日馬富士はのど輪で豊ノ島を厳しく攻める=両国国技館
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◇秋場所<9日目>
横綱昇進を狙う大関日馬富士(28)=伊勢ケ浜=は豊ノ島を外掛けで下し、23度目の優勝を目指す横綱白鵬(27)=宮城野=は安美錦を危なげなく寄り切り、ともに初日から9連勝とした。平幕旭天鵬(38)=友綱=も全勝を守って通算813勝。高見山を抜いて外国出身で最多、歴代単独8位となった。大関稀勢の里は豊真将に逆転の引っ掛けで敗れて初黒星を喫した。大関鶴竜は新関脇妙義龍に寄り切られて2敗に後退した。妙義龍は7勝目。
日馬富士は左ののど輪で強引に豊ノ島を攻め立てながら右上手をつかむ。「まわしを取りたかったので良かった」。ここまでは狙い通り。しかし相手はくせ者。機敏に動かれ、まわしが切れて2人の体がいったん離れた。
その後、2、3秒、両者は息を入れながら土俵上でにらみ合った。その光景は相撲というより柔道だった。日馬富士は2度、左の張り手を飛ばすフェイントを入れてから突っ込み、最後は外掛けで豊ノ島を仕留めて9連勝。連勝も25に伸びて師匠の伊勢ケ浜親方(元横綱旭富士)の記録を超えた。
「流れでああいう形になった。でも冷静にね」と日馬富士。北の湖理事長(元横綱)は「日馬富士は、右膝の使い方がうまい。外掛けも相手に逃げられないようにして勝負している」と絶賛した。
場所前の時津風部屋での出稽古。日馬富士は再三、左ののど輪で豊ノ島を攻めた。ほとんど大関が圧倒する中、豊ノ島がのど輪をほどいて懐に食い付き逆襲する場面もあり「のど輪対策のヒントはつかんだ」と話していた。
豊ノ島の番付は、西前頭三枚目。本来なら対戦はないが、3大関の休場で実現した一番だった。豊ノ島としては、手応えを感じて臨んだ一番だったが、日馬富士の充実ぶりに屈した。「探り、探りでした」と大関の動きを読めず、しきりに悔しがった。
日馬富士は自宅に帰れば来日中の母、妻、そして2人の娘が待っている。もともと小食の大関だけに疲労による食欲減退が気になるが、大好きな故郷のモンゴル料理をそろえて迎えてくれる。激闘を忘れ、くつろげる瞬間だ。
「集中して自分の相撲を取るだけ。一日一番、全身全霊でね」。横綱昇進へ向けて残り6番。確実にその瞬間は近づきつつある。 (竹尾和久)
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