北京の日本大使館前で手前の武装警察隊員と対峙する反日デモの参加者。愛国的行為に罪はないとする「愛国無罪」のパワーは凄まじい=15日午前(共同)【拡大】
真っ赤な炎が夜の闇を照らし、黒い煙が立ち上る。中国山東省青島の経済開発区。反日デモのデモ隊に襲われた日系電機メーカー工場内のオフィスビルは15日夜、放火されてから数時間後も燃え続け、プラスチックが焦げる異臭が立ちこめた。
約4キロ離れたイオングループのスーパー「ジャスコ」も暴徒に襲われた。大通りに面した1階部分の窓ガラスは全て割られ、商品は略奪し尽くされていた。破壊行為は5時間も続いたという。トヨタの販売店では100台以上の車が黒焦げになっており、青島で襲撃された日系企業はパナソニックなどを含め10社近くに上る。
北京の日本大使館前には数千人のデモ隊が集結。「釣魚島を返せ。日本に宣戦布告を!」と叫び、バリケードを突破しようとして武装警察隊と衝突した。大使館正門の壁には投げ付けられた卵の跡があちこちに残り、黒いペンキも。
湖南省長沙では数千人のデモ隊が日系スーパー「平和堂」を取り囲み、ペットボトルや石を投げ付けたほか、押し入って内部を破壊。江蘇省蘇州でもパナソニック工場の敷地内にデモ隊が乱入、ガラスや車が壊された。
日本政府による11日の尖閣国有化後初の週末。反日デモは中国の少なくとも57都市で起き、計8万人以上が参加。小泉純一郎首相(当時)の靖国神社参拝などへの抗議を理由にした2005年の反日デモを、1日当たりの参加者数や発生都市数で上回った。1972年の日中国交正常化以来、「中国で起きた最大の反日デモ」(北京の外交筋)。ただ北京の日本大使館によると、邦人被害は報告されていない。
日本の企業は対応を余儀なくされ、イトーヨーカ堂は四川省成都市にある5店舗全てを、セブン-イレブンは同市の約40店舗を、それぞれ16日に臨時休業する方針だ。
中国側は16日に6万4000人収容の北京工人体育場で予定されていたサッカーのスーパーリーグ、北京国安-河南建業戦を延期するなど、大人数が集まる状況を回避する措置を取った。だが、16日と、満州事変の発端となった1931年の柳条湖事件から81年に当たる18日にもデモが呼び掛けられており、規模が拡大する可能性がある。
(紙面から)