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【社説】

平壌宣言10年 拉致解決一日でも早く

 日本と北朝鮮の首脳会談が開かれてから十七日で十年になった。日本人拉致被害者五人とその家族が帰国したが、以後進展はない。北朝鮮の新体制で対日外交が変わるか。対話を通じて見極めたい。

 十年前、小泉純一郎首相と金正日総書記は初の首脳会談をし、国交正常化の早期実現を目指す「日朝平壌宣言」に署名した。

 金総書記は北朝鮮が一九七〇、八〇年代に日本人を拉致したと認めて謝罪と再発防止などを約束した。五人は帰国できたが、八人は死亡したと伝えられた。

 日本の世論は激しく反発した。北朝鮮側が提出した被害者の死亡診断書などは極めて疑わしいものだった。日本政府が認定した拉致被害者十七人のうち十二人は今も北朝鮮国内で生存しているとみており、拉致問題の解決なしでは国交正常化はありえないと一貫して主張している。

 北朝鮮は一時、再調査を約束したが、日本側が納得できる説明はないままだ。横田めぐみさんの場合、北朝鮮当局は「一九九四年四月に死亡した」と説明したが、最近、二〇〇一年時点で生存していたという情報が出てきた。

 ほかの被害者も再三、生存情報が流れる。被害者の家族は高齢になった。日本政府さらに世論は全員が生きているとの信念を持ち、粘り強く追及したい。

 北朝鮮は植民地支配の清算を求めるが、まず非人道的な拉致問題を一日も早く解決することが前提になる。そこで初めて平壌宣言を履行する道が開かれる。

 この十年間、北朝鮮の対外姿勢は一層強硬になった。核実験を二度、長距離弾道ミサイルの発射も三度強行した。経済を再建できず、住民の不満を抑えるため、危機をあおって軍事力強化を進めているとみるべきだろう。

 金総書記が昨年末死去し三男、金正恩第一書記を指導者とする新体制がスタートした。国内経済の改革を模索し、八月には日本政府との協議を四年ぶりに再開するなど外交でも変化の兆しがみえる。

 強硬路線を自制して改革・開放に進むことが利益になると説得していきたい。譲歩があれば、人道支援に限って対応する方法もあろう。

 核やミサイルは東アジア全体に影響する脅威である。日本としても、領土をめぐり悪化している中国や韓国との関係を立て直し連携していかないと、北朝鮮を動かすのは難しいのが現実だ。

 

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