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焦点−大震災から1年半/原発事故周辺3県 企業立地補助金、宮城ゼロ
福島第1原発事故の影響で企業進出が鈍る宮城、茨城、栃木3県への企業進出を促す政府の「原子力災害周辺地域産業復興企業立地補助金」の第1次採択で助成対象となる計43件が決まった。件数では約4分の3が茨城県に集中し、宮城県はゼロ。予算枠は総額140億円で競争が激しい。3県の担当者からは福島1県で1600億円が予算措置された「ふくしま産業復興企業立地補助金」をうらやむ声が出ている。(若林雅人)
◎1次採択は茨城に集中
<優先度低い?> 経済産業省によると、採択の内訳は茨城が31件(申請41件)で最多で、栃木は12件(29件)。宮城は5件の申請があったが、いずれも見送られた。第1次の助成額は計79億円で茨城65億円、栃木14億円。時期は未定だが、第2次申請の受け付けを予定している。 宮城、茨城、栃木3県と福島県で、原発事故前の2010年と事故後の11年に工場や事業場が立地した件数と面積は表の通り。茨城の落ち込みは福島以上に激しい。 茨城の採択件数の多さは、政府が重点的に救済に乗り出した表れとみられる。宮城は面積は大幅に減ったが、件数は持ち直していて、優先度が低いとみられた可能性がある。茨城県立地推進室は「落ち込みが激しく、マイナスをゼロに戻す必要があった。幅広い業種の企業に補助金利用を呼び掛けた」と話す。
<巻き返し狙う> 宮城県産業立地推進課は「津波で壊滅的被害を受けた沿岸部での雇用創出を目指したが、採択されず残念。津波被災地も状況は深刻で第2次以降で企業進出につなげたい」と巻き返しを狙う。 福島県は原発立地県として企業進出の停滞だけでなく、企業の県外流出などのダメージを受けたことが考慮され、企業立地補助金は3県に先駆けて予算措置された。3県は12年度の政府当初予算で組まれたのに対し、福島は11年度予算の第3次補正で1600億円が計上された。県は基金化して「ふくしま産業復興企業立地補助金」を創設して運用を始めた。 その後、茨城県を中心に「福島県外でも原発事故の風評被害は大きい」と支援策を要望し、3県対象の企業立地補助金が制度化された。 経産省産業施設課は「3県の企業進出の落ち込みは著しく、公平性の観点から他の地域と同水準まで引き上げる必要があった」と説明する。
<福島は10倍超> 福島県の企業立地補助金の予算枠は3県の合計の10倍以上で、3県は「福島の特別扱いは当然だが、それにしても驚くほど巨額」と口をそろえる。宮城県の担当者は「企業は額が大きく補助率も高い方に目を向ける。とても太刀打ちできない」とこぼす。 政府は原発事故の避難区域や福島県以外の津波被災地も対象とする新たな企業立地補助制度を13年度予算の概算要求に盛り込んだ。「他県はライバル」(栃木県産業政策課)と意気込む被災県の競争は激しさを増しそうだ。
[原子力災害周辺地域産業復興企業立地補助金]宮城、茨城、栃木の3県に用地を取得し、製造業全般の工場や物流施設を新増設し、一定の地元雇用を創出する企業に1社30億円を上限に初期投資額の最大25%を補助する。政府が基金をつくり、民間の管理法人が運営して外部機関が採否を審査する。
[ふくしま産業復興企業立地補助金]原発事故の避難区域を含む福島県内に企業が工場などを新増設して一定の雇用創出が見込まれる場合、1社200億円を上限に投資額の最大75%を補助する。5月の第1次採択分で補助総額が1740億円に達し、5年分として措置された1600億円を使い切った。県は予算増額を求めているが、国は難色を示している。
2012年09月18日火曜日
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