放流等の努力で結構魚はいた。
 桜川の濁ったこんな汚れた川で、魚が大きくなれるのか気になった。おじいちゃんか ら昔の桜川は、きれいで水もすんでいて、魚も貝もいっぱい取れ、泳いだりできた話を聞いた。今はとても泳げない桜川。
 この夏休みにおじいちゃんと―緒に桜川の水質検査をしてみた。検査の結果桜川はかなり汚染されていることが分かった。原因の多くは家庭から出る排水が―番。桜川の水は霞ケ浦に流れ、ぼくたちの飲み水となっていることも分かった。桜川をきれいにすることが霞ケ浦をきれいにする。そして、おいしい水を供給することにつながると考えたとき、自分たちにできる小さなことから始めようと思った。

 「桜川汚染が霞ケ浦汚染に、そして地球汚染に。自分たちのまわりを見回して、自分たちにできることから始めよう」林さんの提案が、自分たちの生活を見直すきっかけとなった。

3.研究、活動の内容
 桜川、霞ケ浦浄化等地域環境のために学校教育のなかで実践できること、地域へよびかけて取り組んでいけることの二面から推進していくこととした。
(1)児童EM学習会
4年生の国語の授業に、「環境を守るくふうを紹介しよう」という教材がある。1つのグループ、EM調査団が「EMで地球にやさしい環境を」というテーマで校長室を来訪し、EM研究所より郵送していただいた冊子をもとにミ二学習会を実施した。EMの不思議な効力と環境浄化について知り、EMについて4年生全体での学習会と進んだ。わたしの経験や資料等を参考に活動計画を立てた。
 @プールの浄化活動
 Aトイレの悪臭防止
 B祖父母学級との連携
(2)プールの清掃にEM活性液の活用
 毎年、プール清掃はたいへんな労力である。その上清掃には大量の塩素と化学洗剤を使用するため、本校では清掃に参加した児童が皮膚炎を起こすという事故が数年前に起き、それ以来保護者にプール清掃を依頼してきた。プール清掃は教職員にも保護者にもたいへんな作業である。
 また、あまり意識されてはいないが、プール清掃で大量の塩素を含んだ大量の汚水がでる。その汚水は桜川に流出し桜川や霞ケ浦まで汚染することになるのである。霞ケ浦周辺で育ち、きれいな霞ケ浦を取り戻したいと「あさざ運動」に参加した経験のあるわたしにとっては、許しがたい行為である。
@米のとぎ汁回収
 プール清掃開始1ヵ月前の5月初めから2年生以上の児童に米のとぎ汁を持参するよう依頼した。
一人一人に環境浄化を意識させるためには、児童に小量ずつでも持参させ参加意識を持たせることが大切である。
 米のとぎ汁の大量にでる製菓業や割烹主にお願いして学校に持参していただいた。これは地域と連携して進め、意識を育てる発信の意味があると考えたからである。
 1年目は、プール責任者の体育主任や保健主事には「校長の遊びごと」としか理解されず協力は得られなかった。職員の協力を得られないまま、校長自らが推進役、実践班長として活動を続けた。EMの効力を体験しなくては信じがたいことなので、体験させ納得させていく以外に方法はないのである。
A発酵液作り
 子どもたちの持参した500ccの米のとぎ汁を10g、20gの大きな容器に移し、EM1と糖蜜を2gに15ccの割合で注入する。
 これを、子どもたちに意識させるために子どもたちの目につく昇降口正面に置くことにした。
 1週間ぐらい置くと、発酵液が黄色の透明色に変化していくのが子ども達にも分かり、興味を持って観察する児童が増えてきた。
 プールヘの投入は1週間に約30g程度、4、5回投入した。投入直後水面全体にヘド口のような物体が浮き上がり、週末にはきれいになる。それを数回繰り返す内に、排水□周辺が黒く変化し、プール全体は透き通って底が見え、側面もきれいな状態になっていくのがはっきりと分かった。
B保護者の奉仕活動
 プールの清掃は、保護者の奉仕活動であるが、昨年より始まったEM使用で、これまでのたいへんだった清掃活動が短時間で済むようになった。半日がかりの清掃から1時間程度で済むようになり楽な作業になった。2年目の本年度は、側面や底面を塩素や化学洗剤で研かないでもブラシで水で流せば終われる程きれいであった。
 保護者もEMの効力を納得できた作業になった。特に、米のとぎ汁の協力者は、EM効用をPTA会員に説いていたのが印象的。「体験は百聞に如かず」まさにそのとおり。プール清掃は容易な作業にと変わった。

