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【分校化・募集停止】高校と地域の絆考慮を(9月15日)

 入学者減少のため西会津高(西会津町)と川口高(金山町)が分校化、分校の修明高鮫川校(鮫川村)が募集停止の瀬戸際に立たされている。
 3校は昨年度と今年度の入学者数が募集定員の2分の1以下だった。県立高校改革計画では、小規模校の分校化の基準を「入学者数が募集定員の2分の1以下の状態が3年続いた場合」としている。分校の生徒募集停止の基準も同様だ。数は一つの目安ではある。ただ、全てではないはずだ。町村における各高校の役割、住民の思いなどを考慮して検討すべきだ。
 3校のここ2年間の入学者数は西会津(募集定員80人)が昨年度33人、今年度29人、川口(同70人)が昨年度32人、今年度30人、鮫川(同40人)は昨年度19人、今年度18人だった。もし、来年度の入学者数も定員の半分以下なら、分校化と募集停止が現実味を帯びてくる。過去には富岡高川内校(川内村)が平成21年度に募集停止、2年後に閉校となった。
 現在、県教委は3校で高校改革懇談会を開いている。地元関係者からは分校化による教育環境の低下や、募集停止となった場合に離れた学校に通う生徒の負担増大を指摘する声が出ている。しっかり受け止めなければならない。
 生徒確保のため地元が一丸となった動きも見られる。金山町は来年度から川口高にバス、列車で通学する生徒の定期代を半額補助し、自転車や家族の車で通う生徒には距離に応じて補助する。寮の食費も半額補助の方針だ。金山、三島、昭和の3町村にまたがる同校の後援組織「桐径会」やPTA、同窓会は学校の魅力PRのためにさまざまな支援活動を展開している。
 これらの取り組みは、住民が川口高に深い愛着を抱いている表れだろう。昨夏の豪雨災害時は生徒がボランティアで泥のかき出しなどをした。夏休み中の金山町の沼沢湖水まつりでは全校生が登校し、運営を手伝う。学校は地域を支える要でもあるのだ。分校になれば生徒の減少をさらに招き、地域が衰退する-との住民の心配もうなずける。教員も減るため同校の特色である習熟度別授業などへの影響を懸念する人もいる。
 少子化に伴う生徒減少は切実で、学校の適正配置は重要課題だ。ただ、生徒数だけで判断すれば大切なものを見失いかねない。東日本大震災で人と人との結び付きの尊さをあらためて知った。一つの高校がつなぎ留めている地域の絆に考えを巡らせる必要がある。(佐藤 研一)

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