
お招きを受けてイオングループ管理職の皆さんと交流できることを喜んでいます。長期にわたり、イオングループは日本での事業が日々伸びるだけでなく、中国でのビジネスも盛んになっています。現在、北京、天津、深セン〈つちへんに川〉、青島などの大中都市にイオングループの店舗があります。中国ではすでにJUSCOの41店舗が出店し、各地の市民に喜ばれていると聞いております。
イオングループは近年、中国との友好交流活動を積極的に展開しています。1998年から、北京の万里の長城で植林活動を進めており、昨年までに植林数は100万本に達し、両国のボランティア1万5000人が動員されました。四川省ブン〈さんずいに文〉川と青海省玉樹で地震が発生した後、イオングループは大量の現金と物資を贈りました。イオン1%クラブは1998年から中日青少年交流に力を入れており、これまでに両国の高校生数百人の相互訪問を実施し、イオン奨学金は中国の6大学で1074人の学生を援助しました。イオングループのこの間の中日友好交流に対する貢献を中国人民は忘れることはありません。この機会を借りて、駐日中国大使館を代表し、心からの謝意を表したいと思います。
一、中国の経済発展
先ほど、イオングループの中国におけるこの数年の業績は急速に伸びていると言いましたが、最も重要な原因は、貴社が「歩調を合わせた」ことだという気がしています。つまり中国経済の急成長に合わせて発展をとげたということです。
ご存じかと思いますが、中国は1978年に改革・開放を実施し、これと同時に、鄧小平氏が「3段階」の戦略方針を打ち出しました。第1段階の目標は、1990年に国民総生産(GDP)の1980年比倍増を実現し、人民の衣食問題を解決することです。第2段階の目標は、1991年から前世紀末までに、GDPをさらに2倍にし、人民の生活を小康〈わりあいゆとりがあること〉水準に到達させることです。第3段階の目標は、今世紀中葉に国民一人当たりのGDPを中進国の水準に到達させ、人民に比較的豊かな生活を送らせ、近代化を基本的に実現することです。
30余年のたゆまぬ努力を経て、前の2段階の目標はすでに実現しました。1978年から2007年にかけて、中国のGDPは3645億元〈1元=約12円〉から24兆9500億元になり、実質年平均9・8%で伸びました。全国都市・町住民の一人当たり可処分所得は343元から1・37万元に増え、実質7・5倍になりました。農民の1人当たり純収入は134元から4140元に増え、実質7・3倍になりました。農村の貧困人口は2・5億から1400余万に減少しました。私たちは自力に頼って、13億人口の食の問題を着実に解決しました。わが国の主要農産物と工業製品の生産量は世界一になり、世界の先進水準をいく重要な技術革新の成果がたえず現れ、ハイテク産業が大きく発展し、水利、エネルギー、交通、通信などのインフラ整備が飛躍的進展を収め、エコ文明建設がたえず進み、都市・農村の様相が一変しました。人民の生活は全体として小康水準に達しました。この30年間は、わが国の都市・農村住民の所得が最も速く伸び、最も多くの恩恵を受けた時期でした。改革・開放以前、長い間私たちを悩ませていた物不足の状況は根本的に改められました。
新世紀に入って、中国の経済発展は加速車線に乗りました。統計によると、2000―2010年に、中国のGDPは1・19兆㌦から5・8兆㌦へと、5倍に増えました。対外貿易総額は8588億㌦から2・97兆㌦に増えました。外貨準備は1656億㌦から2・84兆㌦に増えました。
今年3月、中国は第12次国民経済社会5カ年計画を策定、採択し、今後5年間の経済・社会発展の青写真を描きました。今後5年間に、中国は引き続き科学的発展を主題にし、経済成長パターンの転換加速を主軸にして、全面的で持続可能なつりあいのとれた発展を実現します。中国は引き続き改革・開放を深め、民生を保障、改善し、経済の長期的で、安定した、比較的速い発展と社会の調和・安定をはかります。私たちは2020年までに小康社会を全面的に完成させ、新中国成立100周年、すなわち今世紀中葉に第3段階の目標を実現することをめざします。
二、両国経済の力関係をどうみるか
中国の急速な発展について、日本を含め、国際社会にはさまざまな議論があります。今年初め、中国のGDPが初めて日本を超え、このことは日本のメディアで大きく報道されました。一部の人は中国の発展を称賛しましたが、疑問に思う人もいました。私たちは一方で、この間に中国の経済・社会発展で大きな成果が得られたこと、
