現在位置:
  1. 朝日新聞デジタル
  2. 社説

社説

朝日新聞社説のバックナンバー

 大学入試問題に非常に多くつかわれる朝日新聞の社説。読んだり書きうつしたりすることで、国語や小論文に必要な論理性を身につけることが出来ます。会員登録すると、過去90日分の社説のほか、朝刊で声やオピニオンも読むことができます。

2012年9月16日(日)付

印刷用画面を開く

このエントリをはてなブックマークに追加 Yahoo!ブックマークに登録 このエントリをdel.icio.usに登録 このエントリをlivedoorクリップに登録 このエントリをBuzzurlに登録

反日デモ―中国の自制を求める

沖縄県の尖閣諸島をめぐり、日中間の緊張がにわかに高まってきた。きのう、北京の日本大使館を多数の群衆が取り囲んだ。石やペットボトルなどを投げつけ、大使館内に押し入ろうとす[記事全文]

中東反米デモ―暴力は受け入れられぬ

反米デモが中東・イスラム世界で広がっている。米国で作られたイスラム教の預言者ムハンマドを冒涜(ぼうとく)する映像作品に抗議するものだ。敬愛する預言者への中傷にイスラム教[記事全文]

反日デモ―中国の自制を求める

 沖縄県の尖閣諸島をめぐり、日中間の緊張がにわかに高まってきた。

 きのう、北京の日本大使館を多数の群衆が取り囲んだ。石やペットボトルなどを投げつけ、大使館内に押し入ろうとする者も出た。

 ほかの都市でも群衆が集まり、日本料理店や日本車のガラスが割られた。日本製品の不買運動も広まりつつある。

 不穏な動きは、民衆レベルだけではない。おとといは中国の海洋監視船6隻が、尖閣諸島周辺の日本の領海に相次いで侵入してきた。

 異常な事態である。

 中国政府は挑発的な行為をやめ、国民に対しても自制を求めるべきだ。

 日本政府が尖閣諸島を購入したことが、中国の反発を招いているのは残念だ。背景には、国有化をめぐる双方の認識ギャップがあるようだ。

 一連の騒動のきっかけは、中国への挑発的な言動を繰り返す石原慎太郎東京都知事による購入計画だ。

 政府が都に代わって購入に踏み切ったのは、その方が中国との無用な摩擦を避けられるとの判断があったからだ。

 だが、政府が外交ルートを通じて説明しているにもかかわらず、この意図が中国側に伝わっていない。あるいは無視されている。

 中国外務省の高官は、日本側の主張は口実であり、知事と政府が連携して「二重奏」を演奏したのだと断じている。

 一方、中国の国民から見れば、自国の領土を日本政府がカネで買ったと映るようだ。

 中国は指導部交代の共産党大会を控え、政治の季節の真っ最中だ。日本に対して弱腰ととられてはならないとの思いがあるのは間違いない。

 一方、日本でも民主党と自民党でそれぞれ党首選が行われている。自民党の安倍元首相や石破前政調会長らは、実効支配の強化を訴えている。

 中国側には、こうした主張への警戒感もあるのだろう。

 満州事変の発端となった柳条湖事件が起きた18日に向け、さらに多くの都市でデモが予定されている。参加者の興奮が高まり、行動がいっそう過激にならないか心配だ。

 感情的な行動がお互いを刺激するような負の連鎖に陥ってはならない。

 日中関係の大局を見渡したとき、この問題で両国が衝突することにどれだけの意味があるのか。ここは頭を冷やして考えるべき時だ。

検索フォーム

中東反米デモ―暴力は受け入れられぬ

 反米デモが中東・イスラム世界で広がっている。

 米国で作られたイスラム教の預言者ムハンマドを冒涜(ぼうとく)する映像作品に抗議するものだ。敬愛する預言者への中傷にイスラム教徒が怒るのはわかるが、米大使館襲撃などの暴力的な動きになるのは、受け入れられない。

 問題の映像作品は、批評にも値しない低級なものだ。だが、その映像がインターネットで流れたからと言って、大使館を襲うのは、「平和を求める宗教」と強調するイスラム教の教えに沿ったものとは思えない。

 デモが広がることが問題なのではない。平和的なデモや集会で、自分たちの怒りを表明するのは、言論や集会の自由として保障されるべきだ。

 サウジアラビアや湾岸諸国では目立った抗議デモは報じられていない。それはこの地域でデモが制限されているからだ。

 今回、反米デモが始まったエジプト、リビア、チュニジアは「アラブの春」で強権体制が倒れた国である。以前は警察の監視の下、言論も集会も規制されていた。デモが起こることは民主化の成果である。

 デモ隊が米大使館を襲撃したイエメンは、若者たちが非暴力のデモで強権の大統領を辞任させた国だ。運動を主導した女性活動家が昨年のノーベル平和賞を受けた。そのような平和の精神はなぜ、今回の反米デモで発揮されないのだろうか。

 リビアでベンガジの領事館が襲撃され米大使らが死亡した事件には、計画的なテロとの見方もある。背景には8カ月におよぶ内戦で武器が広がり、治安が安定しない国情がある。米国はリビア政府がこの事件の捜査やテロ対策を行うのに、協力する形で関与するべきだ。

 今回のデモは、形のうえで民衆が街頭で主張した「アラブの春」を思い出させる。しかし、自制がなければ、混乱を生むばかりだ。人々は強権の政府を倒し、民主化を始めた。だから、手にした言論や表現の自由を使い、考えを非イスラム教徒にも理解できる言葉で発信するべきだ。暴力をあおろうとする勢力の挑発に乗ってはいけない。

 イスラム世界の政治や宗教、社会運動で指導的な立場にある人々の役割は重要だ。冷静に行動するように民衆に説き、何が障害になっているかを国際社会に伝えてほしい。

 米欧はイスラム世界との間で議論や対話の動きを強化し、信頼と相互理解を深める必要がある。歴史的にも中立の立場にある日本は、双方の間で仲介役を果たすことができるはずだ。

検索フォーム

PR情報

朝日新聞購読のご案内
新聞購読のご案内事業・サービス紹介