魔法少女リリカルなのはStrikerS 術式を潰す少年 (粉バナナ)
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更新が遅れて申し訳ありません。水曜から忙しく、執筆出来ませんでした。
今回はなんとなのフェイの過去話。どっちかというとフェイなのですかね。
それで今回は過去話の時、フェイトの一人称になっております。なのでもしよろければなのフェイの感想と、これから過去話をする時に一人称にして良いかどうかを書いてもらえば嬉しいです。
なるべく甘く出来たと思います。
番外編 ファーストキス
「なのはママとフェイトパパの初めてのキスっていつ?」
「・・・・えっと、なんでそんな事聞くの?」
「お兄ちゃんとキスしたから、ママ達はどうなのかなって」
次の瞬間なのはとフェイトの手が、サンの襟を掴み僅か数秒の間だが息をとめた。
「なるほど、はやてが」
「なんだ頬か~。良かったねヴィヴィオ」
頬にする軽いキスだと分かったら、二人の怒りは急に解け、ヴィヴィオの頭を優しく撫でる。
「・・・・人の首絞めておいて謝りもしないのか」
「にゃはは、ゴメンゴメン。まあ良かったよ。もし本当にキスしてたらと思うと・・・・」
「それはもう見せられない姿に・・・・」
「いや! 俺も二人の息子だから!」
ヴィヴィオが二人の娘になってから、ここ最近サンへの対応が冷たい気がする。そう言えば年下の兄弟が出来ると、兄や姉に構う時間が少なくなると聞いた事があるが、それと同じ現象なのかもしれない。
確かに可愛い娘のファーストキスを奪おうとした男を、許したくない気持ちは分かる。実際サンも、二人の立場になったら許さない筈だ。だが、サンも二人の息子。今回に非があるのは認めるが、これがこのまま続いたら、小さいうちから反抗期に突入するかもしれない。
「冗談だよ。サンも私となのはの大切な子供なんだから」
「サンが大人っぽいからついイタズラしたくなるんだよ。それに私達にキスしてくれないから、嫉妬しちゃった」
フェイトにギュッと抱きしめられ、なのはに頭を撫でられると、怒りも悲しみも消えて、許したくなってしまう。
「絶対はぐらかされてる・・・・」
「まあまあ」
「ねえママ、それよりも~」
なのはの肩をユサユサと揺らすヴィヴィオに、二人は宥めて話すかどうか悩む。別にヴィヴィオの教育上悪い話ではないが、単純に話すのが恥ずかしい。
「まあ良いんじゃないかな?」
「そんな事言うならフェイトちゃんが話してよ」
「ええ!? ま、まあ良いけど、その時のなのはの心境は分からないからね」
私となのはのファーストキスは、デートの終りとか、放課後の教室とか、帰り道の公園とかじゃなくて、劇のクライマックスだったんだ。
私達が四年生の頃の10月の後半。学園祭の出し物を決めていた時だったかな。
「それじゃあ劇の配役を決めたいと思います。で、その前に、前々からやっていた推薦で王子様役が決まっています」
【おー!】【えー!】
私の昔の友達のアリサ。彼女がクラスの学級委員長で、みんなを纏めていたんだ。
相変わらずアリサは元気だな。それにしても王子様役って誰だろ? お姫様ならなのはしか適役がいないと思うけど。
何だか隣にいるはやてがニヤニヤとこっちを見てくる。
「王子様役は、フェイト・テスタロッサ・ハラオウンさんです」
「え、えぇぇぇえ!? わ、私!?」
このクラスに私と同じ名前の人はいない。絶対に私だ。
周りのみんなも私のこと見てるから聞き間違いでも無いんだろう。さっきまで王子様役を狙っていた男の子たちも、急に納得したような表情になってるし・・・・。
いやいやいや、絶対に無理だ。自分でも分かってる。私は人の前で話したりするのは苦手だ。
「アリサ、む、無理だよ! 演劇なんて!」
