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(1)自治体はfacebookをどう使うべきか。-武雄市の事例から考える
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ソーシャルメディアを情報発信に活用する自治体が最近増えてきています。これまでも自治体のソーシャルメディア活用のあり方について述べてきましたが、今回から3回にわたって、「facebook(フェイスブック)」に注目していきたいと思います。
facebookは世界中で、7億5000万人以上のユーザーを有し、googleを抜いて世界一のアクセス数を誇ります。facebookは実名での登録が基本であり、友人や知り合い同士でつながり、「いいね」ボタンを介してコミュニケーションが広がります。
また、優れた情報共有の仕組みをもっていて、趣味や活動、ビジネスにも利用が広がってきています。最近では中東の「facebook革命」が皆さんの記憶に新しいかと思います。人々の「つながり」が現実を変える力になる、その基盤(プラットフォーム)としてfacebookは大きな力を持つことが証明されたのではないかと思います。
さて、そんなfacebookですが、世界中の自治体が様々なやり方で活用をはじめています。しかし中でも注目されている自治体が、日本の佐賀県武雄市です。武雄市は、8月1日をもって、自治体のホームページを総てfacebookに移行してしまいました。総てfacebookに移行、というのは世界でもあまり聞いたことがありません。そこで今回は、武雄市に焦点を当てたいと思います。
1.SNSを積極的に導入する「武雄市」の挑戦
実は、武雄市は全国の中でもソーシャルメディアの導入を積極的に進めていることで有名な自治体です。昨年9月には、市の職員の大半にtwitterのアカウントを与えて、職務中の「つぶやき」を奨励しました。
職務中のネット利用を禁止する企業も多い中、しかも内容に制限つけずにtwitterの利用を認めることは、かなり大胆な試みであったといえるでしょう。
その狙いは「何気ない情報も公開することで行政を身近に感じてもらうこと」だそうです。実際に6月12日の大雨では、市職員や市長がtwitterで道路の冠水状況などの災害情報を流し続けたそうです。また、東日本大震災の翌日には、twitterから募金を呼びかけ、2日間で128万円が集ったそうです(『西日本新聞』6月27日)。
そして、このような「見える化」の一環として、市ホームページのfacebookへの移行が行われたわけです。(武雄市のホームページfacebook化)
2. 武雄市役所facebookページの特徴
武雄市役所のページは、毎日次のようなメッセージからはじまります。
武雄市役所のページでは、facebook共通の「ウォール」「ディスカッション」などの項目のほかに、「暮らしの便利帳」「観光情報」「事業者向け情報」「市政情報」という大きな項目でわかれていて、すべてインラインフレーム(iframe)と呼ばれる、ページを埋め込む方法を使って構築されています。
これはfacebookに直接データを置くのではなく、別のウェブサーバーに内容を置いておき、facebookでは、その外部情報を読み込ませるという手法です。この手法を使うことで、さらに各項目について、細かい情報の表示を可能にしています。
このような方法をとる事で、武雄市ホームページについて、facebook自体のサービスが、万一停止した場合でも、データが消えたりアクセス不可能になることなく、継続することが可能です。武雄市役所ページは特にfacebookのアカウントを有していなくても、誰でも閲覧可能です(ただし、コメントをする場合にはfacebookのアカウントを取得することが必要です)
このような今日の天気、列車の運行状況など、さりげない投稿から、イベントの案内などの行政情報、市の「名店」の紹介など、様々な情報が毎日提供されていて、それに対して「いいね!」ボタンやコメントを通じて、市民とのコミュニケーションが生まれています。これは、これまでの自治体ホームページでは考えられなかったことです。
3.賛否が分かれますが...私は評価します!
