大学入試問題に非常に多くつかわれる朝日新聞の天声人語。読んだり書きうつしたりすることで、国語や小論文に必要な論理性を身につけることが出来ます。会員登録すると、過去50日間分の天声人語のほか、朝刊で声やオピニオンも読むことができます。
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通り過ぎた台風になぞらえれば、きょうは中国で暴風に大潮の重なる日である。尖閣諸島をめぐって反日の嵐が渦巻いている。そこへもって、18日は満州事変の発端となった柳条湖事件から81年になる。それでなくても反日感情の高まる日だ▼加えて、東シナ海の休漁期間が一昨日明けた。台風一過の尖閣周辺へ、中国漁船が大挙繰り出す情報もある。中国当局は「漁民の生命と安全を守る」と強硬だ。海保の巡視船に漁船が体当たりした、2年前のような「英雄気取り」が心配される▼デモの参加者にしても、このさい暴れ回っても大丈夫なことは計算済みだろう。「愛国無罪」の錦の御旗(みはた)があるうえ、規制は手ぬるい。民衆の猛威を日本への圧力にする政府の思惑も、承知しているふうである▼テレビを見ると、尖閣諸島を地図で指せない参加者がいる。反日スローガンだけ覚えれば事は足りるらしい。それを政府もメディアも煽(あお)る。腹に据えかねる図だが、同じ土俵で日本人が熱くなってもいいことはない▼歴史問題もあって、日中関係はなかなか安定しない。小泉政権下でも凍りついた。その後、温家宝(ウェンチアパオ)首相の「氷を溶かす旅」の訪日などで関係は良くなった。それが国交回復40年の節目に、この間で最悪とされる睨(にら)み合いである▼むろん主権は譲れない。だが挑発せず、挑発に乗らず。あおらず、そして決然と。官も民も、平和国家の矜持(きょうじ)を堅持しつつ事を運びたい。諸外国の日本への支持を膨らますよう、考えていくときだ。