「シャラップ! ぶっちぎりの投票数なんだから文句は言わない。もう決定したから変更は無しよ! 前のホームルームの時に話してたでしょ」
「で、でもでも」
劇なんて絶対に無理だ! 絶対にあがってしまう自信がある。いや、自信って言わないけど・・・・。
「なあフェイトちゃん」
「・・・・何、はやて・・・・?」
「落ち込んでるフェイトちゃんに極秘情報。この物語の最後、王子様とお姫様のキスで終わるんよ」
その瞬間私は席を立っていた。ガタンと大きな音に、黒板に書かれている王子様役の下に私の名前を書いているアリサが気付いた。
今はお姫様役を決めている時。まさに絶好のチャンス。
「ん? フェイト、姫役の推薦ある?」
「あ、あの・・・・。なのはっ・・・・。た、高町さんを指名します!」
「・・・・ふぇ? ふぇぇぇぇぇぇ!?」
斜めとなり前にいるなのはの、可愛らしい声が印象的な時だった。
「あっはっは! いや~、まさかあそこまで効果てきめんとはな~」
「フェイトちゃんとなのはちゃんはホントにラブラブだね」
「・・・・もう突っ込むのも諦めたくなるわ」
放課後、いつものメンバーで下校している最中も、劇の話題ばかりだった。劇というよりも、私となのはの話で、かなり恥ずかしい。
「ご、ごめん・・・・つい・・・・」
「あはは・・・・」
あれから何度も何度もなのはに謝って、なのはは怒っていないみたいだけど、本当に迷惑をかけてしまった。でも元々お姫様はなのは意外に考えられなかったし、物凄く恥ずかしい目にあったけど、これが一番良かったのかもしれない。
そんな事を考えながら謝ると、はやてがクスクスと大人っぽい笑い方をした。
「“つい”が出てまうのが最上級の愛情表現や」
「あうう・・・・」
なんだかさっきの事と言い、ほんとにはやてには口が勝てない。
はやての冷やかしに益々顔が赤くなっていく。もう勘弁してほしい・・・・。
隣にいるなのはも恥ずかしそうにしていた。
「でもフェイトちゃん。私がお姫様役なんて無理があるよ」
「そんな事ない絶対に似会う筈だよ! というかなのはが似会わなかったらこの世界、ううん、次元世界の人みんな似会わない!」
・・・・あれ? みんなどうしたんだろう? なんかアリサはため息をついてるし、はやてとすずかは微笑ましそうに笑うし、なのはは顔を俯かせるし。
私なんか変な事言った?
「あんた等は・・・・」
「なのはちゃん愛されてるね」
「次元世界なんてずいぶん大きく出たな~」
「その、フェイトちゃん。嬉しいけど、ちょっと大げさ、っていうか・・・・」
なのはは俯かせていた顔をちょっとだけ上げ、途切れ途切れになってそう言った。
なのはの人の目を見て話す癖のおかげで、頬を染めながら上目使いのなのはを見る事が出来た。その余りの可愛さに周りの声が聞こえなく、しばらくなのはの顔をボーと見つめる。
毎年毎月毎日毎時毎分毎秒。いつも思っているが、やはりなのはは可愛い。
青く澄んだ大きな瞳。白い雪のように滑らかな肌。まるで作られたかのような、小さくてほっそりとした顔の構造。手や足はスラッとしていて、指は細く綺麗な作り。
そして上下の厚みが同一で輪郭もハッキリしている綺麗な唇。
「アイタ!?」
「ったくいい加減にしなさい! どうしてあんた達はすぐにそう自分の世界に行くの!」
ッツ―――~~~。最近アリサの突っ込みが容赦ない・・・・。
「まあまあアリサちゃん。二人とも劇の主役になったんだから嬉しいんだよ」
「それでみんなはこれからどうするん? アリサちゃんとすずかちゃんはお稽古?」
「そうなの。明日から劇の練習だから、これからしばらく遊べないわね」
「そっかー。私も裏方の細かな所があるからな~」
はやては舞台には出ずに、裏方のリーダーをする事になった。全体的な纏め役や、リハーサルまでの時間割り等々。はやて曰く「今の内に人を纏める事になれへんとな」らしい。
将来はやてはいったい何になるつもりなのだろう?