武雄市のfacebookへの移行については、評価が分かれていて、批判も結構見受けられます。デメリットを箇条書きにすると以下のような点が挙げられるでしょう。
<デメリット>
- facebookに慣れていない利用者が戸惑う。利用者にfacebookの習熟を強いることになる。
- facebookの都合でサービスが停止する可能性
- facebookの仕様に合わせているため、使いづらい(例:検索機能がない、インラインフレームで表示されるページを人に教えることが出来ない、スマートフォンでアクセスするとウォールしか見ることが出来ない、印刷できない等)
- SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)特有のリスク(例えば「炎上」「荒らし」)に晒される
まず「facebookに慣れていない利用者が戸惑う」ですが、「慣れていない人がいる」とか「戸惑う」と言った批判は、新しい技術が採用される度に、必ずある批判です。行政サービスの一環としてインターネットを使うこと自体、昔は批判があったことなど、誰も覚えてはいないでしょう。ですので、中長期的にこれらのデメリットを上回るメリットがあるかどうかが重要だと思います。
つぎに「facebookの都合でサービスが停止する可能性」ですが、これは考えておく必要があります。実際twitterにやっている方には、「クジラ」が出てきて見ることが出来ない画面を、割りと見慣れているかもしれませんが、こんなことが武雄市役所ページで起こっては、本当に困ってしまいます。
また栄枯盛衰の激しいSNS業界です。この先ずっとFacebookが安泰とは言い切れません。最悪facebook社が倒産したらどうするか、きちんと考えておく必要があるでしょう。
先に述べたように、別のサーバーにデータを置いているのでデータが消えるようなことはありません。ただfecebookにトラブルがあったとき、すぐにミラーサイトに誘導できることをはっきりさせておいた方がいいでしょう。
三番目の「facebookの仕様に合わせているため、使いづらい」という問題については、確かに今後の課題として残りそうです。ただ、後で述べますが、facebookは、実はかなり自由度が高く、色んなボタンを設置することが出来ます。確かにfacebookの仕様を超えるような変更は出来ませんが、カスタマイズをすることにより、使いやすいものにすることもできるかと思います。また、検索機能、印刷機能、インラインフレームの問題、スマートフォンでアクセスする際の問題など、技術的な問題については、一部は解決されていますし、武雄市のページを見れば、近々対応されるはずなので、大きな問題とはならないでしょう。
最後の「リスク」については、実名を基本とするfacebookなので、他のSNSのように荒れるリスクは少ないと言えるかもしれません。実際にウォールを見ても、今のところ問題のある書き込みはないようです。ただやはり、個人情報を記載した書き込み、人種差別的な書き込みなどがあった場合どうするか、削除の線引きと責任について明確にする「ソーシャルメディアポリシー」をしっかり明示することも必要だと思います。これについては、次回以降諸外国の事例もみて、詳しく述べていきたいと思います。
では、自治体サイトとしてfacebookを利用するメリットはなんでしょうか。
メリットは、即時性、公開性、双方向、コスト削減!
- 【即時性】即座に、市民に対し、情報提供ができる
- 【公開性】透明性の高い行政を実現し、行政のアカウンタビリティ(説明責任)を高めることができる
- 【双方向性】行政と市民の双方向のコミュニケーションを促すことにより、市民目線の行政を実現できる
- 長期的な運用コスト、初期の開発コストを抑えることができる
このようなメリット、特に1から3は、これから先の行政の姿を見据えるならば非常に重要だと思います。今や、どの自治体も財政は逼迫していますが、行政サービスに対する需要は高まるばかりです。
少子高齢化の中で「公(おおやけ)」の領域はどんどん広がっていくでしょう。そうであるならば、市民と行政がともに、「公(おおやけ)」を支える仕組みが必要であり、1~3は、市民と行政の「協働」を行なう上で非常に重要だと思います。協働の前提は、市民と行政の情報の共有です。
facebookは即座に情報を共有することができます。そして共有した情報を元にコミュニケーションを行い、問題の解決を図ることができるのです。ソーシャルメディアの中でも、facebookは自由度が高く、サードパーティーのアプリケーション(2万以上あります)を組み込むことで、市民と行政が協働するための様々な仕掛けを作り出すことが出来ます。
実際に武雄市のウォールを見て分かるように、これほど「行政と市民のコミュニケーション」が全面に出ているものは、他の自治体のホームページにはないでしょう。
またディスカッションボードでは、fecebookの技術的な問題から、市政への提案まで様々なやり取りをみてとることができます。もし、ディスカッションボードで市民からの提案や質問に行政が答えないならば、「答えない」ということも、すべての市民に「可視化」されるわけです。これは、行政をよりよくする大きな原動力になる可能性を秘めていると思います。
Facebookの活用で、サーバーの運用コスト削減も可能
運用コストについては、直接、武雄市つながる部秘書広報課に電話で伺ったところ、運用は年間契約で、年度途中での移行なので、すぐに変るようなことはない、来年度の契約については現時点では言えない、とのことでした。
ただ、サーバーの利用量も下がってきているとのことなので、運用コストは下がるのではないでしょうか。基本Facebookのデザインですし、欲しい機能はサードアプリケーションで追加するような形なので、もし他の自治体が追随するようになれば、ノウハウも共有可能ですし、開発・運用コストはもっと下がるのではないでしょうか。
さらに、サードアプリケーションの追加・削除で、将来の行政需要への変化に対しても柔軟に対応できそうです。行政のIT化は、その過程が不透明で、かつ行政の方が詳しくなかったりすると、過大にコストが見積もられ、質の悪いシステムが導入されてしまうことも過去にありましたが、Facebookにおいて、武雄市役所ページの運用・開発についても「オープン化」することができるはずです。地元企業の参入も期待できます。
いずれにしても、賛否の分かれる「武雄市のfecebook移行」ですが、私は、これからは「市民と行政の協働の時代」と言う視点から、武雄市役所のFacebookへの移行を評価したいと思っています。
4.「自治体とFacebook」その可能性
市民と行政が共に「公共」を担う、新しい公共のプラットフォームとして、武雄市役所のfecebook移行は、そのための大きな一歩であると思います。
ただ、facebookの活用は、色々なやりかたがあり、武雄市のやり方はその一つにすぎません。次回からは、諸外国の事例について紹介していきます。そして自治体のFacebook活用に関して、何が重要か、そして何に注意すべきか探っていきたいと思います。
谷本晴樹(たにもと・はるき) Twitter: @harutani
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