尖閣諸島購入で世界各国が日本を非難している？

　中国における反日デモがかなりひどい状態ですが、中国紙では尖閣諸島の問題についていつも通りの報道をしており、あまりにその報道が典型的すぎて逆に興味を引かれたので今日はこれについて少し。

１　記事の紹介

　今日紹介する記事は『中国新聞網』の「中国各界续谴责日本举动 日本闹剧遭国际社会批评」です。普通ですと、最初に記事の翻訳をするところですが、長い記事ですし、今回紹介したいのは、記事の内容というより、中国の報道パターンなので、それがわかる形でかなり省略した形で紹介させていただきます。

１　概要

　日本政府が国有化したことに対し、中国の各分野から怒りの声が起こっているし、世界各地の華僑も中国を支持している。また、日本政府の一方的な行為は国際社会の注意を引き、多くの学者などが日本の行為を非難している。

２　中国の動き

　中国は国連に対し、釣魚島周辺の海図などを国連に提出し、受理された。また、「２０１２中国徐福文化象山国際大会」など民間の活動が中止になった。日本車や日本製家電の売り上げも落ちている。

　中国各分野から非難の声が上がっている。中国各民主党派は１５日に、中国文学芸術界連合会、中国作家協会は１４日に、中国科学協会は１５日にそれぞれ今回の国有化を非難する声明を出した。中国人民对外友好協会、中日友好協会も１５日に声明を出し、日本を非難した。

３　国際社会の批判

　韓国ソウル大学の日本研究所の所長の朴喆煕教授は、日本は右翼勢力が台頭しており、最後は痛い対価を支払うとしている。アメリカの米国の国際行動センターの国際問題専門家のベーカーは、日本の島を買うという行動は間違いで、挑発行為だとしている。「ロシアの声」ラジオ放送局のアジア部編集長は、中国が最初に釣魚島の記録がある国で、島購入は無効だとしている。

４　日本方面

　中国大使の西宫伸一は入院中で、日本は後任の大使の選定に入った。日本政府は島の購入が中日関係の緊張を招いたとして、対策を練っている。玄葉外務大臣は日本人の保護を中国に求めた。中国外交部スポークスマンは日本政府の中国領土への侵犯は許せないが、日本人が標的ではなく、中国は法治国家なので、在中日本人の安全は法により保証され、中国人の主張も法によってなされるべきとした。

５　華僑による抗議

　アメリカ東海岸のニューヨーク、フィラデルフィア、ワシントンＤＣ、シカゴ、南部のヒューストンとダラス、西海岸のシアトル、ポートランド、ロサンゼルス、サンディエゴ、他のもカナダバンクーバーとトロントなどの１０余りの主要な大都市で華僑による釣魚島を守る活動が行われた。

２　個人的感想

　如何にも典型的な中国の記事です。最初に記事の概要を持ってくる形をとるのは中国の全ての記事に共通なので、これは別にこの記事に特別なことではありません。

　ただ、次に中国国内の動きを持ってきて、中国の各分野では反対の声が起こっていること、そして世界各国の自分に都合の良い意見を持ってきて、世界の動きも中国に同調しているというパターンをとるのがいつもの記事の構成です。

　外国人から見れば、中国は共産党独裁なのだから、各分野から反対の声が挙がっていようがいまいが、同じことにしか見えませんが、国内の団結を示すためか、それともそれだけ中国国民が怒っているということを示すためか良くわかりませんが、こうした形をとるのが普通です。

　何度か書いておりますが、中国は結構外国の評判を気にします（中国人海外旅行客の買い物の評判、ノーベル賞授賞式欠席依頼と政策決定過程）。そして、良く使うのがその国の人（今回なら日本人）の中国に同調する意見をもってきます。

　おそらく、今回も中国側に都合の良い日本人の意見も探したのでしょうが、適当なものが無かったということでしょうか。

　世界各国に散らばっている華僑もよく動員されます。これも外国人にしてみれば、そんなことをしてどれだけの意味があるのかよくわかりませんが、世界各国でこうしたことが行われているという主張の一環とでも思えば良いのでしょうか。

　以前書きましたが（華僑を使った中国文化の紹介）、中国政府は華僑を積極的に動員しています。そのため、益々もって華僑が抗議運動をしたとしても中国政府からそういう働きかけがあったというだけでしかないわけですが、華僑にしてみれば愛国心が試される場で、結構たいへんそうです。

　だからこそ思うのは、日本は一国で中国に対抗するのではなく、他国と連携をとりつつ、事にあたるのが肝要だということです。差し当たり今回の反日デモなどで略奪の被害にあった他国と共同して中国を批判したり、今回の反日デモが如何にひどい様相を呈しているかを世界各国に知ってもらうのが一番手っ取り早いかと考えております。

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