色と数字の関係
世の中には、”色のついたもの”がたくさんありますが、大きくわけて、電光掲示板、ネオンライト、テレビなどのような”自ら光を発することができるもの”と、カラー写真、絵本、雑誌のカラーページなどのように”光を発することのないもの”に分けることができます。たぶん後者の方がはるかに多いとおもいますが、その色は、太陽や照明からの光がものに当たり、その反射光が目に入ることで得られるものです。
このように、色には基本的に2つ構成法があり、それを加法混色(色の光を混合する方法)と減法混色(色のインクを混合する方法)といいます。それでは、まずこの2つの方法をご説明したいとおもいます。
【加法混色と減法混色】
最近、新幹線など、電車内でも電光掲示板をよく見掛けるかと思います。その光には赤と緑と黄の3色がありますが、実は、赤と緑の2つの発光ダイオードという素子によって、3種類の色を表現しているのです。
その原理は、適当な強度の赤と緑の光を混合すると、黄色を生む波長の光が存在しないにもかかわらず、黄色に見えるという光の性質を利用しています。
この応用は私達の家庭にあるテレビにも見られるように、どんな色合いも、赤(R)・緑(G)・青(B)の光の微妙な混色によってつくることができるのです。この3つの色のことを『加法混色の3原色(または光の3原色)』といいます。また、色の光を混合する方法を加法混色といい、テレビのブラウン管などディスプレイは、真黒な画面に赤、緑、青の光の3原色を加えているのです。
左図のRGBカラーモデルをご覧頂くと分かるように、3色を平等に混合することで白色の光を得ることができます。
このような白色光の性質を科学的に研究した最初の人はアイザック・ニュートン(1642〜1727)で、彼は1666年に太陽光を三角形のガラスのプリズムに通すと虹の7色の光線に分かれることを発見しました。1704年に発表した『光学論』で、彼はこれをスペクトル(分光)と名付け、それを赤、橙、黄、緑、青、藍、紫の7色であると定義しました。また、彼はスペクトルをプリズムに通すと、元の白い光に戻ることも発見していましたが、白色光はただスペクトルの3色(赤、緑、青)の部分を混ぜるだけでできることが発見されたのは『光学論』から1世紀も後のことでした。
また、さまざまな2色の純粋色を混合することで、白色光に見える光をつくりだすこともできます。このような2つの純粋色の組み合わせを補色とよび、青と黄、緑と青、赤と緑、緑と紫などの組み合わせがあります。
日常生活で目に入ってくる色のほとんどは、白色光の部分的な吸収によってその色に見えるのです。すなわち、ほとんどの物体の色をつくっている色素は、白色光の特定の波長を吸収して、その他の波長を反射したり透過することで、吸収されない光による色の感覚を生みだしているのです。
【減法混色】
加法混色の3原色の光を吸収する色のことを、『減法混色の3原色(または色の3原色)』といいます。減法混色は、混色をすると、入射光から特定の波長成分だけが吸収されます。結果として反射光の色を見ることになります。
例えば、シアンの染料に赤の光をあてると目には黒く見えます。これは、シアンの染料が赤の光を吸収することによって起こる現象です。
白色光が当たったとき、スペクトルの赤の部分をシアン(C;青緑)が、緑の部分をマゼンタ(M;赤紫)が、青の部分を黄(Y)が吸収するので、減法混色の3原色は、シアン、マゼンタ、黄の3色になります。
また、CMYでは厳密な黒ではなく非常に濃い茶色になることから、黒を実際のインク印刷で表現することが難しいので、黒色(K←BLACKのK)を足してCMYKとしています。(左図のCMYKカラーモデル参照)
印刷物の場合は、緑と青を混ぜてシアン、赤と青を混ぜてマゼンタ、赤と緑を混ぜて黄をつくり使用します。理論上は、シアン・マゼンタ・黄のインクの量によって、すべての色を表現する方法ことができます。雑誌のカラーページでは、シアン・マゼンタ・黄・黒のインクを重ねて印刷し、自然の色合いに近い色彩を紙の上につくりだしているのです。ただ、加法混色法が「三原色の要素を増やすほど色が明るくなる」というのに対して、減法混色法は「三原色の要素を増やすほど色が暗くなる」ので、混色の仕方には少々慣れが必要です。
