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東南アジア諸国連合(ASEAN)に日本など6カ国を加えたASEANプラス6が、貿易や投資の自由化を進める「東アジアの包括的経済連携協定」(RCEP)交渉に入る。野田首相[記事全文]
犯罪の前科がある人の周辺で同じような事件が起きた。本人は潔白を主張している。有罪か無罪かを判断するにあたり、前科をどう扱ったらいいのか。そんな問題が争われた裁判で最高裁[記事全文]
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東南アジア諸国連合(ASEAN)に日本など6カ国を加えたASEANプラス6が、貿易や投資の自由化を進める「東アジアの包括的経済連携協定」(RCEP)交渉に入る。
野田首相はこれに加え、米国が主導する環太平洋経済連携協定(TPP)と、日中韓の自由貿易協定(FTA)の三つの交渉に並行して取り組むと強調している。
だが、TPP交渉への参加表明は見送ったままだ。
アジア太平洋地域の活力を取り込んで国内経済を立て直すには、経済連携のネットワークを広げることが欠かせない。
経済連携交渉では、ある交渉での進展が別の交渉への刺激剤となる相乗効果が生じる。この点で、対象分野が広く、自由化のレベルが高いTPPがカギを握ることを忘れてはならない。
この1年を振り返ろう。
首相が「TPP交渉参加に向けて関係国との協議に入る」と宣言したのは、昨年11月のアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議だった。
それを受けて、日中韓3カ国でFTA交渉に向けた協議が始まった。対日貿易赤字を抱える韓国は消極的だっただけに、中国が積極姿勢に転じたことが大きかった。
RCEPをめぐっては、ASEANに日中韓の「プラス3」を主張する中国に対し、中国の影響力を抑えたい日本は「プラス6」を唱えていたが、中国が譲歩した。
いずれも、日本のTPPへの関心が中国に危機感を抱かせた結果とされる。
むろんRCEPも日中韓FTAも、各国の利害がからみあって一筋縄ではいかない。日本と中国、韓国との関係が悪化している現状ではなおさらだ。
しかし、だからこそ、TPPへの積極的な姿勢を示すことは経済的にも、外交的にも局面を打開する糸口になりうる。
TPPには「実態がわからない」「農業や医療制度が崩壊する」など反対論が根強い。
正確な情報を集めるためにも交渉に加わり、ルール作りに日本の主張を反映させる。そう粘り強く説得していくことが政治のつとめだ。
犯罪の前科がある人の周辺で同じような事件が起きた。本人は潔白を主張している。有罪か無罪かを判断するにあたり、前科をどう扱ったらいいのか。
そんな問題が争われた裁判で最高裁は先ごろ、厳しい枠をはめる判決を言いわたした。
前科にはっきりした特徴があり、かつ、新たな起訴内容と相当程度似ていて、それ自体で犯人が同じだと合理的に推認できる――。そうした条件がそろって初めて、前の事件に関する判決書などを証拠として用いることができると判断した。
そして、盗みに入った家で灯油をまいて火をつけたとして起訴された男について、手口にそれほどの特殊性はないと述べ、昔の記録を裁判に持ちだすことは許されないと結論づけた。
もっともな見解だ。
前科を使った立証の危うさはかねて指摘されていた。この問題がいま、改めて注目される背景に裁判員制度がある。
前科情報が普通の市民に与える影響は大きい。それによって事実の認定を誤ることがあってはならないと、慎重な配慮を求める声が高まったのだ。
どんな証拠を、どういう形で裁判員に示すか。裁判官、検察官、弁護人の三者には、最高裁が示した枠組みを踏まえた十分な検討が求められる。
判決はまた、これまでの裁判に反省を迫るものともなった。
前科を知っても、訓練を積んだ裁判官は左右されない。そんな自信から、判断の物差しが緩くなってはいなかったか。今回の判決に対し、検察官や元裁判官の一部から「厳格すぎる」との声が出ているのは、問題ある立証活動が行われてきた証しと見ることができよう。
たしかにプロには一日の長がある。だが「自信」が「過信」になっていたら怖い。前科を証拠に使うことを認め、被告が放火したとの心証を色濃くうちだした二審判決が、最高裁によって否定された事実は重い。
予断や偏見から自由であることの難しさを自覚して、基本に忠実に裁判にとり組む。判決からくむべき最大の教訓は、そこにあるのではないか。
前科の扱いだけではない。書面に頼らず、法廷でじかに見聞きしたやり取りを重視する。検察側の言い分に確信がもてない場合は、被告に有利に判断する。国民の司法参加によって、こうした刑事裁判の原則が再確認されつつある。
証拠を適切に選び、平易なことばで説明し、間違いのない結論を導く。裁判員制度4年目。法律家の責務はいよいよ重い。