１６日に８６歳で亡くなったアサヒビール名誉顧問、樋口広太郎さんの真骨頂は逆境に立ち向かうチャレンジ精神だった。住友銀行（現三井住友銀行）から、取引先で経営難に陥っていたアサヒビールの社長に自ら志願して転出。「前例がない、だからやる！」をモットーに、当時はなかった辛口ビールの「スーパードライ」を大ヒットさせ、名経営者の仲間入りした。

　住友銀行で副頭取まで上り詰めたが、融資をめぐって当時の実力者だった磯田一郎会長と衝突。転職先として銀行に用意された住友関連の社長ポストを蹴って、シェアが落ち込み、落日前の「夕日ビール」と陰口をたたかれていたアサヒを選んだ。

　８６年の社長就任後は、持ち前の行動力と革新的な手法で、アサヒの再建に取り組んだ。鮮度の落ちた古いビールが店頭に並んでいると聞き、問屋や販売店にある古いビールをすべて買い戻して捨て、新しいビールに切り替えた。仕入れの方法を見直し、浮いた資金を広告費や良い原料の買い付けに回した。