「じゃあ今日は解散だね」
「だね。頑張ってね、なのはちゃんフェイトちゃん、はやてちゃん」
「すずかもナレーターなんだから頑張って」
「また明日」
十字路に来ると私となのはは、三人と別れた。
二人っきりになると、なのはがチラリと私を見ていたので、微笑んで返す。
「ゴメンね、お姫様役にさせちゃって」
「ううん。私もお姫様に憧れていたから」
恥ずかしいのか、朱に染まった頬をポリポリとかいて、許してくれた。そう言ってもらえると私も助かる。
「ありがと」
「うん。フェイトちゃんはお姫様とか憧れないの?」
お姫様、か。昔リニスに読んでもらった本でそんな人がいるんだ、程度な感じだ。
それに・・・・。
「そうだね。リニスが読んでくれた本で知ってはいたけど、自分とは縁の無いものって思ってたから」
「そっか」
「それにね・・・・」
私が言葉を区切ると、なのははチョコンと首を傾げて私を見る。そんな可愛い姿に心の中でクスッと笑う。
その姿を見て改めて思った。
「私は、気付いた時にはもう白騎士(なのは)の腕の中にいたお姫様だったから」
「え?」
頭に浮かぶのは、最初で最後の本気の勝負をした時の事。絶望か希望か分からない破壊(スターライト)の光(ブレイカー)に呑み込まれ、気を失った私が次に見たのは心配するなのはの顔。
当時は何よりも母さんを優先していた、私の根底が揺らいだ。
それまでは興味も無かったなのはの青い瞳がすぐそばにあり、今より少し幼いなのはの綺麗な顔を、数十秒の間ずっと眺めていた。
「あの時は母さんの事もあって、頭がゴチャゴチャして混乱してたけど、今なら分かる。私はなのはに助けてもらって幸せにしてもらった」
「そ、そんな大層なことしてないよ。私はただ、フェイトちゃんと友達になりたくて」
「なのはの“ただ”で私は今の私になれた」
真面目な表情で、なのはの青く澄んだ瞳を見つめながら、私は自分の気持ちを伝えた。それでもなのはには大げさに聞こえるのか、彼女独特の「にゃはは」と笑っている。
ぅぅ・・・・。すっごく真面目に話してるのに。で、でも私の伝えたい事を言うチャンスは今だ。
スッとなのはの手を握り締め、なのはの顔がより近くになるように移動する。
「だからあの時の白騎士(なのは)の様に、今度は私が騎士になってお姫様(なのは)を守って、幸せにしたい」
「フェイト・・・・ちゃん・・・・」
「これからもずっと一緒にいよう・・・・」
「まあ、なのはがお姫様でフェイトちゃんが騎士様」
「そうなの。フェイトちゃんは多数決で、私はフェイトちゃん直々の推薦で」
桃子さんは手をパンと当てて、学園祭の劇の事で喜んでいた。
そんな風に喜んでくれるのは、主役をする私としては凄く嬉しい。それに桃子さんの笑顔を見ていると、まるで将来のなのはの笑顔を見ているようで、心がポカポカと温まる。
「にゃはは、成り行きなんだけどね」
「成り行きでもいいわよ。頑張ってね、なのは、フェイトちゃん」
「うん」「はい」
私は今日高町家にお泊りする事になった。せっかくさっき、これからも一緒にいようと言ったばかりなのに、なのはと別れるのは嫌だった。それはなのはも同じだったらしく、なのはの方から「家に泊らない?」と言ってくれたのだ。
それに、なのはの家族に劇の事を報告したかったので丁度良かった。勿論高町家に来る前に、母さん、アルフ、クロノ、エイミィには伝えた。
我が家も高町家も、私達が主役になった事に大喜びで、母さん、クロノ、エイミィは伝えてすぐに学園祭当日に有給を使う事に決めていた。翠屋と士郎さんが監督を務めるサッカーチームも、伝えて一秒で文化祭当日の休みが決定した。
「なのはがお姫様でフェイトちゃんが黒騎士か。バリアジャケット的にもピッタシだな」
「それに題名も黒騎士物語で、フェイトちゃんのイメージカラーだし」
