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【以下、2012.6.12付けの平沢裕子記者による署名記事「給食の冷凍ミカン 放射性物質が基準値以下でも使用中止」の内容紹介】
(注;時間経過によるニュース消失を考慮して)ニュースサイト魚拓へのリンクを示す;
《魚拓-1/3》《魚拓-2/3》《魚拓-3/3》
横浜市と鎌倉市が、給食の食材である「冷凍ミカン」から放射性セシウムが検出された事を理由に、使用を取りやめていた。
しかしこれは科学的観察や考え方を学び、科学的な判断の方法を教える筈の教育の現場において、「科学的根拠に基づく基準を無視するという悪例」を子供達に示す事になる。
『より大きな問題は、子供の放射性物質に対する理解を妨げる点だ。給食で使用しないことは、「基準値以下でも放射性物質が検出されたものは食べられない」と示したことになる。
放射性物質について正しく理解し、正しく恐れ、正しく判断することができるようになるには教育の力しかない。その教育の場で、科学的根拠を無視した対応を取ることが子供に与える影響は計り知れない。』(記事原文)
また問題となった検出値は、最大でも11ベクレルであり、国の基準である100ベクレルの約10分の1であるあった。
これは「精度の高いゲルマニウム半導体検出器だから測れたといえ、他の検査機器では小さすぎて不検出となる値」(記事中の注釈より)である。
横浜市林文子市長によれば、「基準値を大きく下回り、健康上の問題はなく、安全であることを確認した」「学校給食の特性を踏まえ、子供に配慮し、保護者からの不安の声を受け、判断した」との事。
また鎌倉市教育委員会は「安全であることは理解しているが、複数回提供するので児童への影響を考えて中止を決めた」とコメントし、鎌倉市は「不安の声が寄せられており、安心のため」と説明。
同様の事例について、川崎市では「基準値以下(9.1ベクレル)の放射性セシウムが検出された冷凍ミカン」を給食に使用している。(但し検出された放射性セシウムの値は基準値以下でも公表するとしている)《魚拓》
また川崎市では年間契約で冷凍ミカンを食材としており、これを使わない場合\1500万円以上が無駄になるが、横浜市と鎌倉市からはこの様な費用とその負担について、具体的な金額も方策も公表されていない。
【以下同記事より引用】
科学教育不足の弊害か
日本科学教育学会会長で愛知教育大学理科教育講座の吉田淳(あつし)教授の話
「専門家が決めた安全基準はかなり厳しい数値といえ、それを大幅に下回る食品を給食で使用しないのは過剰な対応だと思う。これによる野菜・果物不足の方が体への影響が大きいと考えるべきだ。ただ、放射線や放射性物質については、行政担当者、教員ともに正しく理解している人がそれほど多くないのが現状で、これまでの科学教育不足の弊害の大きさを痛感する。子供たちへの影響を考えれば、行政担当者や教員には放射線や放射性物質を正しく理解し判断できる科学的素養(リテラシー)を身に付けてもらいたい」
【以上、該当記事の内容紹介終了】
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厚生労働省が示した「放射性セシウムの含有量を食品1kgあたり100ベクレルとする」新基準は、食品からのセシウムによる被曝量を年間1ミリシーベルトとするためのもので、かなり安全側に立った数値である。
例えばヨーロッパにおける放射性セシウムの基準値は以下の様になっている。
(第372回 食品安全委員会 会議資料詳細 資料13:放射性物質と食品の安全について(pdf)より)
「食品中に含まれる放射性物質は出来る限り減らすべきだ」と考える方々は、一体どれだけの数値であれば「安心」できるのだろうか?
