実に、発達障害専門医で「当事者」でもあるという著者により、発達障害「特性のツボ」と「生きるコツ」を多く描かれている、もっともお勧めしたい発達障害関連本の一つである。
この本の大変ユニークなところは、それは、著者が「卑屈頭」でなければ「猿鳥賊」でもない、という点に尽きることである。
※「猿鳥賊」定義(爆笑)http://blog.goo.ne.jp/tabby222/e/6968f627a504b9e93bb76e1f2d2f8a18
普通、発達障害専門医の書物は、発達障害は改善されない、治らない、・・・と続き、中には「実は、発達障害の特に自閉症スペクトラムのちりょ目標は「家事をする引きこもりなのですよ。」などと戦線放棄を公文書で宣言する輩も現れる。
この著者は、その「ギョーカイメジャー」的な解釈には明白に異議を唱えている。その姿勢に、私はまず心を打たれた。この本の中でも述べられている。世の中には活躍する当事者、社会的成功を収めた当事者が、いくらでもいるのである。現に、精神科医の当事者も(果たして全員がいい方向に機能しているかは別としても)、何人もいるのである。
「成功体験が治療薬」と、この医師はページを割いて書いている。これまた、著者以外の専門医が無視または発見できずにいるがよく知られている「発達障害の事実」である。
(57ページより引用) "発達障害の人たちは、うまくいった。できたという体験。またほめられる体験が少ないのです。小さなことでいいから成功体験を積み重ねていけば、自信をつけて、どんどんよい方向に回っています。大切なのは、診療に行って治療をすることではなく、そこでアドバイスを受けて、日常生活のなかで実践してみることです。診察に行ったらなんとかなるということではありません。アドバイスを実践するのは患者さんご本人です。"
治療薬がないが、対処法はあきらめない限りあるのである。「発達障害は発達する」のである。この本にも「特性の特徴」「対処法のヒント」「支援のヒント」が多く書かれている。
大変参考になる、重要な書物である。