恭也さんと美由紀さんが、原作となった本をパラパラと読みながら呟く。なのはの事になると人格が変わる程過保護になる恭也さんにそう言って貰えると、なのはの騎士役としてはとても嬉しい。
「なのは、美由紀。もうそろそろ士郎さんも帰ってくるから、ご飯並べてくれる?」
「「は~い」」
士郎さんが帰ってきて桃子さんの料理を堪能した後、私となのははは、なのはの部屋にいた。
私達はベッドを背もたれにして隣り合って座り、原作の本を一緒に読んでいた。クラスのみんなが話の内容が分かるようにと、ページは短く描写は簡単にしてある文だったので、国語が苦手な私でもスラスラと読む事が出来た。
時折なのはの体温や吐息に集中力が乱れながらも、約一時間半で読破する事が出来た。
「・・・・何だか、私達にちょっと似てた話だったね」
「うん。黒騎士は国の王様に縛られて、使命を背負わされて。ある時お城の庭でお転婆のお姫様に出会って」
「最初黒騎士はお姫様の言葉に耳を傾けないで。でもだんだんと心が揺らいで」
「それまで王様に縛られていた黒騎士だけど、お姫様の頑張りで解放されて」
「最後、黒騎士はお姫様に心を捧げて、お姫様も黒騎士に心を捧げて」
昔の私達の出会いに少し似ており、この二人にどこか重なった。
「頑張って、演じようね」
「うん」
それから授業、休み時間、放課後、家で、本格的に劇の練習をした。学校では主に舞台のセットや台本の細かな所、衣装合わせがメインで、実際に劇の練習をするのは家がメインだった。あれから私となのはは、毎日どちらかの家に泊まり合い、寝る前まで劇の練習をした。最初は台詞を言うだけでも恥ずかしかったが、二三日経つと感情を込めて、叫ぶ事も出来た。
本格的に台本が出来たのは、配役が決まってから一週間後の頃。
台本を書くのはクラスの男の子とすずかが担当していて、その男の子が私となのはに台本を渡してくれた。
「どう? 高町さん、ハラオウンさん」
「いいと思うよ。大事な所はしっかり載せてあるから、劇の時間内に収まると思うし」
「私もなのはと同じ。細かい台詞とかはこれからの練習で変えていくとして、大まかな流れは完ぺきだと思うよ」
なのはが微笑むと、男の子は顔を真っ赤にしてプイっと背けた。
うん、やっぱりなのはの微笑みは凄く可愛いよね。というか、なのはを可愛いと思わない人はこの世にいるんだろうか?
・・・・ッハ! い、いけない。なのはの可愛さも大事だが、今はそれよりも書いてくれた台本に集中しないと。
「やっぱり展開が早いから、ナレーションが重要になると思うって、月村さんは言ってたけど」
「確かに。この話は結構有名だけど、100人が100人知ってるとは言えないから。まあこれも後々やっていこう」
台本が完成しセットも半分は出来てきたので、それからはセットや衣装を作るのに並行して実際に劇をして練習する事にした。
一週間練習し、物語に大事な台詞は覚えてるし、熱を入れて演技をする事も出来る。実際私達の演技に、みんな茫然としていたし、結構いい線行っていたのだろう。
その反応に、私はなのはとクスリと微笑み合った。
そしてあっという間に文化祭当日。
体育館には私達の劇を見ようと、生徒と保護者で一杯になっていた。
元々人前で目立つのが苦手なのに加え、一人で演じるシーンもある。そう思うと足に力が入らず、足元がふら付いてしまう。
「危ないよ、フェイトちゃん」
ふと耳元で優しい声が聞こえ、ようやく我に返った。どうやら私は壁に頭をぶつけそうになっていたそうだ。
あ、危ない危ない。そう言えば今兜をしてるんだった。ぶつけてたら壊れていたかもしれない・・・・。
「ご、ごめんねなのは」
兜を取って謝ると、なのはがクスッと大人っぽく微笑んだ。
「フェイトちゃんは私の騎士なんだよね?」
「ふぇ? う、うん」
「でも今から私は高町なのはじゃなくて、お転婆なお姫様になっちゃいます」
えっと・・・・、なのはは何を伝えたいんだろう?
