平壌宣言から10年 日朝が「戦後賠償」密約 元幹部証言
産経新聞 9月18日(火)7時55分配信
拡大写真 |
日朝首脳会談から具体的進展のない10年を振り返り、拉致被害者の家族は「北朝鮮に怒りを示してほしい」と訴えた=17日午後2時21分、東京都港区(矢島康弘撮影)(写真:産経新聞) |
■拉致認定なら1兆3600億円
2002(平成14)年の日朝首脳会談で小泉純一郎首相(当時)と金正日総書記が署名した日朝平壌宣言の背景に、北朝鮮側が拉致を認めれば日本側が戦後賠償として経済協力資金114億ドル(約1兆3600億円=当時)を提供するという「密約」があった可能性が浮上した。朝鮮労働党元幹部が17日までに証言した。日本政府はこれまで「規模については協議していない」としてきた。しかし交渉録は一部が欠落しており、交渉には不透明さが指摘されてきた。北朝鮮では、この資金を前提に国家再生プロジェクトが立ち上がっていたという。
「日本が賠償金を約束したという話は、当時の朝鮮労働党幹部ならたいがいの人間が知っていた」と証言するのは、04年に韓国に脱出した朝鮮労働党の対日対南工作機関、統一戦線部の元幹部、張哲賢(チャン・チョルヒョン)氏(41)。日朝交渉に関わる北朝鮮側の具体的な証言は初めて。
張氏は首脳会談直後、「中央党特別講演資料」と「外務省実務会談成果・経験資料」を閲覧した。「党講演資料」には、「日本が114億を約束した」とあり、「(日本側は)戦争賠償という表現があると韓国から(賠償を)再要求されると何度も主張したため、賠償金の表現を削除した」と記されていたという。
一方、「外務省資料」には、「(日本側が)国交正常化の代価として資金を出す」と提案、北朝鮮は「300億ドルから400億ドル(約3兆6千億〜4兆8千億円)を要求した」とのやりとりが書かれていた。北朝鮮側は金額の根拠として▽慰安婦の賠償▽徴用労働者の補償▽植民地時代に日本が没収した朝鮮側の財産相当の金額▽没収財産の戦後の利子−などを挙げて要求していた。
資料には日本側の反論として「慰安婦は自分が望んで稼ぎに行った」▽「徴用は賃金を払った」▽「利子を要求するなら、(旧日本施設の)水豊ダムや茂山鉄鉱山、興南連合企業所などを使用してきた使用料を払え」−などの記載もあり、これに関しては「(日本側の交渉)担当者は頭がいい」との感想もあったという。
協議は01年秋から約30回の秘密折衝で進んだ。その後、安倍晋三政権の調べで8月、9月の2回分の記録の欠落が判明していた。
首脳会談に官房副長官として同席した安倍氏は産経新聞の取材に対し、「田中(均・元外務省アジア大洋州)局長の担った段階の一部議事録がないのは問題だ。秘密外交になり、総力戦といえる状況ではなかった」と述べている。調査に関わった元政府高官は「拉致問題や経済協力問題がどう話し合われたかが分からない。記録を残すのが都合が悪かったのではないか」と話している。
最終更新:9月18日(火)8時25分
Yahoo!ニュース関連記事
- 小泉訪朝から10年 首相「早期協議で関係改善」 松原氏は人道支援に言及写真(産経新聞) 1時35分
- <野田首相>拉致など諸懸案「解決する決意」(毎日新聞) 17日(月)21時51分
- 拉致認めて10年、めぐみさん母が胸中語る映像(日本テレビ系(NNN)) 17日(月)19時19分
- 朝鮮中央通信、日本を批判も「日朝関係改善は金総書記の遺訓」映像(フジテレビ系(FNN)) 17日(月)17時57分
- 北朝鮮、拉致問題は「既に全て解決」映像(TBS系(JNN)) 17日(月)13時59分
関連トピックス
主なニュースサイトで 北朝鮮日本人拉致問題 の記事を読む
この記事を読んでいる人はこんな記事も読んでいます
- 立会演説会わずか2回 民主代表選 内向き首相に批判(産経新聞) 9月18日(火)7時55分
- <海峡両岸ななめ読み>(9)台湾民主化ビフォーアフター=「独立志向」「中国志向」二項対立のその先は…写真(Record China) 9月15日(土)8時45分
- 2市の遊説中止 自民党総裁選(産経新聞) 9月18日(火)7時55分
- 自民5候補、大阪遊説 維新本拠地 歯切れ悪く 連携言及や批判“封印”(産経新聞) 9月18日(火)7時55分
- 原発ゼロ 「革新的」程遠く、具体性欠く戦略(産経新聞) 9月15日(土)7時55分