「こころの健康」(愛知県精神保健福祉協会)47号 平成24年6月 の28ページに
吉川"特に自閉症スペクトラム障害の方の場合に目標になるのは、私は実は「家事をするひきこもり」だと思っています。" と、確かに書かれています。
愛知県では広く出回っている文章です。前半の山中康裕先生や牧真吉先生の議論はすばらしかったし、吉川徹先生のからんでいた後半部分も、大高一則先生や大村豊先生などが「セルフエスチーム」「エンパワーメント」ということを言っていたり、当事者たちの困難に満ちた人生の実情が語られたりする文脈の中での、高名な吉川徹先生のご発言でした。
自分もまた、主治医曰く「波乱万丈の人生ね」ですが、それでも十数年間ずっと正規雇用で働き続け、税金も納めてきましたし、経済活動も海外旅行とか盛んにやってきました。これからもこの特性ゆえ、要らぬ勘違いと誤解と差別偏見に囲まれた多くの困難を伴う人生であることはまちがいありません。波乱万丈で実に独特のエピソードに満ちた生きがいのある人生を歩むことができることを喜びに思います。
四半世紀前、登校拒否となり、「あなたは一生働けないでしょう」と、名古屋では有名な塾経営支援者から言い放たれたことを今でも覚えています。今も昔も自分も社会も家族も問題だらけですが、自分以外が変化するのを待っているうちに爺になってしまうと考え、人生に前向きな支援をして下さる支援者とつながって、大検取って大学卒業して、「モダンタイムス」の如き社会の歯車として機能し続け、社会が悪いからニートになるしかないのだという支援者たちの期待を大いに裏切ってきました。
今、社内環境の悪化により再び二次障害が発生し、治療過程で心ある医療関係者がよく観察してくれて、高機能自閉症という診断が下りました。しっかり二次障害だけは直して、三次障害に警戒して、心理教育も受けて、障害者であることを素直に認めて、力みすぎることもなく、社会に戻ります。
会社に今日、復帰を明白に目指しているという意思表示をしました。戻るべき会社はいまだに女性社員の寿退職が当たり前のようにあるような場所。精神科がらみで休職した社員の復職事例も少ない。だからこそ、私の件で障害者雇用を認めさせようともくろんでいます。周りの空気を読めない、共感性の乏しい自閉症スペクトラム障害者だからこそできる、特攻出撃です。
社会に出て生きるということ。人間らしい苦労をするということ。この当たり前のノーマライゼーションを仲間たちとしっかりと成し遂げていこうと思います。
発達の凸凹で滅茶苦茶な人生を歩んでいる私たちに、発達障害の専門家の先生もよくご存じの通りバカみたいに無駄な努力をして必死に生きている私たちに、よくぞ究極の言葉を文章化して表明していただけました。この最も屈辱的な言葉をよく味わい、今後もこの生涯が終わるときまで人間としての態度を発揮しつつ、徹底的に期待に添わない存在でいつづけていようではないか。
われわれ当事者の渾身の思いと行いに対して「特に自閉症スペクトラム障害の方の場合に目標になるのは、私は実は「家事をするひきこもり」だと思っています。」と表明して下さる権威者が現に存在するからこそ、フランクルの言うところの「それでも人生に"イエス"という」という強烈な反骨精神が生ずるのではないかとひしひとと思いました。
自閉症スペクトラム当事者に必要なのは、自分の人生を生きる態度です。
トラックバック
- この記事のトラックバック Ping-URL
ブログ作成者から承認されるまでトラックバックは反映されません。
- 30日以上前の記事に対するトラックバックは受け取らないよう設定されております。
- 送信元の記事内容が半角英数のみのトラックバックは受け取らないよう設定されております。
- このブログへのリンクがない記事からのトラックバックは受け取らないよう設定されております。
- ※ブログ管理者のみ、編集画面で設定の変更が可能です。