「なのはにはフェイトちゃんが騎士だけど、お転婆お姫様の騎士はフェイトちゃんじゃないの」
ああ、やっと分かった。
物語のお姫様には私じゃなくて、黒騎士が必要なんだ。だから物語の間、私のお姫様がいなくなる間、私も消えなきゃいけないんだ。
物語の黒騎士はクールで、どんな偉い人の前でもたくさんの人の前でも緊張したりしない。
「うん。ありがとう、なのは」
「にゃはは、お姫様だって騎士を助けたりするんだよ? 物語みたいに」
やっぱりまだまだなのはに守ってもらってばっかりだな。でもいつかはお姫様(なのは)に相応しい騎士になりたい。
それにはまず目の前の劇を、黒騎士となって演じる事だ。
私は心を落ち着かせてくれたなのはに、感謝の気持ちを込めて手をギュッと握った。
しばらくその状態でなのはと見つめ合っていると、頭に衝撃が走った。
「「イタッ!?」」
「あんた達は~っ! 劇が始まる前くらいイチャイチャするのを自重できんのかい!」
「まあまあアリサちゃん。この二人なりの劇前の調整みたいのもんやろうから、許してやり。な?」
ハァーハァーと荒い息を吐きながら、私達を叩いた丸めた台本を振り回すアリサを、はやてが何度も宥める。
その光景に、私を含めたみんなの緊張が解け、みんなゆとりを持った状態で劇に入る事が出来た。
「あれ? あなたはお父様の所にいた騎士様?」
「・・・・私には近寄らない方がいいです。あなたの白のドレスに、斬ってきた者の血がつく」
「どうしてあなたはそんな悲しい目をしてるの?」
「ッツ! 私は逃れられないんだ! あなたの父、国王から縛られてるんだ!」
「お父様! どうして騎士様を苦しめるの!?」
「ありがとう・・・・。あなたのおかげで私は本当の私を始める事が出来た」
物語はついにフィナーレ。私達がこの物語に共感する、一番の場所。
悲しい事もありながらも、最後の最後で二人はこうして気持ちを伝え合い、ダンスを踊っていた。
物語が進むにつれ、黒騎士の中にフェイト・テスタロッサが戻ってきた。
あの時の感覚。
言葉では表せない感情が黒騎士の中から浮かんできた。
「名前を呼んでください。あなたとか姫とかじゃなくて、私の名前を・・・・」
本来ならここで姫の名前を言うところだが、なのはは口ごもって台詞を言わない。
その仕草で私の中で黒騎士が消えた。
「なのは・・・・」
「ッツ! フェ、フェイト、ちゃん・・・・」
周りの音が何も聞こえない。何も見えない。
私が見えるのは青く澄んだ瞳と小さな唇。
私が聞こえるのは天使のような可愛い声。
「なのは」
「フェイトちゃん」
「なのは!」
「フェイトちゃん!」
あの時の感情が一年の時を越え、再び私の中に現れた。それはなのはも同じ。
私達はダンスを止め、ギュッと抱きしめ合う。あの時と同じように、なのはの瞳に浮かぶ涙を拭う。
「なのは・・・・。私の決意、もう一度聞いてくれる?」
「・・・・うん! うん、うん!」
「あの時はなのはに助けてもらった。その事は一生忘れないし、私の魂が消えるまで忘れない。だから今度は、私が姫(なのは)の騎士になって、これからずっと姫(なのは)を守り、幸せにしたい」
「うん・・・・」
私の心からの言葉に、なのはは涙を流しながら頷いてくれる。
「私でよければ、私でいいなら、なのはの騎士になってもいいですか?」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
抱き合っていた私達はゆっくりと離れ、徐々に顔を近づけていく。私は少しだけ背を縮め、自分の唇をなのはの唇に近付ける。
なのはの唇との距離が僅か数センチの時、劇中でのキスは唇同士を当ててはいけない事を思いだした。
でもフェイト・テスタロッサ・ハラオウンはもう止められない。
その時私は初めて、なのはの唇の柔らかさを知った。
「・・・・高町さん、ハラオウンさん、何か言う事は・・・・?」
「「す、すいませんでした!」」
今私となのはは、教室の床に正座させられていた。優しい先生がここまで怒るのは、私となのはは勿論、クラスのみんなも見たこと無く、かなり怖かった。
まああんな事をした後は当然こういう状態にもなるわけで。
結果から言うと、劇は成功した・・・・みたい。
恥ずかしい話し、元々私となのははバカップルと言う事で有名だったらしく、保護者の人もそれを結構知っていたみたい。ただバカップルと言われる理由が分からないんだけど。
それにしても聖祥に、ドラマみたいに厳しい保護者がいなくて本当に良かった・・・・。
「まったくあなた達は! そもそもですね――――」
そしてまた始まる先生の説教。もう何だかんだで一時間以上説教が続いている。
いい加減に長すぎなのか、はやてとすずかが止めに入ってくれた。
「先生。なのはちゃんとフェイトちゃんは運命の相手みたいなもんですから。許してやって下さい」
「八、八神さん。しかし二人の行動であなた達に迷惑が」
「大丈夫ですよ先生。私達みんな、なのはちゃんとフェイトちゃんが恋人になる現場を見られて、とても満足なんですよ」
「「え? 恋人?」」
【はい?】
え? え? 私となのはが恋人?
