ここから本文エリア 現在位置:asahi.com>BOOK>出版ニュース> 記事 出版ニュース 芥川賞に川上未映子さん 直木賞は桜庭一樹さん2008年01月16日 第138回芥川賞・直木賞(日本文学振興会主催)の選考会が16日、東京・築地の新喜楽で開かれ、芥川賞に川上未映子(みえこ)さん(31)の「乳(ちち)と卵(らん)」(文学界12月号)が、直木賞に桜庭一樹(さくらば・かずき)さん(36)の「私の男」(文芸春秋)が選ばれた。中国人で初の芥川賞候補となった楊逸(ヤン・イー)さん(43)は次点で受賞を逃した。副賞は各100万円。授賞式は2月22日午後6時から、東京・丸の内の東京会館で開かれる。
川上さんは大阪市生まれ。同市立工芸高校卒。07年「わたくし率イン歯(は)ー、または世界」で初めて芥川賞候補になった。東京都世田谷区在住。 「乳と卵」は、30代の女性が、大阪から上京してきた姉とその小学生の娘と過ごす3日間の物語。大阪弁のノリのよい語りで母娘の愛憎や肉体への違和感を描き出す。 川上さんは会見で「びっくりしています。受賞前も受賞後も、人に何か切実なものを感じてもらうために書くことに変わりはないが身の引き締まる思いです」と語った。 芥川賞選考委員の池澤夏樹さんは「声が聞こえてくる滑らかな文体、たくらみがある構成が非常に良くできている」と評価した。楊さんについては「勢いはあるが、文章が芥川賞のレベルに達していない、という理由で見送られた」と述べた。 桜庭さんは鳥取県出身。99年にファミ通エンタテインメント大賞に佳作入選し、デビュー。昨年、直木賞候補にもなった「赤朽葉家の伝説」で日本推理作家協会賞を受賞。東京都新宿区在住。 「私の男」は、「父」と「娘」の禁断の愛という深刻な問題を扱った意欲作。現在から過去へと時間をさかのぼりながら、様々な登場人物の視点を借りてその幸福と不幸をあぶり出していく。 桜庭さんは「極端なストーリーだが、家族のきずなという意味では普遍的なテーマだと思う。今まで書いていないものを書ききったと思った作品なので、評価を受けてうれしい」と話した。 直木賞選考委員の北方謙三さんは「おかしいところをあげつらうといくらでもあるが、ある神話性を持った話だ。批判を吹き飛ばす独特な何かがあり、作家としての可能性が豊饒(ほうじょう)に感じられる」と話した。
ここから広告です 広告終わり |