改革・開放前に比べ、世界的に注目される急速な発展をとげたことをみるべきです。同時に、問題や不十分なところがあることもみるべきで、このようにしてはじめて中国を全面的に理解し、認識し、「盲人、象を撫でる」〈群盲象を評す〉を回避することができるのです。GDPの「量」では、中国は日本を超えましたが、国家建設と経済発展の「質」では、まだ日本と大きな開きがあり、日本に学ぶべきところがたくさんあります。
中国の一人当たりGDPは4000㌦しかなく、世界の100位以下ですが、日本の一人当たりGDPは4万㌦にも達し、中国の10倍です。
2010年末現在、日本の在外総資産は6・4兆㌦でしたが、中国は4・1兆㌦でした。日本の対外投資は5・3兆㌦に達しましたが、中国は1・2兆㌦にすぎません。
2008年フォーブス省エネ国ランキングで、日本のGDP当たりエネルギー消費とエネルギー効率は共にトップを占めましたが、中国の二つの指標はそれぞれ日本の7・7倍と7分の1でした。
技術革新面では、世界知的所有権機関(WIPO)のまとめによると、2010年の中国の特許出願数は1・23万件に達しましたが、依然として日本の3・21万件に遠く及びませんでした。トムソン・ロイターズ(カナダのトムソン社と英国ロイター・グループが設立したビジネス・専門スマート情報プロバイダー)が発表した「2010イノベーション・レポート」によると、日本は農業と食品を除いて、スマートメディア、厨房家電、半導体など10の基幹分野のイノベーション企業・機関ベストテンの中で、いずれも絶対的優位を占めています。
これらの比較から、中国が近代的社会を全面的に建設し、中進国の目標を実現するにはなお長い道のりを歩まなければならないことは容易にわかります。まさにこれらの開きをみているからこそ、私たちは前進するようたえず努力しているのです。中日間の開きおよび中国の急速な発展がもたらす需要とたえず拡大する市場の潜在力は、両国の経済・貿易分野の協力を深める新たなチャンスと広々とした余地を与えています。
三、中日経済協力の新たな情勢
来年私たちは中日国交正常化40周年を迎えますが、これは中日関係史上、特別な意味をもつ年です。この40年間、両国の各分野の交流と協力は急速な発展をとげました。経済分野だけについて言っても、国交正常化当初、中日間の貿易額は10億㌦にすぎませんでしたが、2010年の中日貿易は3000億㌦近くに達しました。今年5月までに、日本の対中投資案件は4・5万に上り、投資実績は763・1億㌦に達しました。国別にみると、日本は中国の第2の貿易相手国、第3の外資供給国です。中国はすでに日本の最大の貿易相手と第1の輸出市場になっています。中日両国の経済融合度はたえず高まり、「もちつもたれつ」の「利益共同体」を形成しています。
目下、世界の経済回復はなお諸々のリスクとチャレンジ〈課題〉を抱えており、欧州債務危機は拡大を続け、米国の景気は後退していますが、このような大きい背景の下で、中日両国の経済は依然として安定した発展を維持しています。中国と日本の経済は共に安定した発展の好調さを維持し、両国の経済・貿易分野の協力にはいくつかの新たな特色がみられます。
第一に貿易規模がたえず拡大しています。中国側の集計によると、今年1―9月の中日貿易は前年同期比18・2%増の2534・5億㌦に達しました。日本の対中輸出は同13・9%増の1457・16億㌦に達し、中国からの輸入は同24・6%増の1077・34億㌦に達しました。対中貿易は日本の貿易総額の20%を占めています。
第二に日本の対中投資が伸び続けています。今年1―9月、日本の対中投資は前年同期比64・3%増の47・9億㌦に上り、日本の対外投資総額の15・6%を占め、中国は日本の第2の投資先になりました。日本貿易振興機構(JETRO)の調査報告書は、今回の投資ブームはこれまでと違うとみています。中国の経済構造調整、内需市場育成と緊密に結びつき、内需に照準をあてたサービス業やハイテク産業が投資のホットポイントになっており、すでに多くの企業が研究開発センターとコア製品を中国に移し、さらに一部の日本企業は中国企業と共同体を結成して、第三国市場を共同で開拓しているというのです。