え・・・・っと、どうしてそうなるのかな?
「私とフェイトちゃんは恋人じゃなくて、大の友達だよ。ね? フェイトちゃん」
「うん。なのははずっと大切な友達だよ」
私達が微笑み合いながらそう言うと、先生も含めたクラス全員が頭を抱えて教室からぞろぞろと出て行った。残ったのははやて、アリサ、すずかのいつものメンバー。
「あ、あんた達は・・・・」
「流石にその返事は私も予想外だったな・・・・」
「あはははは! ほんま二人は面白いな~。いや~、将来仕事場で笑いを取る時に是非使わせてもらうな」
拳を震わせて何かを堪えるようにするアリサ。
珍しく頬をピクピクと動かして呆れているすずか。
普段はお母さんのはやては、年相応に笑いながらも、子供らしからぬ事を言った。
「これが私となのはのファーストキス。ヴィヴィオにはちょっと難しかったかな?」
「うん」
途中からヴィヴィオが首を傾げていたので、フェイトはザックリとなるべく分かりやすい単語を使い説明していた。ヴィヴィオはアリサとすずかに会った事が無いし、学校にも行った事が無いので分かりにくかったのだろう。
「アリサさんとすずかさんも大変だったんだ。はやてさんは相変わらずお母さんだけど」
「今思えばほんと凄いファーストキスだったな。懐かしいや」
「だね。結局フェイトちゃんと恋人同士になったのは、私が怪我する前だったね。キスしても一年くらいは友達同士だったから」
それを聞いて「ハハハ・・・・」と無気力に笑うサン。つまりそれから一年間、友達同士と言いながらイチャイチャして登校していたのだろう。
流石我が両親、とため息をつきながら思った。サンは前世の記憶があるおかげか、五年前以降のなのはとフェイトの事を知っていたが、産まれる前はもっと二人のバカップルだったみたいだ。
アリサとすずかが苦労する訳だろう。
「前からママとパパは仲良かったんだ~」
「そうだよ。ヴィヴィオとサンの仲の良さにちょっと似てるかな?」
「そうかな? どっちかって言うと、はやてちゃんとヴィータちゃんに似てる気がするけど」
誰と誰の仲の良さに似てようが、大好きなサンと仲が良いと言われるだけで嬉しかった。なのはとフェイトの話し合いの最中に、フェイトの腕の中から出たヴィヴィオは、サンにギュッと抱きついた。
「うわっ?」
驚きながらもサンはヴィヴィオを優しく抱きしめた。その光景を見ていたなのはとフェイトは、クスッと微笑み合い、サンとヴィヴィオを包み込むように抱きしめた。
今回一人称を書いてハッキリと分かる事は、描写を書きやすい場所が微妙に違いますね。それと三人称だと短い話でそのキャラに感情を入れるのは、難しい気がしますけど、一人称だと結構スムーズに入れる気がする(あくまで個人的)
ただあくまでフェイト視点ですので、その他のキャラの心境などがいささか伝わりにくい(特に重要ななのは)
話は変わってファーストキスですが、結構考えました。まあある程度絞られており、屋上or文化祭とある程度絞れていたので後者にしました。
せっかくmovie1stをなの破産してまで買ったので、所々台詞を入れたかったのが大きいです。
ストーリーが本格化してからは難しいかもしれませんが、所々番外編としてなのフェイの話を書きたいとは思っているので、もし案などがあれば言ってください^^
それでは次回もがんばります。
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