最近、韓中の専門家会合に出席するため北京を訪れた。到着初日に他の参加者と夕食を終え、足マッサージに出掛けた。純朴な顔立ちの従業員がひざまずいてマッサージしてくれる姿を見て、申し訳ない気持ちがした。韓国と比べ、値段がはるかに安かったからかもしれない。
翌日は終日会議だった。参加者は両国の懸案や地域情勢について、比較的率直に言いたいことを言い合った。中国側の出席者の発言にはっとすることもしばしばだった。内容そのものに新味はないが、中国人の発言として聞くと真実味があった。その上、参加者は全員が政府の研究所や軍と関係がある専門家だった。
中国人の米国に対する反感は想像以上だった。特に最近、米国のアジア復帰政策に大きな脅威を感じているように感じられた。中国側の専門家は米国が韓日との既存の同盟関係を強化し、ミャンマー、ベトナムなど新たな友好国と連帯して、中国に圧力をかける現実に不安を隠さなかった。彼らが「米国が中国脅威論を誇張し、アジアで軍事力を増強することで、中国を封じ込めようとしている」と強く主張した。
一方で「中国の隣国は中国とこれだけ密接に結び付いているのに、なぜ心理的、政治的に中国に反感を持つのか」という悩みも明かした。討論は堂々巡りとなった。韓米同盟と北朝鮮問題がその原因だ。中国は米国と同盟関係にある韓国を信じられず、韓国は北朝鮮をかばう中国を信頼しにくい。中国は「米国と距離を置く韓国」を望んだ。中国側出席者は、韓半島(朝鮮半島)の統一が米国の介入なしで実現するならば喜んで支持すると述べる一方、「米国はパートナーシップを重視すると言いながら、韓国をパートナー扱いしていない」とも述べ、ひそかに離間策も講じてきた。
とはいえ、米国では最近、アジアで対中国連合勢力を結成する際、韓国を除外しようという話も出ているという。どのみち韓国は中国に接近する可能性が高いため、最初から韓国抜きで、オーストラリア、日本、フィリピン、ベトナム、ミャンマー、インドなどと結び付くべきだという主張だ。一見して、米中が対立する状況下で、韓国の戦略的、地政学的な価値が高いようにも見えるが、双方から信頼されずにいじめられる微妙な状況にあるようにも思える。
北京から飛行機で2時間。ソウルに着くと、メキシコ人が口にするという「メキシコは神からあまりに遠く離れ過ぎており、米国とはあまりに近過ぎるのが問題だ」という言葉を思い出した。巨大な麻薬消費市場があり、銃器の所持が自由な米国が隣にあるせいで、麻薬犯罪の巣窟になるなど、メキシコが抱える多くの問題は米国の隣国である点に原因があるとの見方だ。元は19世紀の米墨戦争で使われた表現だが、最近は大国に接する小国の立場を皮肉って使われるという。
ほかにもある。ドイツ統一に対するフランス人の本音を聞いてみよう。フランス人はかつて「ドイツがあまりに好きで、ドイツが2個あればよいと思っていた」と話していた。統一ドイツではなく、東ドイツ、西ドイツがあった方がよいという意味だ。韓半島の統一に対する中国の見方も「韓国は二つあった方がよい」というのが本音ではなかろうか。
ある政治家は以前、「中国に行き、安いからといって足マッサージを受け、買い物を楽しむが、しっかりしないと韓国が安値で中国人の足をもむ立場になりかねない」と話していた。巨大な中国に接しながらやっていくスマートな戦略がなければ、いずれ「韓国は中国と近過ぎるのが問題だ」と嘆く日が必ずやってくるだろう。