例えば赤を増やしたい場合、RGBならばRを増やすだけでよいのですが、CMYKでは赤に近いMを増やすのではなく、Cを減らし、MとYの相対比を高くすることで得られます。
ドイツの版画家ジャコブ・ル・ブロン(1667〜1741)は、1730年に光を構成している色と塗料に含まれている顔料の違いに気付きました。彼は、原色である赤、黄、青の3種類の顔料からどんな色もつくれることを発見しました。また、混ぜる顔料の種類が多くなればなるほど光は余計に吸収され、塗料の色はそれだけ暗くなること、すなわち、光と逆のことが起こることを発見したのです。
【色情報のデータ管理と色表示の仕組み】
ここ数年,パソコンの画面表示能力は急激に向上しました。私が最初にパソコンを購入した15〜6年前は、その表示色は8色で、その後16色、256色となり、今や1677万色を表示できる機種が、当たり前のよう販売されるようになっています。人間の目では判別できてもせいぜい750万色程度であると言われているので、逆に考えると人間の限界を超える色を表現することが可能になった訳です。
さて、それでは色情報のデータはパソコンの中でどのように管理されているのかを簡単な例とともに見ていくことにしましょう。
BASICプログラムを組んだことのある方は、色を指定するときに赤が”2”であるとか、黄が”6”であるというのをご存知であると思いますが、それがなぜなのかということについて考えたことがありますでしょうか。実は、下の『1×3ビットカラーコードの表』のように、これらの色を指定する番号(カラーコード)は一見でたらめのようにみえて、ある規則にしたがって決められています。ただ、カラーコードは10進数表示されていて、これでは気付きにくいので、2進数表示に変換してから考えることが必要です。0(10)〜7(10)の数値は、000(2)〜111(2)表に対応し、表のように緑、赤、青の混合量に対応しているのです。この場合は、3原色を”混合するか”または”しない”かの2ビットの情報ですが、以上の説明は8色の場合です。
1×3ビットカラーコード
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8×3ビットカラーコード
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【フルカラーでのパソコンディスプレイの発色の仕組み】
右上の、『8×3ビットカラーコードの表』のように、さらにRGB3原色の混合する割合を細かく分ければ、それだけ多くの色を表現することができます。1ビットでは混色するか、しないかでしたが、8ビットでは0から255までの割合で混色をすることができます。
コンピュータの世界で「フルカラー」といわれているのは、RGBの強さを表わすためにそれぞれ1バイト(8ビット)のメモリを割り当て、(28=)256段階の色を表現できます。R、G、Bの強さはそれぞれ独立して変化するので、表現できる色の数は256×256×256=16,777,216色となります。すなわち、フルカラーの場合、各色が256階調で表現され、約1670万色の色数を表現できます。
パソコンディスプレイのカラー発色は、RGB(赤、緑、青)各2桁、計6桁で指定する仕組みになっています。
RGBそれぞれの値は各0〜255までの256段階の値を取り、設定には16進法(0,1,2,3,4,5,6,7,8,9,A,B,C,D,E,F)を使います。
すなわち、R、G、Bのそれぞれを00〜FFまで指定できるわけです。
右の『RGBフルカラー(8×3ビット)カラーチャート』をご覧ください。例えば、RGBそれぞれの値を最小値00にすると「000000」で、表示されるカラーは黒になります。また、RGBそれぞれ
の値を最大値FF(10進法で255)にすると「FFFFFF」、表示されるカラーは白になります。
HTMLでは背景色とか文字色、リンクカラーなど色の指定をする場合、この色の数値に#を付けて指定するので、実際には「#000000」とか「#FFFFFF」の様に指定する事になります。
