日馬富士(左)が下手投げで臥牙丸を下す=両国国技館で
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◇秋場所<8日目>
綱とりに挑む大関日馬富士(28)=伊勢ケ浜=は新関脇妙義龍を首投げで下し、8戦全勝とした。横綱白鵬(27)=宮城野=も豊ノ島を寄り切って全勝を守り、朝青龍を抜いて単独2位となる24度目のストレート給金(1場所15日制定着以降)を決めた。妙義龍は6勝2敗。
大関稀勢の里は松鳳山を上手投げで退け、8連勝。平幕の旭天鵬は高見山に並ぶ史上8位、外国出身最多の通算812勝目を挙げて勝ち越した。高安も無敗を守った。8日目を終えて5人の全勝は、6人が勝ちっ放しだった1989年春場所以来。大関鶴竜と平幕隠岐の海が1敗で追う。
何という反射神経だろうか。日馬富士が絶体絶命のピンチを乗り越え、逆転の首投げで妙義龍を転がし、中日での全勝ターンを決めた。
立ち合い、勢いよく前へ出たのは妙義龍だった。日馬富士は深く両腕をねじ込まれ、大きく後退。しかし瞬時に右腕で相手の首を抱えながら、相手が出てくる勢いも利用し、進境著しい新関脇を仕留めた。
「立ち合いから自分のイメージ通り取れなかった。首投げはタイミングがありますから。とっさに体が反応した」
これで夏場所千秋楽から始まった連勝は「24」まで伸び、師匠の伊勢ケ浜親方(元横綱旭富士)が大関から横綱昇進時に記録した連勝記録と並んだ。「ずっと勝ち続けてほしいね。これから筋肉をつけていけばもっと強くなる」と同親方。日馬富士は「一日一番ですから」といつものセリフで平常心を強調、「負けがないというのは気持ちいい」と語気を強めた。
くしくも16日は12年前、日馬富士が初来日した日。当時関西空港に降り立った少年は新幹線で東京へ。道中何も買えず、空腹のまま部屋までやってきた。
「腹が減ってると言うのですぐすしを食べさせたよ。自分の子どもと一緒でかわいいもんです」と伊勢ケ浜親方。日馬富士も「そうなんですよ。思い出します。(記念の日に勝てて)うれしいですね」。綱とりへ気を緩められない毎日が続くが、この時ばかりは目を細め、わずかに感傷に浸った。 (竹尾和久)
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