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尖閣問題、日本はもう日米同盟に頼れない

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2012/8/30 7:00
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 だが中国の軍事的な台頭によって、そんな時代は完全に終わりを告げた。中国は自らを米国と対等もしくは(当然)対等になるべき大国と見ている。実際、経済面では米国の競争相手であると同時に戦略的パートナーにもなった。競争相手としては、中国経済への統合が進み、依存度を高めるアジアの二番手国(なかでも重要なのは台湾、日本、オーストラリア)がそれぞれの国益をふまえて、米中双方にどれほど傾倒しているか、という観点が特に重要だ。中国は国防の面でも戦略的に国益を確保・増進するため軍事力を増強してきた。もはや中国は、米国の戦略的支配を北東アジアに秩序を確保するための当然かつ好ましい手段として受け入れるつもりはない。

 米国が中国と勢力を分け合おうとしなければ、というより東アジアにおいて強固かつ排他的支配を断固維持しようとすれば、中国との軍事対立は不可避とはいえないまでも、その危険は大いに高まる、とホワイト氏は主張する。しかも現時点では支配力を維持することがワシントンの既定路線であり、目標であるようだ。中国の海軍力増強を受けて、米国防総省が中国の「接近妨害・侵入阻止」能力に対する大規模な従来型攻撃能力を配備する「空海戦闘概念(Air-Sea Battle Concept)」を打ち出すといった対応を見ても明らかだ。

 この点について、ホワイト教授の主張は明快だ。「対中国の空海戦闘概念は、戦略的にまったく合理性のない軍事作戦である」と。詳しくはホワイト氏の著書を参照してほしい。

 日米安保同盟と日本の安全保障にとってのその重要性というテーマから話がそれてしまったように感じられるかもしれないが、そんなことはない。むしろ、ホワイト氏が説明するとおり(また以前私が記事で取り上げた、矢吹晋氏の主張のとおり)、日本の安全保障政策、もしくはその欠如は、米国の“対中政策”と密接に結びついているのだ。

 ホワイト氏は著書のなかでこう書いている。「アジア諸国で米国の支配力維持を最も熱心に支持するのは日本だ。(中略)日本は中国の勢力拡大を深く危惧している。日本の指導者は、中国が地域における情け深いリーダーになるとはまったく思っていない」

 「日本にとり日米同盟が今後も戦略的政策の中核であり続けるならば、中国の圧力から身を守るため完全に米国政府に頼ることになる。問題は中国が強大になるほど、現実問題として日本は米国をあてにできなくなることだ」

 「米中の対立が先鋭化するのは日本にとって最悪の事態だが、両国の友好関係や協力関係が深まるのも同じように最悪だ。(中略)日本がこうした苦境から脱する唯一明らかな方法は、中国への防御を米国に頼るのをやめることだ」

 また米国にとっても、「もし軍事的な無敵状態を維持しなくても太平洋西部での強固な立場を維持し、中核的な国益を守ることができるのであれば(実際、ホワイト教授はそれは可能だと考えている)、米国にとって日米同盟を維持するコストは割に合わなくなる」

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