第三に中国の対日投資には変動がみられますが、余力は十分あります。日本側の集計によると、今年1―6月、中国の対日投資は前年同期比9・6%減の9700万㌦でした。中国側の集計によると、中国の金融以外の対日投資は前年同期比39・8%減の8621万円でした。調査によると、日本の地震・津波と放射能漏れ災害が企業の対日投資に影響している主な原因だといわれます。しかし災害復興事業の進展に伴って、多くの中国企業が再び対日投資の検討を始めています。
四、中日経済・貿易協力の新たなチャンス
今年は中国の「12・5」計画のスタートの年です。日本は新経済成長戦略の発表に続き、災害復興の新しい情勢に合わせて、復興構想を打ち出しており、両国には産業転換、グリーン経済、防災減災、持続可能な発展などの面で諸々の接点があり、中日の経済・貿易関係は重要なチャンスを迎えており、双方は共に努力し、チャンスを共有し、共に発展をはかるべきです。両国企業は目下の有利な時機を逃さず、しかも長い見通しをもって、協力を一段と強化し、中日両国の経済・貿易分野の協力を新たな段階に引き上げるべきです。私は、今後しばらく、以下のようないくつかの分野を重点に、追求と拡大を続けていってよいと考えます。
一つ目は震災復興と防災・減災の協力です。
日本の3・11巨大地震が起きると、中国政府と社会の各界はさまざまな方法で見舞いの気持ちを表しました。胡錦涛主席は自ら中国駐在日本大使館を弔問し、温家宝首相は宮城と福島の被災地で市民を見舞うとともに、日本の指導者と震災復興協力を強めることで合意しました。現在、両国の関係官庁が指導者の合意を積極的に実行に移し、協力の度合いを強めています。両国の企業も架け橋ときずなの役割を果たし、震災復興と防災減災の協力に積極的に参加し、共に災害とたたかう両国の能力を高めるために知恵と力を出すことができます。
二つ目はお互いのチャンスに着目し、実務協力を推進することです。
内需拡大は中国の「12・5」計画中の重要な政策です。今後5年間、中国の経済構造は一段と最適化され、GDPに占めるサービス業の割合が47%に達し、工業化、都市化(町を含む)のプロセスが着実に進み、都市化率が2010年の47・5%から51・5%に高まり、都市(町を含む)人口が初めて農村人口を超えるようになり、これによって巨大な消費需要が生まれることは疑いありません。イオングループの投資計画では、2011年―13年の中国、東南アジア向け投資が現在の8%から23%に増やされているようですが、これは先見性に富む、戦略的計画だと思います。
三つ目はグリーン成長のチャンスを逃さず、経済・貿易協力の新たなハイライトを築くことです。
12・5計画期間中、中国は資源節約型の環境にやさしい社会の建設に力を入れることにしています。単位GDP当たりのエネルギー消費とCO2排出がそれぞれ16%と17%引き下げられ、主要な汚染物質の総排出量が8%ないし10%減少します。日本もエコ循環型経済を被災地復興と今後10年間の経済成長戦略の重要な内容とし、日本企業は省エネ・排出削減面で進んだ経験をもっています。双方は相互に補完することができ、協力の潜在力は極めて大きいものです。
四つ目はビジネスチャンスを的確に探し、新分野を積極的に広げることです。最近多くの経済界の友人が私と一緒に、高齢化への対応とシルバー産業の協力強化問題を検討しています。日本はすでに高齢化社会に入り、中国は60歳以上の人口がすでに13%で、高齢化社会に入りつつあります。12・5計画期間中、中国はまた、平均寿命を「1歳延ばし」、74・5歳にすることをめざします。老齢人口の増加に伴って、高齢者向け商品とサービスの需要は日増しに増えています。両国は互いに経験を参考にし、高齢者保健、看護サービスや高齢者マンション、コミュニティーの養老施設整備分野の協力を推し進めるべきです。
イオンの「永旺」という中国語訳は非常によく、「永遠に旺盛である」の意味が込められています。イオングループが今世紀の第2の10年間に、「願い通りになり」、事業がたえず広がるよう祈ると同時に、イオングループが引き続き両国の経済貿易協力関係を増進し、両国国民の友好的感情を促進するために一層大きな貢献をされるよう希望しています。
ご静聴ありがとうございました。
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