P-NAINはどこを攻撃しているのか(2)   -光線の深達度を測定する-

 

高橋知之、高橋貴志  (渋谷高橋医院)

P-NAINが登載している冷却装置は皮膚表面の温度をマイナスにまでコントロールできるので皮膚表面はヤケドしませんし、皮膚表面に近い皮脂腺開口部附近を破壊することはありません。
またP-NAINのフラッシュ光線は、レーザー光線と違って拡散するために皮下組織にある毛乳頭を破壊することもありません。
皮脂腺開口部と毛乳頭の中間にある膨大部附近を選択的に加温して、そこにある幹細胞の機能を停止させます。
これは今までの脱毛理論とは相当に異なりますので、選択的温熱脱毛法(Selective Hyperthermic Epilation)と名付けさせていただきたいとおもいます。
選択的温熱脱毛法は、行なうにあたって医師の医学的判断および技術は不要です。
LightSheerでは条件さえ揃えば毛乳頭は破壊されますが、その場合もゆっくりと施術さえすれば医師の医学的判断および技術を必要とせずに脱毛施術を行なうことができるのは勿論のことです。

これは
P-NAINはどこを攻撃しているのか(1)というページの結論ですが、この結論はP-NAINを使って経験的にヤケドを起こさずに永久脱毛できているという事実と科学的推論からのものです。正しい結論であるとの自信はありますが、推論でしかないと言われればそのとおりです。

そこで実際に皮膚の温度を測定してみることにしました。
私どもの永久脱毛理論は一言で言えば「押す・拭く・ジェル」という言葉に尽きますが、それには皮膚をヤケドから守る冷却装置が必須です。皮膚冷却装置が登載された脱毛機の代表選手は私が愛して止まないLumenis社のLightSheerであり、今なおレーザー脱毛機のゴールドスタンダードとして君臨しています。
冷却装置が安全を左右するのであれば、その設定温度は施術中に安定していなければなりません。LightSheerは他の機械に比べて効果は優れておりヤケドは少ないですが、それでも色黒の人や高出力での照射ではヤケドが起きることがあります。
LightSheerのハンドピース先端温度は +5℃に固定されているのですが、暖かい皮膚に接触させて照射するので皮膚表面温度もハンドピースと同じ温度が保たれるわけではありません。ヤケドの原因は、こちらで証明したように冷却能力が照射による皮膚温上昇に追いついていかないということだと分かっています。

これはそのページ内で説明しているLightSheerでの連続照射ビデオから皮膚表面温度の変化をグラフに示したものですが照射直前には7℃くらいであったものが直に42℃にまで上昇しているのが分かります。そして照射を少し休むと23℃くらいにまで下がっています。

これはこちらのページで説明しているP-NAIN連続照射ビデオから読み取った皮膚表面温度の変化です。ハンドピース先端の温度は +1℃に設定してあるのですが、皮膚表面温度は8℃から14℃の間を規則正しく変化しています。これが常に再現できるのならばヤケドすることはないはずです。
こういった実験から皮膚表面温度は上昇しないということは分かっていたのですが、
選択的温熱脱毛法(Selective Hyperthermic Epilation)のターゲットである皮膚表面から2o下の温度はどうなのでしょうか? あるいは毛乳頭がある3o下の温度はどうなのでしょうか?

それをお示しするのがこのページの目的です。
←クリックしてください
推論ではなく実際に皮膚に温度センサーを埋めこんで実験を行ないました。この写真をクリックしてください。埋めこみ手術の様子を撮影したビデオです。単調な照射ですので2倍速に早めて編集してあります。(被験者は私です。誰も希望者がいなかったので・・・)
さて、このようにして皮膚表面から1o、2o、3oのところにセンサーを置きました。1oというのは皮脂腺開口部付近よりも少し下、2oは私どもが永久脱毛のターゲットであると考えている膨大部付近、3oは毛乳頭付近と考えてください。
まずLightSheerとP-NAINそれぞれを皮膚に押しつけて温度の変化を調べました。
機械設定はLightSheer、P-NAINともに出力が30ジュール、パルス幅が30ミリ秒で、冷却装置の温度はLightSheerでは +5℃でP-NAINでは –5℃にしました。
こちらがその実験の様子です。押しつけて2秒後に照射して、そのまましばらく観察しました。