自分の私見だが、「放射性物質を少しでも減らしたい」と考えている方々は、例えどれだけ数値が低くても「安心」できないのではないかと考えている。
それは既に食品安全委員会を初めとして、様々な専門家が情報を収集し、精査し、その上で結論された「現基準が安全である事を理解できない」為に、その様な「理不尽な要求」をしているとしか考えられない為である。
現に1960年代半ば、日本人は1963年当時「1kgあたり約5ベクレルの放射性セシウムを含んだ白米」を食べていた。そしてその様な放射性セシウムはホールボディカウンタにより、人体内に1964年当時500ベクレルを超える量が存在し、その後漸減していった。
しかし上記の「事実」によると考えられる健康への悪影響は、全く認められていない。
上記の「放射性セシウム」についての情報は以下による。
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【以下「放射線科学センター 暮らしの中の放射線 放射性降下物(pdf)」より】
現在でも、私たちが日常食べている食品にはこの放射性降下物による放射性物質が微量ですが含まれています。
有名なセシウム-137(137Cs)の例を見てみましょう。下の図は東京で測定したセシウムー137の月間降下量と国産穀物中のセシウム-137の量を表わしたものです。セシウム-137の降下量が増えるとその後収穫される米や麦など穀物の中のセシウム-137の量も大きく増加することがわかります。
当然、食品を経由して人間の体内に含まれるセシウム-137の量も増えていきます。下の図はヒューマンカウンタで体内のセシウム-137含有量を調べたものです。1962年で米ソの大気圏内での核実験が停止したので、環境中のセシウム-137の量が減り、それにともなって、体の中のセシウム-137も減ってきています。
【引用終了】
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上記のデータは「国産米と国産ビール」および「日本人」についてのデータである。
1963-4年当時、「放射性セシウムを少しでも含んでいれば食材としない」と主張をすれば、「日本人に餓死を迫る」にj等しい。
この様な「事実」を知ってもなお、「放射能の危険性を叫ぶ人々」は、「御用学者の捏造データ」或いは「都合の良いデータのみ開示手いる」等といった『常識的に考えて不可能な設定』を理由に自分の主張を省みることが無い。
この様な状態については、拙文「過ちを認める事は評価されるべき【放射能パニックからの生還】」で紹介した、「放射能パニックからの生還=ある主婦の体験から-自らの差別意識に気づいたことが覚醒の契機に - GEPR」《魚拓》を、是非参照されたい。
なお、同様の「求職用冷凍ミカンから基準以下の放射性セシウムが検出された」件について、川崎市と横須賀市は共に「給食に用いる」姿勢を示している。
横須賀市;
・放射性物質検出の県産ミカン、「健康被害ない」給食使用へ/横須賀 カナコロ 2012年5月22日《魚拓》
川崎市;
・話し合い平行線 セシウム検出の冷凍ミカンの給食提供 東京新聞 2012年5月16日 山本哲正 《魚拓》
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【以下上記記事より引用】
放射性セシウムが1キログラム当たり9.1ベクレル検出された県産冷凍ミカンを川崎市教育委員会が市内の公立小学校の給食に出し続けている問題で、児童の保護者ら約20人が15日、市教委の渡辺直美教育長らに中止を求めて直談判した。しかし、渡辺教育長は交渉終了後、「心配な人がいるのは分かるが、給食で冷凍ミカンが残る量は多くない。理解を得られている。今後も給食に出し続ける」と語り、中止を要請する声は聞き届けられなかった。 (山本哲正)
(中略)
渡辺教育長は「専門家や詳しい市教委の職員から(問題となるのは)放射能が『あるか』『ないか』ではなく『量』と『強さ』だと教わった」と発言。「一般食品の国の基準一キログラム当たり一〇〇ベクレルを下回れば提供しても安全性が確保されている」とする市教委健康教育課の説明の正当性を強調した。
