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地球発

2011年4月9日朝日新聞夕刊紙面より
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ブームに乗って他社も一斉に増産し、間もなく生産過剰に陥る。「何とか次の商品を」と目をつけたのがパンストだった。「履くのが簡単で女性は喜ぶ。余計に糸を使うから原料メーカーが喜ぶ。新たな機械が必要だから機械メーカーも喜ぶ。こういうのがいい発明なんだ」と堀さんはご満悦だったという。

生地の寸法など基準がなく手探りで、男性社員も試作品を身につけ履き心地を確かめた。68年に1足400円で発売。100円前後のシームレスに比べ高価だったせいもあり、市場の反応は鈍かった。

火がついたのは69年後半。発売初年に50万足だった生産量が、翌69年には16倍にはね上がった。業界全体でも70年には2億足に迫った。数年前から始まったミニスカートの流行が追い風となった。

一方で、パンストがミニブームを支えたともいえる。従来のストッキングではどことなく不安で、冬は寒い。社会学者の天野正子さんは「窮屈さと不便さに無縁のパンストは、まさにそういう欠点を解消してくれるものだった」と自著で分析した。

だが、そのパンスト景気も長くは続かない。72年には早くも供給過剰になり、79年に登場したのが「たるまない」サポートタイプ。静脈瘤(じょうみゃくりゅう)を防ぐ米国の医療用靴下がヒントになった。伸縮性のあるポリウレタンにナイロンを巻き付けた糸を使い、90年ごろには主流に。さらに脚の部位によってひきしめ度合いを変えた商品も開発されるなど、パンストは今も進化を続けている。

(大庭牧子)

証言

パンスト縫製機を開発したタカトリ会長・高鳥王昌(おうしょう)さん

◆隙間狙った機械、世界へ販売

昭和43年にシームレスストッキングのつま先を自動で縫う機械を開発し、あっという間に500台売れました。次にきたのがパンスト。パンティー部分を縫ってゴム付けまでする新しい機械が必要と思いました。

といっても、需要は全世界でせいぜい5千台。大手さんはやらないし、技術のないところは手が出せません。うちが力を発揮できるところです。胴部分から足先まで長い筒状に編んだ2本の生地を棒に差して上部を切り開き、股の部分を縫い、つま先を丸く縫う。この機械を使えば作業者1人で1分間に5足(その後改良して10足)できます。「ラインクローザー」と名付け、国内はもちろん約60カ国に販売しました。

新潟生まれの私は両親と満州(中国東北部)に渡りましたが、母と生き別れ、父に死なれて1人で帰国。12歳から大阪のメリヤス機械工場で働きました。復員後、奈良で独立したのが25歳の時です。最初に作ったのは特産の吉野葛を作る粉砕機。昭和天皇の行幸のときお目にかけることができ、一挙に注文がきた。

以来、世間にない、よそが作らない物を作ろうとしてきました。ストッキングも編み機は他社も作っているから、その前後、隙間をねらったのです。今はパンスト機械は作っていません。現在のうちの事業の主力は、シリコンなどハイテク素材の加工機械です。

(更新日:2012年09月10日)

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