これはLightSheerの温度変化です。
紺色の線がハンドピースに取りつけたセンサーの温度で、皮膚表面の温度です。
紫色が皮膚表面から1oにあるセンサー温度で、皮脂腺開口部よりも少し下の温度と考えていただければとおもいます。
黄色は皮膚表面から2oにあるセンサー温度で、私どもが考えるターゲットである膨大部附近の温度です。
水色は皮膚表面から3oにあるセンサー温度で、毛乳頭附近の温度です。

グラフを見ると、ハンドピースを皮膚に接触させたときの温度は +6℃で、1秒後には +20℃になっていますので14℃上昇したことになります。
照射直前には +30℃にも上がっていますが、皮内の温度は +35℃で全く変化がありません。皮膚表面の温度は冷却装置に影響を受けるけれども真皮内は暖かい血液が循環しているので冷却装置の影響を受けないのでしょう。
照射直後にターゲットである2o下(黄色)の温度は +70〜65℃まで上がり、そして毛乳頭付近では +120℃近くまで上がっています。
また、1o下は +65℃まで上がり、約1秒間も持続しています。そしてその間の皮膚表面温度は約 +40℃にもなっており、これはヤケドする寸前とも言えます。

こちらはP-NAINの温度変化です。
ハンドピースを皮膚に接触させたときの温度は –5℃、1秒後は +2℃になっていますので7℃の上昇です。LightSheerは14℃上昇したので、P-NAINの冷却装置のほうの容量が大きいということが分かります。P-NAINはLightSheerよりも確実により強力に皮膚を冷却していますが皮内の温度は +35℃でLightSheerと同じですから、皮膚をより強力に冷やしても脱毛施術に悪影響を及ぼさないことが分かります。
私は、以前は、皮膚表面を冷やしすぎると脱毛効果は減弱するのではないかと漠然と考えていましたのでそのような考えで書いたものがあります。例えばこちらで、今となっては訂正したほうがよいようです・・・。
さて、ターゲットであるところの皮膚表面から2oの温度ですが、黄色の線ですが、+60℃まで上昇していますので温度上昇は十分だと言えます。興味深いのは、LightSheerでは +120℃まで上昇した皮膚表面から3oの水色の線が +43℃くらいにしか上がっていないということです。また、皮膚表面から1oの紫色の線はほとんど上昇が見られていません。皮膚表面でさえ +30℃以下です。
実際、痛みもP-NAINのほうが遥かに少なかったです。
これが私どもの言うところの選択的温熱脱毛法(Selective Hyperthermic Epilation)なのです。

冒頭で述べた
P-NAINはどこを攻撃しているのか(1)というページの推論による結論のうち、以下のことはこの実験で証明できたようです。
1)
P-NAINが登載している冷却装置は皮膚表面の温度をマイナスにまでコントロールできるので皮膚表面はヤケドしませんし、皮膚表面に近い皮脂腺開口部附近を破壊することはない。
2) P-NAINのフラッシュ光線は、レーザー光線と違って拡散するために皮下組織にある毛乳頭を破壊することもない。
3) 皮脂腺開口部と毛乳頭の中間にある膨大部附近を選択的に加温する。
そして今回判ったこととして、
4) LightSheerは毛乳頭付近の温度を相当に上げ、また皮脂腺開口部付近の温度を膨大部付近と同程度まで上げる。よって、より確実な効果が期待できるが、同時に皮膚表面温度もヤケドの臨界値近くにまで達するのでリスクが大きいと言わざるをえない。

以上です。

2007年8月18日
本文をコピーされる場合、引用される場合は必ず御連絡ください。
連絡先:東京都渋谷区神南1−12−16  渋谷高橋医院
      E-mail: takahashi@clinic.ac


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