一方、保護者側は「内部被ばくの影響が解明されていない現状では(食品中の放射性物質は)限りなくゼロに近づけるべきだ」とする国内の専門家や、「これ以下なら安全といえる量はない」との米国科学アカデミーの見解などを踏まえ、放射性物質が検出された場合は子どもに食べさせないでほしいとの立場。市教委とは議論がかみ合わず「政府見解しか評価しないように見える」と、姿勢を批判する声が上がった。
(中略)
今回の交渉の場は、市議の猪俣美恵氏(無所属)と竹田宣広氏(みんなの党)が設定。猪俣氏は「給食は子どもたちの口に入るもの。汚染が分かっている物は取り入れないなど、制御できることはするべきだ」と述べた。
【引用終了】
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・放射性セシウム 国の基準値以下でも 給食食材 通知徹底へ 東京新聞 2012年6月7日 山本哲正 《魚拓》
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【以下上記記事より引用】
放射性セシウムが検出された県産冷凍ミカンを小学校給食に出し続け、対応が注目を集めている川崎市教育委員会は、食材に検出限界値以上の放射性セシウムが検出された場合、国の基準値を下回っていてもその都度、保護者に文書で通知する方針を決めた。保護者から「まず情報を知らせることが重要」と歓迎する声が上がる一方で、給食に出し続ける市の方針を批判する市議もいる。 (山本哲正)
市は六日、ミカンから放射性セシウムが検出された件と今後の通知方針をまとめた「お知らせ」を各小学校に送付。学校側がこの文書を各家庭に配る。
市教委は食材の産地と放射能検査結果を市のホームページで公表してきたが、冷凍ミカンの件で保護者らから「積極的な通知を」と求められ、応えた形。市教委によると「今回だけ、では整合性がとれない」とし、今後の通知方針も決めた。
保護者らでつくる「子供を放射能から守る会@川崎」は「保護者の声に応えてくれることで信頼関係を結べる」と喜んだ。
ただ「県産冷凍ミカンの検出値は一キログラム当たり九・一ベクレルで国基準の同一〇〇ベクレルを下回る。『給食に使用する食品が基準値に適合すれば安全性は十分に確保される』と国の見解があり、給食で使う」とする市教委の姿勢はそのままだ。今後も冷凍ミカンを六、七、九月に一回ずつ使用する。
猪股美恵市議(無所属)は「進歩は感じるが、横浜市などで保護者の不安を受けて県産冷凍ミカンの提供をやめたことなど、川崎市教委に不都合な情報はお知らせに記載していない」と指摘。「子どもには汚染が分かっているものをできるだけ食べさせないのが、大人にできること。物品契約があるとはいえ、市の食堂などで大人が食べる形の処理方法を探り、選択するべきだ」と話している。
【引用終了】
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自分が考えるに、東京新聞の「山本哲正」記者は、「放射線とそのリスクについて無知」であるのだろう。
また「猪俣美恵」市議会議員も、「リスクの比較評価」と「放射線についての理解」が不足しており、「住民の代表」として不適格だと判断した。
「六、七、九月に一回ずつ使用する」冷凍ミカンに、基準値の10分の1の放射性セシウムが含まれていたとして、子供達に悪影響が出るとすればそれは、「周囲の大人達の不勉強に夜不安」に晒された「子供の精神状態」だろう。
「水であろうと酸素であろうと、全ての物質は毒であり、その毒性が現れるか否かはその『摂取量による』」という、毒性学(と言うよりも常識だが)の基礎を理解していないと、上記の様な極めて異常な判断を平然と述べる事になる。
「教育現場」で横浜市や鎌倉市の様な「悪例」が起きる様では、子供達が「まともな常識を有した大人」になる事はおよそ期待できない。
横浜市と鎌倉市は、直ちにこの様な「馬鹿馬鹿しいばかりでなく社会に対する悪影響を多分に与える愚行」を辞めるべきだと、自分は考える。
(以下関連ニュース魚拓へのリンク)
・冷凍ミカン 市、来月以降も給食中止 検査で新基準値大きく下回る 東京新聞 2012年5月22日
【6/13追記】
横浜市教育委員会の愚行は冷凍みかんだけではなかった。
これでは本当に「子供たちのための食材」が無くなるぞ。
「東日本大震災:給食イワシ、使用中止 微量の放射性セシウム検出--横浜市小学校 /神奈川 毎日新聞 2012年05月24日 地方版」