さて、1670万色を表現できれば、ほとんどの人間の目には「無限の色」と区別ができなくなりますが、各々16ビットを割り当てて、(248=)約280兆色を表現する場面も存在しています。
ただ、パソコンでは、色の異なる小さいピクセルをたくさん組み合わせて絵を表現していますから、例えば解像度が
640×480 の絵をフルカラーで表現したいときは、1ピクセルにつき3バイトで
3×640×480=921,600(バイト=900KB)のメモリが必要になりますので、パソコンの性能と色の最大表現可能数とは密接な関係があります。
パソコン画面に出ている画像を印刷してみたら、色の感じが違うという体験をしたことがありませんか?前述しましたように、画面で表されている色情報は赤(R)、緑(G)、青(B)の3要素で構成されています。プリンタで印刷する場合は、シアン、マゼンタ、黄(Y)の3色(または黒(K)を加えた4色)で構成されています。
よって、画面情報のRGB情報が、印刷するときにCMYK情報に置き換えられるため、画面で見た色と印刷された色とが違ってくるのです。さらにディスプレイもプリンタも個体差があるので、色の再現をさらに困難にしています。このため、コンピュータで扱う色を厳密に調整したいときには「ガンマ補正」という処理が必要になってきます。
マッキントッシュのコンピュータがウィンドウズ・パソコンが全盛のいまでもデザイナーなどに人気があるのは、ガンマ補正がDOS/Vパソコンよりも優れているところにあります。また、アドビ社のフォトショップのような画像処理ソフトでは、画像をCMYKモードに変換できるので、画面上で印刷結果に近い色を見ることもできます。
【その他のカラーコードの利用例】
それでは、工学の研究に興味のある方のために、最後に抵抗器のカラーコードについてご説明しておきましょう。
【抵抗値の見方とカラーコード表】
抵抗器の抵抗の値はカラーコードで表されることが多いのですが、高校までの教科書では学習することがないので、ご存知でない方も多いと思います。カラーコードは抵抗器に右図のような4色帯の表示の場合、第1色帯から第4色帯まで順に色分けして表されています。
それでは、図の抵抗とカラーコード表を照合して抵抗値を求めてみましょう。
右図のような4色帯の表示がされている抵抗器の場合は、最初の2本が抵抗の主値、第3の色帯が乗数、
第4の色帯が許容差(精度)を表してます。例えば、帯の色が右図のように, 赤・青・茶・銀
であれば、赤が2、青が6、乗数が10、許容差が10%なので、
260Ω±10%となります。
より精度の高い抵抗の場合は5本の色帯で表され、第3色帯までが主値を表し、第4の色帯が乗数、第5の色帯が許容差を表します。
ドイツの著名な文学者ヨハン・ヴォルフガング・ゲーテ(1749〜1832)は、1810年に『色彩論』を発表し、そこで先のニュートンの著書『光学論』に対して反論をしました。ゲーテは、黄の日光が深い紫色の影をつくることを観察するなどの経験から、色は明暗によって作られると考えました。
例えば黄は白が暗くなって最初にできる色であり、青は黒が明るくなって最初にできる色であるとしました。
基本的に『太陽光のもとで見ることのできる色は6色(青、赤、黄、緑、紫、橙)だけである。』としたのですが、物理的に実証された理論ではありませんでした。しかし、後の芸術家や理論家に大きな刺激を与えたことは意味のあることとされています。
その他にも、国々の文化の違いからか、虹の色は日本では7色として、常識化されていますが、メキシコは3色(上から緑・黄・赤)ドイツは5色、アメリカは6色という風に認識されています。
毎日着る服や家の内装など、色は私達の日常生活と深い関わりをもっているわけですが、デザイナーなど、色に関係する職業についている人以外は案外色の事について知らないものですよね。
前述したRGBやCMYKの表現の他に、HSBという要素も存在しています。Hの色相、Sは彩度、Bは硬度のことで、この3種の値で色を指定します。本当に色理論の奥深さを感じてしまいます。