愛国心の名のもと中国で反日デモ 一方、香港では国民教育に反発
「愛国心」の名のもと、中国各地で繰り返された反日デモだが、この愛国心をめぐり、香港が大きく揺れている。
沖縄県の尖閣諸島・魚釣島に19日、地方議員や市民団体のメンバーら10人が上陸した。
政府の許可なく上陸した経緯などについて、10人は20日、警察に事情を聴かれた。
20日昼ごろ、東京・杉並区議会議員の田中 ゆうたろう氏は「日本の固有の領土に日本人が訪れるということが、普通にできないことが異常」と述べた。
この尖閣諸島の問題をめぐっては、19日、中国各地で大規模な反日デモが多発した。
反日デモの風は、香港でも吹き荒れた。
魚釣島に不法上陸し、英雄扱いされた活動家たち。
今回の反日運動の盛り上がりのきっかけの1つが、不法上陸に同行取材をした香港の「フェニックステレビ」の存在。
フェニックステレビの劉長楽総裁は「(島の)売買の話や、日本人が島に行ったりしたので、中国の民衆を刺激した。それで、わが社も行ったのです」と語った。
フェニックステレビの劉総裁は、中国人民解放軍出身。
そのため、中国政府寄りの放送が目立つという。
このテレビ局が中国国内で注目されるきっかけとなったのが、1999年に旧ユーゴスラビアで起きたNATO(北大西洋条約機構)軍による中国大使館の誤爆事件。
特集を組んだことで、反米の機運が高まり、北京のアメリカ大使館が投石被害を受ける事態にまで発展した。
「愛国心」の名のもと、中国各地で繰り返された反日デモ。
しかし今、この愛国心をめぐり、香港は大きく揺れている。
香港の街角では、国民教育に反対する署名活動をしていて、すでに10万人の署名が集まったという。
9月1日から香港の小中学校で導入される国民教育。
目的は愛国心の育成だということだが、保護者や教員から強い反発が起き、7月末のデモには数万人が参加し、「洗脳教育反対」と書かれたボードを持つ子どもの姿もあった。
デモに参加した子どもは「中国は香港まで統一するつもりだ」と話した。
スーパーニュース取材班は、香港で暮らすある家族に話を聞いた。
「国民教育」に反対する香港の中国人家族は「学生たちに自国の全ての歴史を教えず、(中国政府にとって)都合のよい内容のみ選んで教えています」と語った。
教員用に作られた冊子では、一党独裁を続ける中国共産党について、「進歩的で無私な、団結した執政集団」とたたえる一方で、民主化運動が弾圧された1989年の天安門事件などについては、一切書かれていない。
「国民教育」に反対する香港の中国人家族は「生徒の愛国心ばかり重視され、息子が本当のことを隠し、『うそをつく』など、虚偽的な人間になってしまうのではないか心配です」と語った。
中国事情にくわしい富坂 聰氏は「これまで『背負ってきた歴史』っていうのは、香港と大陸(中国本土)では違うわけですよね。政治的な意味としてはやはり、コントロールしやすくすると。中国共産党の功績を強調すれば、自然に『日本が悪者になる』という性格を持っている」と語った。