尖閣問題、日本はもう日米同盟に頼れない
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- 2012/8/30 7:00
つまり結論はこうだ。現在日本が抱えている領土問題をめぐり、日米同盟が機能不全とはいわないまでも明らかに有効性を欠いているのは、今日の、そして今後のアジアの戦略的・地政学的力関係は米中関係が軸に形成されているという現実、そしてその現実の中では日米同盟が根本的に時代遅れで、役に立たなくなっているという現実を、反映しているにすぎないのである。
矢吹氏が新著で主張したとおり、日米同盟はお払い箱にし、日本は保有している相当(かつ十分)な規模のハード、ソフトの資源を国防のために自由に活用できるようにすべきではないだろうか。
最後に指摘したいのは、ホワイト、矢吹両氏の議論(筆者は全面的に賛成している)は、現在の米国政府の支配的空気や見解とは正反対に見受けられるということだ。米国政府の空気は、最近CSISが発表した「アーミテージ・ナイ報告書『日米同盟:アジアの安定を強化する』」によく表れている。アーミテージ氏も出席した論文発表イベントの模様を収めた動画が、CSISのウェブサイトで見ることができる。
この報告書について私が言いたいのは、既得権益層の言い分、官僚的(特に国防総省的)な現状の予算維持を狙うロビー活動のように見受けられるということだ。変化しつつあるアジアの地政学的、戦略的現実に、もっぱらそれを無視(もしくは否定)することで対処しようとしている。ホワイト氏の新著は広く読まれるべきであり、また実際そうなると確信している。逆にアーミテージ・ナイ報告書は無視されるべくして無視されるだろう。
アジアはすでに新たな時代に入ったのだ。米中日3カ国は極めて重要な、そして避けては通れない選択に直面している。2つの大国の狭間に置かれた日本にとり、進むべき道は両国に対して中立な立場をとることなのかもしれない。
by Stephen Harner (Contributor)
<スティーブン・ハーナー氏は米国務省出身。外交官、米金融機関駐在員として12年以上の在日勤務経験、それ以上の在中勤務経験がある。現在は香港本拠のコンサルティング会社を東京に住みながら経営>
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