綾瀬はるか主演『おっぱいバレー』監督 羽住英一郎インタビュー
男だとか女だとか、イヤらしいとかイヤらしくないとか、そういうことを考える前にピクっときてしまうから、この『おっぱいバレー』というタイトルはズルい。男性諸君の妄想はもはや、映画作品一つで支えきれないほどに膨らむわけだけど、観た後に不思議と裏切られた気がしない。主演の綾瀬はるかとダメダメ中学生と「誰にとってもエバーグリーンな世界」を描いた羽住英一郎監督。これまでも『海猿』や『銀色のシーズン』など多くのヒット作を手掛けてきた監督に、今作への思い入れと、ご自身のエンターテインメント観を伺った。
(インタビュー・テキスト:杉浦太一)
1967年3月29日生まれ・千葉県出身。数々のTVドラマの演出を手掛け、04年『海猿』で映画監督デビュー。その後も『逆境ナイン』(05年)、『LIMIT OF LOVE 海猿』(06年)、『銀色のシーズン』(08年)などヒット作を次々と手掛ける。ROBOT所属。
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あいさつに全部「おっぱい」をつけるルールにしたんです。
─今回、羽住監督ご自身がプロデューサーに「絶対自分が撮る!」という熱い想いを伝えてスタートしたと伺いました。
羽住:まず、このタイトルにすごく惹かれました(笑)。それで、原作を読む前にあらすじを聞いたんです。徹底的にダメな中学生たちが、新しくバレー部の顧問になった女性新任教師と「試合に勝ったら先生のおっぱいを見せてくれる」というとんでもない約束をとりつけて、俄然がんばり始めるっていうストーリー。すごくシンプルで面白そうだし、きっと笑えて、色んな逆境もあって感動できるんだろうな、っていうイメージができたんです。
─映画をつくる時に、最終的な形がイメージできるかできないか、っていうのは大きいのですか?
羽住:そうですね、最終的にどういうパッケージにできて、お客さんがどういう気持ちで劇場を後にするかっていうのを、しっかりイメージしてつくっています。もちろんそれだけじゃなく、今の世の中にその作品をつくる必要があるのか、っていうことも大事です。いくらヒットする映画だとしても、つくる意義がないと、なかなかモチベーションが上がりません。映画をつくるって、本当にたくさんの人手と時間が必要ですから。
─次にキャスティングについてお伺いします。この「おっぱい先生」を誰にするかっていうのは、かなり大事なところだったと思いますが、綾瀬はるかさんが抜擢された経緯をお聞かせください。
羽住:そうですね、美香子先生役は、キャスティングで一番肝の部分でした。まずこの先生役の前提として、女性に嫌われてはいけないんです。女性が敬遠して、男性だけが下心で観に来るような映画にしちゃっては意味がありませんから。つまり、「おっぱいを見せる約束をする先生」っていうのは、下手をすると女性の反感を買うわけですよね。その時に女性から見てもイヤらしくなくて、健康的でさわやかなイメージを持っている人、それで綾瀬はるかさんがぴったりだと。満場一致でした。
─やっぱりご本人も、最初は抵抗がおありだったんですかね。
羽住:最初にタイトルを見た時は、ちょっと不安になったらしいです(笑)。でも、原作と脚本を読んでもらって、イヤらしい話ではないというのがすぐにわかって安心した、って言ってましたね。それから、その時綾瀬さんは美香子先生と同じ23歳だったんです。色んな悩みを抱えながら頑張る美香子を、等身大の自分で演じられるかもしれない、ということでオファーに応えてくれました。
─子供たちも、見事にエッチな中学生を演じていました(笑)。
羽住:子供たちはオーディションで選びました。基準は、いかにダメオーラが出ているか(笑)。芝居が上手いとか、運動神経がいいとかっていうのは気にせずに、そこにいるだけで「ダメだな、コイツら」って思わせるような子供を選びましたね(笑)。
─それは、なかなか撮影が難しそうですね…
羽住:さすがに撮影を始めた時はこれで映画として成立するかな、っていう不安もありましたね。でも、綾瀬さんや子供たち、みんなで合宿しながら撮影をしていく中で、生徒と先生の関係っていうのが出て来て、自然な雰囲気で進めることができました。
─撮影中に工夫したことはありましたか?
羽住:思春期の子供たちは、芝居とは言え綾瀬さんを目の前にして、おまけに大勢の大人に囲まれたところでエッチな話しをするっていうのは、恥ずかしんですよね。でも、こちらとしては、せっかくダメオーラを出してる彼らを選んだわけですから、そのダメダメっぷりを炸裂させてほしい(笑)。「おっぱい」と言う度に照れられては困るんですね。
─普通は大人でも照れますけどね(笑)。
羽住:そうなんです。だから、「おっぱいはチャオと同じだ」って言って、あいさつに全部「おっぱい」をつけるルールにしたんです。「おはようおっぱい!」とか「おつかれおっぱい!」とか(笑)。キャストだけじゃなく、スタッフも全員、もちろん綾瀬さんにも…。そうしたら、彼らも恥ずかしくなくなったようで、いい雰囲気の中で撮影することができましたね。
2/3ページ:友達からエッチな写メールをもらうのと、神社の裏でエッチな本を見つけるのとでは、そんなに変わりがないんじゃないかな、って(笑)。