(3)トイレヘの注入
 米のとぎ汁発酵液の上澄みをトイレに注入する。養護教諭の児童が下校した後の作業である。トイレの異臭がひどかったが随分と緩和され、トイレは臭いものトイレは汚いものとのイメージが変わりつつある。児童も清掃活動に励むようになってきた。
(4)地域への呼び掛け
 祖父母学級、家庭教育学級でEMについての学習会を11月17日に実施した。講師を石岡緑の会代表鈴木せつ子さんにお願いをした。鈴木さんの人柄、話口、そして貴重な体験で学習会は充実したものになり、EMへの関心が高まった。特に、EM生ごみ発酵肥肥料、米のとぎ汁発酵液が手軽で安価であることに関心が集中した。参加者は祖父母、母親33名であった。
その後、祖父母会では、地区ごとにボカシ作りを企画して情報交換をしながら野菜作りをしている。
「孫たちに、農薬で汚染されないおいしい野菜を祖父母の手で」を合い言葉に、楽しく、すばらしい野菜栽培に努力している。
(5)生ゴミEM肥料を使用しての感想
 祖父母は花壇,畑の野菜作りに活用している。「なすがたくさんなって」と得意の漬物を学校に持ってきてくださったり「畑を見てください」と畑を案内してくれたり、うれしい感想も届きます。
・大きなすいかができて、EMの効用かと驚いている。こんな大きなすいかは初めて。味が楽しみ。
・ミニトマトが鈴なり。長持ちします。
・ユリの花がたくさん花をつけた。葉っぱの濃い緑色で見るからに栄養がありそう。
・EM使用の根しょうがと使用しない根しょうがでは育ち方が歴然。EMを使用しない方が不思議がっている。
・なすのなり方が違う。たくさんなって長持ちする。
・枯れそうな松の盆栽に、EM発酵液を散布。いきいきと色もよくなり驚いている。
・母はすっかりEMのとりこになり、校長先生から指導していただいた資料のとおり実践している。すばらしい作品の数々を孫たちに、地域の人たちに自慢している。生き方まで変えてそう。EMに感謝,感謝。
・祖父と祖母の会話の中心はEM。EMが二人の会話に花を咲かせて、二人で畑にいく姿が頻繁になりました。

4 まとめ
 学校教育でできることは限界がある。今回祖父母学級生と連携できたことに大きな収穫があった。保護者よりは祖父母である。孫への思いもある、時間もある、働く意欲もある、祖父母へのはたらきかけが、地域と連携して進められた大きな要因になったと考える。
学校の小さな発信が地域を動かし、地域 を変えることができた。
今回の学校の試みが「霞ケ浦水質浄化推進振興財団」の表彰をいただけるというれしいニュースも届いている。祖父母の方々への活動への励みにもなるであろう。
 一人―人の地道な活動が確かな活動になるまで、学校は地域への発信源としての役割を担い、「開かれた学校」として連携して活動していきたいと考えている。

5 今後の課題
(1)ゴミ問題は学校、保護者、地域連携事業として取り組む問題である。行政には たらきかけをしていきたい。
(2)学校給食下処理野菜や残菜等を肥料化し、学校農園や学校花壇に使用できる ようにし、総合学習で子どもたちが取り組んでいけるようにしたい。
(3)化学肥料の恐さを知って、子どもたちが家庭で有機肥料使用の推進役を担える ようにしたい。

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